やや固めの歴史探訪シリーズから脱け出し、さて、お次は何を書こうかと考えてみたが、頭をひねればひねるほど、良いアイディアは浮かばない。まあひとつ、ここは気楽に、町の内外で起こった「四方山話」でも書こうかというところに落ち着いた。今後しばらくは、「シリーズ無きシリーズ」にお付き合い願います。
今年2008年を、ポラントリュイガイド協会は、「特別な年」とし、一年をかけて祝いがてら、様々なイベントを企画している。2008年がどうしてポラントリュイのガイドにとって意味を持つか、説明しよう。 またもや歴史の話になる。1527年よりポラントリュイ城を拠点に司教公国を治めていた、バーゼル大公司教。大公はフランス語で「Prince」と言うが、「そして王子様とお姫様は結婚し、いつまでもいつまでも幸せに暮らしました」という「王子様」のプリンスではない。神聖ローマ皇帝より「公国」を治めるために賜った称号なのである。現在でも、モナコ公国の頂点に立つ御方はプリンスであるが、「王子様」ではなく、大公である。 1792年にフランス大革命軍によって国が滅ぼされるまで、司教公国の歴代為政者達のうち、「大公中の大公」または「再興者」という輝かしい異名を授けられた大公司教が、ただ一人だけいた。フランス語で言うと、Jacques-Christophe Blarer de Wartensee(ジャック・クリストフ・ブラレー・ド・ヴァルテンゼー)。ブラレー大公司教の偉業については、ポラントリュイ便り第42話「バロック建築様式」《その2》をご参考に。彼の就任期間は1575年から1608年まで。この没年から400年に当たるのが今年。そんなわけで「死後400年記念」として大衆レベルで大いに楽しんでしまおうという考えからスタートした。2007年からほぼ一年かけて準備。開催記念式典(3月15日に済)、展覧会(今年3月15日から8月17日まで)、数回に亘るコンサート、ラジオ放送もされる記念ミサ、ブラレーを主役にした演劇など、ガイド20人余りがグループを形成し、それぞれの企画遂行に励んでいる。
私の担当は他の2人のガイド共に「町をブラレー家の家紋でもある雄鶏で飾ろう!」という企画。ポラントリュイ市の保育所とすべての小学校にお願いし、生徒と先生が作った雄鶏をモチーフにした作品(工作や絵)を旧市街のショーウィンドウに配置するという企画である。店々へお願い状を送付した上で、一軒一軒回り、店主と直接話して親交を深めた上で、企画への理解と協力をお願いした。どの店がどこにあり、何を置いてあってどんな大きさと形のショーウィンドウであるか、事細かに書き留めた。 学校の先生サイドにも通知と短い説明会を催した。人口7000人足らずの町であるが、学校数は多く、下は託児所から上は小学6年生まで、30余りのクラスが協力してくれた。 先生と商売人ではあまりにもメンタリティが違う。悪気は無くてもダイレクトな商売人(土地柄もあるが)に対し、先生方は非常に誇り高く、馴染みの店以外にはなかなか怖がって?入ってくれない。そんなわけで「先生の選択からこぼれた」店にはガイド自身が完成した雄鶏作品を持って行ったこともある。
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