Salut! ハイジの国から【第2話】 まえ 初めに戻る つぎ

スイスの暖かい家族

イギリス留学から10年以上経てみて、あの頃、学校で付き合っていたカップルはどうなったのだろうと考える時があります。風の便りでは各々の国に帰り、別々の道を歩んでいるとか。今や国際結婚は珍しくないとはいえ、文化や生活習慣の違いを乗り越え、互いの愛情を揺るぎないものに確立するまでは数々のハードルを越えなくてはならず、憧れだけでは到底全う出来ません。私の親友だったサウジアラビアの女の子は日本人の男の子と恋に落ち、「日本で一緒に暮らす」とまで考えていたようですが、日本の家族の反対にあって二人の気持ちが崩れ、結局別れました。ちなみに彼女はその後、イギリス人男性と結婚し、ロンドンで一男の母となって幸せに暮らしています。


▲Marquis家の食事風景
左から、Roger、父、母、妹、妹の恋人(現在の夫)

 
さて、スイスに到着した私は、まず恋人の家族の家に招待され、クリスマス・イヴから10日ほど、一緒に休暇を過ごさせていただきました。ここでまず第一の難関がやってきます。嗚呼、フランス語!

英語にはちょっとばかり自信があった私も、フランス語は「こんにちは」と「ありがとう」等の挨拶用語、そして自分の名前を言うのがやっとの状態でした。フランス語を勉強した方はお分かりだと思いますが、「R」の発音は日本人が全く使わない喉の一部を鳴らさなくてはなりません。それも含め、きちんと発音しないで単にカタカナ風フランス語でコテコテに単語を並べてもきょとんとされてしまうだけです(または分からないふりをされるという悲しい目にも遭う……世間の風は冷たいのです)。

恋人の名前は「Roger」。苦手なRがしょっぱな。イギリスでは英語風に「ロジャー」と呼んでいましたが、彼の家族が別の発音で呼んでいることに軽いショックを受けました。

 
美男子の老犬ノッピとRogerの実家のテラスで▲
(1994年他界・享年11歳)

家族は英語をほとんど解しません。彼が通訳してくれているうちは良くても、トイレにでも立ってしまうと、途端に居心地が悪くなりました。また、彼自身が会話に熱中し過ぎて通訳を忘れてしまう……その間、ただニコニコ愛想笑いをしているという辛さ。しかし、そんな異邦人の私を、家族は「Rogerの恋人」というだけで暖かく迎えてくれました。言葉が分からなくても一生懸命話しかけてくれる、スイスの暮らしは不自由ではないかと気を使ってくれる……ご両親、二人の妹とその伴侶と大きな犬。スイス生活の礎は彼らでした。

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Last Update: Dec.23,2003