従来の博物館では、どうしても学芸員が「雑芸員」になってしまって研究ができない。そんな雑用に追われて10年〜20年が経つと、どの人も商品価値が極めて低下していて第一線の仕事ができなくなっている。そうすると結局、普及講座にしても展示にしても面白いものができなくなって行って…そのような悪循環の中で、だんだん博物館が衰退してしまうんじゃないか。
そうならないように、当初から、まずきっちり研究できる体勢を取っておこう…研究体勢を充実させよう…ということで、姫路工業大学の研究所ともドッキングしていますし、僕の肩書きも学芸員ではなくて研究員になってます。そうやってスタートしたんですが、結局この7〜8年で外からどう評価を受けたかと言うと「研究ばっかりやってて他のことはせえへんやないか」と(笑)。
このバランスはなかなか難しいんですよ。個々人の仕事の仕方と博物館全体としてのパフォーマンスと両方ありますからね。その均衡をどう取って行くか…去年あたりから一年間、いろいろと試行錯誤をしてますけどね。
今までは研究部の所属だけだったんですけど、今年から事業部と研究部の両方の肩書きをつけるようにして…僕の名刺、企画調整室になってるでしょ。企画調整っていう部門と研究部の両方の所属になっているんです。これまでの博物館には企画調整機能なんていうのはあんまり無かったですから、それを動かして行かないといけない…っていうのは実際、大変なんですよ。
「企画調整」…つまり名前の通り、企画部門/マネージメント部門のほうもやって行くわけですからね。そんなことしてると外に行く時間が無くなってしまう。僕らがフィールドに出れないっていうのはね、料理人や店のオーナーが食材を仕入れできないのと同じなんですよ。仕入れができへんかったら売る商品が無いわけですから。仕入れのためには外に行かないといけないんですけど…普及講座とか館内の仕事が多くなると、なかなかフィールドに出れなくなる。
そうすると、もう…腐ったもんを出しちゃうとかね(笑)。やばいでしょ、それって。調味料で誤魔化しながら鮮度の悪い料理を出す…とかいうことになると、やっぱり良くないから。常に良い素材を出せるようにしとかないと。
▲総ガラス張りの化石工房 ▼日曜祝日には実演して見せてくれる |
これがある程度…カタチになって来るとですね。僕は「パッケージ商品」にしたいと思ってるんです。例えば「うちの博物館ではこういう調査を市民参加でやりますよ。一年後にはこういう結果が出て来ますよ。これを、おたくでもやりませんか?」…たぶん、自治体や学校にとっても悪くない話だと思うんです。だから、セミナーを実施しながら、データも取り、同時に商品開発もできたら…ええんちゃうかなって気がしてるんです(笑)。
そうやって博物館もどんどん外に出て行かないとね。三田という町は、車で来るのにアクセスは悪くないんですけど、時間距離よりも経済距離のほうが結構デカい…ってところがありまして。我々のほうから出向いて行くアプローチも考えないと、基本的に「待ち」の姿勢だけではやっていけないんです。兵庫県は広いですからね(笑)。一応、県立ですから…守備範囲は淡路から但馬までカヴァーしないといけない。
こういうのを最近、博物館業界では「アウトリーチ・プログラム」と言うておりますけれども、外に出て行くようなもの「出張スタイルの博物館」を実施していかないとアカン…そのためには、ここでやってみて、きっちりパッケージ化の目処が立たないことには外には出せませんからね。