あと、理科系といえば…農学部、薬学部、理学部、そんで工学部ですか。どこも行きたくないんですね。一概に工学部といって並べてみても…化学系はなんとなく臭そうやナ(こんなコト言うてると、行ってる人が聞いたら怒るかも知れんけド…)とか物理系はしんどいナ、数学系は…云々。そんなふうにアレコレ思っているなかで、建築学科の案内のところに歴史、建築史というのと彫塑実習、絵画実習というのが目について「これかな…理科系の中で文科系みたいなところがあるなァ」くらいに思ったんです。
バスケ部の1年先輩で「建築に行こうと思う」と言われていた人がいて…そういう影響もあったと思いますし、小学校からの同級生で「京大の建築を受ける」と最初から決めてた奴なんかも身近にいて…。それで何となく「建築」というのがリアリティを持って迫ってきた訳ですけど、僕としてはそんなに小さい頃から「建築で行くんや」と決めて行ったようなカッコ良さはまるでなくて…大学受験に際していろいろ考えたんです。結果的にはすごく良い選択だったナと思ってるんですけどね。
もちろん、高校卒業の段階では「建築」という志をそんなに意識していたとは思えないですよ。「建築」というものをちゃんと考え始めたのは大学に入ってからでしょうし、本当に「建築」というものに真面目に取り組んで勉強したのは大学院に行ってからやないかと思います。
僕らの世代もそうでしたけど…それ以前のジェネレーションと比べると、どこか「坊ちゃん坊ちゃん」していて自覚が遅い。人生に対する自覚は遅いワケです。これが遥か中世だったら15歳で元服していたワケですからね。ですが今、モラトリアムの期間はますます長くなっている…習得するべき知識は多いし。大学院くらいになっても、せいぜい僕らの時代の学部レベルの感じではないでしょうか。
ただ…とはいうものの、6年前に京大に呼ばれて教鞭を取っているのですが、いま僕がわりと「みどころがあるナ」と思う大学院あたりの学生というのは、結構…迷って、紆余曲折があって、他の所で勉強して「やっぱり、どうしても建築やりたい…」といって回り道をして入ってきた奴の方が強いですね。
だから、ものすごく幼少の時から…例えば親であるとか、建築関係者が周囲にいて…建築的なものごころのつくのが早かった人は、それはそれで良いと思うんです。でもね。一般的な今の学生の状況としては、建築を選ぶ時の心構え…たまたま選んだにしてもその後にしっかり学ぶ時の「決意の強さ」みたいなものが、最終的には決め手になりますからね。
先日も法学部の学生の女の子が相談に来まして「建築学科に来たい」と。「文科系から理科系への転学というのはなかなか難しいのでどうすれば良いだろうか」という質問でしたが、建築学科には他の学科から転科してきた学生も多いのですけど…そういう時にある程度、社会的な目配りもできて、自分の人生を見つめ直した時に「ひょっとしたら自分は建築ということを真面目にやりたいんじゃないか」と気付くような人間のほうが(ある意味では)そんなに早くにものごころつくより良いのかもしれません。