冗談はさておいて…今回、移植を受ける患者さんは、実はすでに人工心臓を付けていたんだ。心臓の左心室に補助人工心臓をはめ込んで、駆動装置は体の外。つまり外部からエネルギーを供給して動かす仕組み。これは電気自動車以上に頻繁に充電しなけりゃならないんだ。勿論、普通の生活は出来ないし、風呂にも入れないよ。
それで新品の(?)心臓を移植するワケなんだけど…手順としてはね。まず、本人の心臓を摘出するのが一仕事。埋め込んだ機械に筋肉がくっついちゃっていて…はがすのに結構時間がかかるんです。それを入念にやったあと、今度は体外循環装置(人工心肺装置ともいう。言ってみればポンプだね)で全身に血液を流しながら、その間に提供を受けた心臓を体内に縫い付けるんだ。アトは…人工心肺装置を止めて、新しい心臓で血液を流すという段取り。
今回手術をしたスタッフは皆アメリカなんかで何度も経験しているドクターばかりだから、うまくいくかどうかという心配は全然しなかったよ。ココだけの話…心臓移植というのは世間が思っているほど難しいモンじゃないんです。もっと難しい手術がたくさんあって、それをこなしていれば…ま、言ってみれば自動車やバイクに乗れる人が三輪車に乗るようなもの…ちょっと喩えが変だね(笑)。
高知県では防災用のヘリコプターを出してくれたけど、これが特別扱いでね。パトカーの誘導付きで裏道を走って通常なら1時間はかかる道のりを15分で空港へ着いたんだけど、ヘリは有視界飛行が原則なので「暗くなったら危険だ」というので5時30分までに離陸するよう…管制塔から指示が出されていたんだね。実際に飛び立ったのは5時40分だから、予定より10分遅れてしまったんだけど…これは無視(?)。だけど誰も文句を言う人はなかったね。
着陸は、当初は万博公園か阪大のグラウンドを考えていたんだけど、大事をとって伊丹の空港へ降りた。そこから車で搬送…もちろん警察の協力でパトカー先導でね。こうした表面には出ない、さまざまな協力のおかげで…尊い心臓は無事、阪大に到着したんだ。