われら六稜人【第26回】科学を志す人のために
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これはNIHの恩師だったアーサー・コンバーグ先生の教室でやっていたことなんです。先生は後にノーベル賞も受賞した有名な方ですが、ランチセミナールでは教授も助手も大学院の学生も(場合によっては学部の学生も…)全部ABC順で、肩書きを外して毎日、論文の紹介をしよう。それをみんなで1時間…ランチを食べながらディスカッションしよう、というものでした。
これは随分いろいろなところでやられていると思いますが、うちのセミナールの特色は、論文を読んできて「こういう報告がありました、ああいう報告もありました」という知識を増やすためのセミナールではなく、むしろ論文を1つ取ってきて、その論文がどういう目的で書かれたか。それに対してこういう実験をしているが、それは妥当だと思うか。一番いい方法を使っているか。どういう実験成果を得ているか。その成果に基づいてどういう結論が出るかどうか…そういうことを議論する。
もちろん他の論文を読むことも必要ですが、努めて自分の研究・実験・論文を書くことに対する「実践的な討論」を心掛けるようにしました。他の人はこれを「早石道場」と比喩していましたね(笑)。
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そうして彼は生体肝移植のパイオニアになったわけですし、後に田中君(編注:田中紘一、京大教授、移植外科)がやって非常に成功しているわけです。
臨床でも基礎でも基本的な考え方は一緒だと思うのです。セミナールだとか講義だとか、あるいはポリクリだとか、名前はいろいろありますけれども「いかにやるか」ということが肝心なんですね。
Update : Nov.23,1999