アフリカの大地を緑に〜ジャカランタの花咲くジンバブエから【第5話】
これが出来ればノーベル賞
去年のノーベル平和賞受賞は、バングラディシュの小規模融資銀行を始めた方でした。集落全体の連帯保証で個人の担保は不要。
融資対象は、灌漑用ポンプとか、子豚生産用母豚、賃貸し用製粉機、果ては、これも賃貸し用携帯電話まで。融資先は、オヤジだとすぐ飲み代に化けるので、もっぱらオカアチャンとか。
確かに、ノーベル賞に値する小規模融資ですが、ジンバブエでは無理です。ジンバブエではインフレが年率1200%(物価は13倍)で、銀行の融資金利が年率100〜300%なんですが、「インフレ下では、借金をした方が有利」というのは、あてはまるんでしょうか。で、ジンバブエは「失敗国家」と呼ばれています。
エジプトではロバが自転車代わり (用水路をはさんで砂漠と緑の農地が隣同士)
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“砂漠の緑化"。私が北野の頃、地理の長谷川先生が何かの機会で、このことを話されたことありました。授業じゃなくて、ホームルームの講話だったかな。
千里で万博があった頃、日本も世界は開発の時代で、サハラ砂漠の真ん中に人造湖を作り、砂漠を緑化して、世界の食料難は解消しようという。後に聞いた話では、実現できれば、ノーベル賞という話でした。
小規模融資とは、だいぶ趣きが違いますが、30数年前は、そういう時代でありました。
私が赴任したエジプトでは、ナイル河の水を砂漠に引いて、まさに緑の農地を拡げる仕事をしていました。その後、お金のかかる緑化より、砂漠が拡大する脅威を防がねばということで、そっちの方の仕事も、担当することができました。
日本でも住民合意形成は大変 (あるダム直下の村で)
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“完全無欠・世界普遍の合意形成手法"。私が、今考えるノーベル賞候補です。夫婦喧嘩から、学校のいじめ、さらにはアラブとイスラエル、繰り返される民族紛争、文明の衝突まで。
ただ、海外で仕事をすると、身分制度や社会差別、多数決や民主主義偏重の某先進国の覇権主義、市場経済一辺倒の某国際金融機関と、ともかく、合意形成を相談するテーブルを準備するまでの障害が大きくて、まさに「天を仰ぐ」の思いではあるのですが。
しかし、この合意形成手法のネタは日本人が発明したって知ってました?
“KJ法"という東京工業大学の川喜田二郎先生(京大の梅棹先生のグループ)が開発した方法で、紙とペンでみんなの意見を集約しようというもので、岩波新書の“発想法"に解説があります。梅棹先生といえば、これも岩波新書の“知的生産の技術"に出ていた京大カードを梅田の旭屋によく買いに行きましたね。
KJ法は、姿かたちを変えて、海外協力だけでなく、日本国内の住民合意形成にも利用されています。
KJ法は一定の条件下では非常に有効ですが、参加するには字が書けないとだめなんです。識字率が低い田舎の国では、なかなか難しい。
ネパールの段々畑 (ここがKJ法の故郷 シーカ村)
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このKJ法の生まれた場所は、川喜田先生が住民合意形成を実践したネパールの片田舎で、道路の終点から徒歩3日かかります。私も歩いて行くチャンスがありましたが、段々畑の広がる美しい村でした。
「夫婦喧嘩からパレスチナ紛争まで、この本1冊で解決できます。」って、夢のようでしょ。
けど、世界平和の恩恵を一番受けている日本だからこそ、取り組むべき価値があると思いませんか。
Last Update: Jan.23,2007
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