▲ティラミス、キャラメル、チョコレートケーキなど、手作りデザートを食べ比べられる のもクリスマスパーティの楽しみ(そしてまた体重が……) |
ポラントリュイでは、小さい子がいるから夜遅いクリスマス礼拝はちょっときついわ、という家族のために「家族礼拝」が午後5時から催される。教会内には、普段の礼拝では考えられないほど多くの人でびっしり埋め尽くされ、椅子をいくら詰めて並べても足りないぐらいである。赤ん坊は泣くし、退屈して歩き回る幼児もいるが、咎める人もなく、「これぞ本当の家族」という暖かい雰囲気に包まれている。 余計なお世話かも知れないが、ヨーロッパの一人旅は、できればこの時期は避けた方がいい。外も寒いが、心も寒くなるからである。クリスマスマーケットはあるものの、たいていの店は閉まり、また、地元民は家族で寄り集まっているため、異邦人としての孤独を嫌と言うほど味わうことになる。また、たまたま空いているレストランがあって、「クリスマスメニュー」を食べたいと思っても、店内はやはり家族単位でお祝いをしているテーブルがほとんどで、一人では入りにくいことこの上ないと想像する。日本ではカップルが待ち繰り出してはしゃぐクリスマスは、欧米では「家族のための行事」なのである。ここでも、「ああ、ここはキリスト教国なんだ」と気づかされる。
プログラムによると、バンド演奏を聴きながら食前酒を飲み、無料で食事が振舞われるそうだ。サンタクロースがやってきて参加者にプレゼントをくれる。参加資格は自由。一人では勿論、家族で参加してもいい。連休明けの新聞に載せられるこのパーティの写真を見ると、お年寄り、そして外国人の家族が映っていることが多い。孤独にひっそり過ごすより、ここに来れば暖かい場所で大勢の人と分かち合いながら温かい料理が食べられる。寒く厳しい冬の夜の希望の灯が、ここにある。 一夜明けて、クリスマス。目が覚めると「メリークリスマス!」(フランス語でJoyeux Noël)と、家族でキスし合う。さほど信仰熱心でなくてもキリスト教徒にとってはイエスの誕生を祝う大切な日である。そしてプレゼント交換。子供達は、既に数日前からクリスマスツリーの下に置かれているプレゼントを開けずに我慢しているが、やっと包みを解くことができる嬉しい日でもある。
お役目に当たった家族は、会場の飾りつけから肉料理の注文を担当する。そして他の家族も、一人最低一品、サラダやデザートを持っていく。
たとえ年に一度でも、クリスマスという行事を名目に定期的に集まることにより、家族の絆が親から子、孫へと自然に伝わっていくのであろう。縁あって、スイスの地で大家族の一員に加えてもらったからこそ、この伝統を絶やさないようにしたい。 |