▲ポラントリュイのイルミネーション 決して派手ではないが、個人的には、こういった大人しい飾り付けのほうが好み。人口6600人の古都にふさわしく奥ゆかしい情景 |
キリスト教とは、イエス・キリストを救世主と信じ、また、イエスや使徒達の言行を記した新約聖書を信じる宗教である。そして、キリスト教国とは、国が公式に指定しているかどうかに関わらず、イエスの生涯、誕生から復活までを中心に1年の行事が成り立ち、祝日もそれに準じている国である。ちなみにスイスの法定祝日10日のうち、8日までが、キリスト教関係である。(残り2日は元旦と8月1日の建国記念日)スイスに26ある各州は、1年に8日まで独自の法定祝祭日を自由に指定できることが出来る。この中には、州毎の独立記念日(ジュラ州は6月23日)、聖母マリア昇天祭などカトリック独自の祝日などがある。 スイスでは、信仰の自由は認められているが、「自分は無宗教だから」とか「自分はイスラム教徒だから」などという個人的理由から祝日を無視することは出来ない、というのが現実である。例えば、「自分はキリスト教徒ではないので、復活祭前の金曜日が祝日と定められているが、断固反対し、登校して勉強する、または会社に働きに行く!」とは誰も言わない。万人が喜んで休日を楽しんでいる。 2002年の統計では、スイス国民の41.8%がカトリック、35.3%がプロテスタント、イスラム教徒が4.3%、そして無宗教は11.1%となっている。イスラム教徒は、ほぼ大多数が移民やその家族、または彼らの子孫だと言って間違いはない。カトリックとプロテスタントの人口率は、登記上そうなっているだけで、実際に信仰しているか、教会に通っているか、ということは、また別問題である。 また、後に述べることになるが、カトリック多数州と、プロテスタント多数州では、祝日が同じではない。カトリックの方が、若干、祝日の数が多い。プロテスタントの州に会社があるのなら、例えカトリック教徒であろうとも、自宅がカトリックの州にあっても、休暇を取らない限りは、働きに行かなくてはならない。 スイスで最も大切な行事と言えば、1年に2度、クリスマスと復活祭である。1年の始まりは暦上では1月1日であるが、ここでは、イエス・キリストの誕生を祝うクリスマスの話題から始めるとして、12月の行事から話を進めたいと思う。
日本でもクリスマス商戦と言うが、この時期は、スイスでもクリスマスツリーを初めとして、行事にちなんだ飾りつけに使うきらびやかなデコレーション、また、形も色も様々なろうそくが商店の棚を占めるようになる。このろうそくのうち、単なる飾りではなくキリスト教的な意味を持つものがあるので、ご紹介しよう。 フランス語ではAvent(アヴァン)、英語ではAdvent(アドヴェント)、日本語では「待降節」または「降臨節」と言われる、イエス・キリストの降誕を待ち望む期間がある。カトリックなど教会歴を用いる教会では、この第一日曜を一年の始まりとする。スイス人が信仰心に富んでいるかどうかは別として、一般家庭で、11月30日に最も近い日曜日からクリスマスイヴまでの4週間、ろうそくを4本用意し、輪型にまとめた常緑樹の枝や葉などでな装飾した盆の上に、備え付ける。第一日曜日に1本目に火を灯し、第二日曜日には2本目、と、火を灯すろうそくを増やしていく。カトリックなど教会歴を用いる教会ではこの第一日曜を一年の始まりとする。優しいろうそくの明かりは、長く寒い冬を迎えたばかりの人々を癒してくれるが・・・何よりも大事なことは、火の用心! である。
この時期、チョコレートの売り上げも凄い。ただでさえ、スーパーや食料品店ではチョコレートコーナーが幅を利かせているが、これに、「クリスマス仕様パッケージ」チョコレートが加わる。そのきらびやかさは、目の毒、とでも言おうか。私の夫も含め、スイスには甘党の男性が多いが、この時期は、美味しくバラエティに富んだ味のチョコレートの食べ過ぎで、男女とも体重が確実に増える。食いだめして冬眠したまま越冬し、春にやせ細って目覚める動物はいいが、我々人間は寝てばかりいられないのが、運のつき。しかも、毎日甘い物を食べるので痩せることはない。冬が終わりに近づいた時、だぶついた我が身に呆然とし、頑固な贅肉を落とすのに四苦八苦するだけである。
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