Salut! ハイジの国から【第4話】 まえ 初めに戻る つぎ

一年がかりの結婚式 その1

日本においても外国人との結婚が珍しくない今日この頃、「国際結婚」という言葉はいささか陳腐な気もします。四方を外国との国境に囲まれたスイスには、ありとあらゆる国籍の外国人が出入り、在住し、当然、「国際結婚」は特別な行為ではありません。しかし、その手続きとなると、ずばり、面倒くさいものです。スイスは市町村によって手続き方法が異なったり、審査の厳しさにも差があり、事前に確認が必要です。


▲和やかな入籍の手続き
いつも冗談を飛ばす義理の弟が保証人としてサイン中

 
当時、私達の周りには日本―スイスという国際結婚の夫婦が皆無で、結婚を決意したものの、何をどうして良いかすぐには分からず、全くの手探り状態でした。とにかく州の戸籍係のエライサンの所に行けば分かるだろうと面会予約をして直接会い、必要な書類について教えを請い、前後して州都ベルンの日本大使館にも連絡を取りました。また、彼の戸籍がある村の共同体事務局に行き、私のパスポートに「メルベリエ村に92年9月1日,“観光客として到着”」とスタンプを押してもらいました。これが「婚約者ビザ」としての効力を発揮し、六ヶ月間婚姻無しで在住できることになりました。(学生や就労ビザ無しでの日本人のスイス滞在は三ヶ月と限定)

1993年2月11日、私達は村役場に「結婚保証人」と共に赴きました。この保証人は、普通、身内や親しい友人の中から男女各一名を選びます。私達の場合、夫の妹とその恋人にお願いしました。(彼らは当時同棲状態でしたが、時期が来れば結婚するだろうという確信があったので)入籍に立ち会う方は戸籍係の責任者ですが、小さな村ゆえに家族全員と知り合いで、和気あいあいと進行しました。妻と夫の身分(出身や独身であるかどうか)を確かめた上で、結婚についての規則を読み上げ、巨大な台帳にサインして入籍完了。全員の祝福を受けます。その後は家族だけでレストランで食事。奮発して「シャトーブリアン」という分厚い牛ヒレ肉のステーキを食しました。

私達夫婦の結婚生活の第一歩が踏み出されたわけですが、これはほんの序章。同年7月31日、教会での式とレストランでの披露宴が本当の意味での結婚となりました。

 
▲結婚式
19世紀半ばに建立された教会にて

スイスの結婚式は「手作り」です。伝統的な式を希望する場合、結婚する本人達が何ヶ月も前から計画を練ります。 まず、教会の予約。そして挙式を担当してくれる神父さんとの打ち合わせに入ります。 夫の一家は全員洗礼を受けたカトリック教徒ですが、それほど凝り固まっているわけではなく、カトリックでない私や父母を配慮して「聖体拝領の儀式」(分かり易く言うと神父さんが小さな丸いおせんべいみたいなものを信者の口に入れる、あの儀式です)を省いた式にしたいと申し出ました。神父さんの表情からは若干、不本意さが読み取れましたが、異教徒同士の結婚もごく自然な現象になった今、時代の流れには逆らえないと思われたのか、すぐに柔軟な姿勢を示してくれて、結局、私達の希望通りの簡素な式となりました。(ちなみに夫の父母の時代までは、同じキリスト教徒のカトリックとプロテスタントの結婚さえ、親族・外野入り乱れてかなり物議をかもしたらしく、どちらかが改宗させられることもあったそうです)

まえ 初めに戻る つぎ


Last Update: Feb.23,2004