前回も述べたとおり、筆者は京大で6年間太陽電池の研究に取り組んだ。世界の太陽電池の生産量が急激に増え始めるのは後にも述べるように1994年であるが、筆者が研究を開始した1988年当時は、日本の大学では単結晶シリコン太陽電池の研究はほとんど行われていなかった。当時の認識では、この材料は既に企業での開発生産段階で、大学の研究では勝負にならないと見なされていたからである。実際にその生産量はそれほど大きくはなかったが、国内のほとんどの大学はこのテーマに消極的だった。
また、太陽電池だけでなく、研究室の仲間の研究を通して、半導体素子全般の物理や解析法にも明るくなることができた。太陽電池自体は半導体素子の中では単純な物理で動作し、解析法もさほど多様ではないが、研究室の仲間が様々な半導体素子の開発や物理現象の解明を目指していたので、門前の小僧習わぬ経を読むがごとく、各種の半導体材料の特徴や解析手法について知識を得ることができ、半導体素子開発のための様々なアプローチ方法を学んだ。
入社したのは1994年、希望通り太陽電池の研究部門に配属され、単結晶シリコン太陽電池で、太陽光から電気へのエネルギー変換効率を世界最高に向上させる研究プロジェクトのメンバーの一員となった。そこでは、大学で学んだ半導体物理によるアプローチから太陽電池の性能向上に貢献することができた一方で、充実した設備を活用してテクニックによっても性能を向上できるということを学んだ。1997年、結果的に世界最高記録は出せなかったが、世界記録の23.7%に肉薄する23.5%を記録してプロジェクトは終了した。
なお、日本国内で最大出力3kWのシステムを取り付けると、平均的な条件で年間約3300kWhの電力量を発電する。取り付けた家庭が得られる利益は、消費分と電力会社の買取り分を併せて年間およそ7.5万円、単純計算して約16年で元が取れることになる。オール電化住宅や時間帯別料金などと組み合わせれば、実質的にはさらに短い期間で元が取れる可能性もある。新築時にいっしょに取り付ければ、太陽電池の取り付け費用は住宅の建築費に組み込まれるので、実質的な設置費用はさらに低くなる。 住宅用太陽電池の補助金制度が始まって以来、国の補助金制度による需要の拡大に生産量をうまくリンクさせることで、シャープの太陽電池事業は順調に成長した。2000年に生産量世界一になって以来、その地位を他社に譲っていない。2003〜2005年のいずれの年度においても、シャープ製太陽電池生産量は全世界の約4分の1を占め、2位に3倍以上の差をつけている。近年では、国内需要だけでなくドイツなどへの輸出量が急増している。ドイツでは、太陽電池が発電した電力を通常の約3倍の料金で買い取ることを電力会社に義務付ける法律が施行されており(フィードインタリフ制度)、需要が急拡大しているのである。欧州のいくつかの周辺国でもこの制度の採用の動きがあるが、オランダ国会がこの制度の導入にあまり積極的でないのは、住民としては残念で仕方がない。 |