阿部俊一先生
書道の時間は2コマ連続の授業やった。一番初めの授業の時に一年分を喋って、喋って、喋りまくって…次からはもう一切喋らへん。ひたすら書くだけや。その時、喋ったのが「呼吸法」について。一番の基本はやっぱり「息」やからな。筆を下ろすときには息を止めろ、いうことやな。
禊の鍛練をする阿部先生 |
目に見えないけれど呼吸をしている…「見えないけれども存る」それの追求や。それを皆に説明した。北野の生徒に伝えたかったのは、正に「呼吸法」だったわけや。腹式呼吸法ともうひとつ逆式腹式呼吸法と…。書道教室に写真貼ってなかったかな。「直腹筋と斜腹筋」のな。あれがコツなんや。
北野に来る以前に「お習字」を習ってた子は皆あかんねん。先入感があるさかいな、習ろてた通りに書くやろ。塾の指導と高等学校とは違うわけや。高等学校は芸術科の書道やから、そもそも目標が違うわけや。
それでも…卒業の時にはな。「君らは下手くそでも何でもない…みな芸術家なんや」言うて…「その根元の呼吸、見せたる」言うて開陳したもんや。お腹に筋肉の柱が一本、どーんと立って「これが若くしてできたら物凄い大物になる…君らできるか?」言うたんやけど(笑)。腹筋が丸まって他のほうが内臓にひっついて腹直筋だけがグッとまっすぐ立つ…そういうことが、呼吸法の鍛練だけでできるようになるんや。
しかしまぁ芸術科の成績って欠点が無いから、みな安心や。私の場合、書道部は5点、合気道部も5点(笑)。その次4点、最低でも3点や。 5、4、3しかつけへん。2点は無し。よっぽどサボった奴には2点つけたけど、34年間で数えるくらいや。それでも皆、単位取れるもんな。そやから毎年、大勢受講してくれた。建物も別棟やし自由やったんやな。本館ではみな目指す学校は京大、阪大、神戸大。別棟では書道だけ呑気なことやってる(笑)。
聞き手●壽榮松正信(74期)、石倉秀敏(84期)、
谷 卓司(98期)、中西郁夫(101期)
収 録●Sep.18,1998
(吹田市元町の天之武産塾合氣道々場にて)
Mar.13,1998
(北野高校武道場にて)
協 力●佐伯新和(98期)