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大阪の長居公園に自然史博物館があります。祖父母が平野区にいて、今でこそ地下鉄谷町線が天王寺から伸びてますけど、昔あれがなかった時代には地下鉄御堂筋線で長居まで行って、そこからバスに乗ってたんですね。その途中で寄り道して…長居の植物園にはよく連れて行ってもらった記憶があります。だから、その中に博物館があることや、そこに行けば虫の標本とかが置いてあることなんかも、わりと小学生の早い時分から知ってました。
一人で行こうと思った最初のきっかけはね。博物館の先生に質問を書きましたわ。最近はうちでもインターネットとかメールでの質問が子供たちからよく来ますけど、当時は手紙に書いてね。そしたら返事を頂いて…「じゃあ、博物館にはこういう催しがあるから、来たらどうや」というお誘いを頂いて、それで行くようになったんです。
そういう行事に参加するとですね。博物館の先生には(僕も今はそうですけど…)「あ、こいつはできる奴や」って分かるわけですよ。同じ虫好きでもね…なんちゅうんかな、プロ野球のスカウトもそうかも知れませんけど(笑)。「こいつはきっとかなり虫やってる奴や」とか…直感で判るわけです。そうすると博物館の先生も周りの大人も話をしてくれやすいんですね。
そんなことから博物館に通うようになったんですけど、遠いですからね。うちから一時間くらいかけて行くような距離で。そんなに頻繁には行ってないですよ。気が向いたら行くっていう感じで。でも今考えたら、ものすごく迷惑な子供やった思いますね。いざ自分が博物館に入ってみるとね、その忙しさが骨身に染みて分かりますから(笑)。
子供やからね…別にアポも何も取らんと行くわけですよ。「こんにちはー」とか言うて、気楽にね。そしたら学芸員の先生がいらっしゃるでしょ。研究室があって、わりと居心地が良いんですよ。「何しに来たんや、おまえは?」っていう嫌な顔もされずに、「あぁ、よう来たなあ。よう来た」言うて歓迎されて。
とにかく、行けば誰かいるんですよ。だから部室と同じですわ。部室へ行ったら誰かいるじゃないですか。一人で鍵を開けるのはちょっと嫌やけど、それでも開けたら誰かがやって来る…そういうようなイメージを持ってましたね。だから向こうにとっては甚だ迷惑な存在だったかも知れません。
1981(S56)年8月31日(月) 毎日新聞大阪市内版20面 |
そうやって中学生の頃から…わりと博物館を利用してましたね。