われら六稜人【第45回】「養生こそ至上の処方なり」
第4診察室
医師になって
一度、診療所やらないかということで、診療所の勤務を2年ほどやったんです。その時に僕自身が、正にしょっちゅう風邪引いて寝込むんです。病院にいたときは別にようけいおるから休んでもよかったんですよ。あいつ風邪引いたら一週間は出てきおれへん言うてね。しょっちゅう風邪引きおるし、また1週間休みおると言われていたらすんでいたんですけど、ところが診療所を一人でやらされてた時に休まれへんのですよ。前もって休むのやったら誰かに頼んでということは不可能ではないんですけども、だけど、はっきり言うて風邪引いたぐらいで休むなという考え方もあるでしょう。自分で風邪薬飲みながらやっていたんですけどもこれは自分はおかしくなるな。それで食事とか、漢方薬に興味をもったんです。
僕はしょっちゅう医者へ通っていましたからね、これだけ医者通いするぐらいだったら自分が医者になった方がええと思ったんです。僕が医者になったら医者通いせんでようなるちがうかなと発想ですね。
だけど医者になってみたら医者通いはあんまりしないにしても、やっぱり風邪引きやすいとか病弱やいうのは治せないんですね、治しようがわからないんです。学部で4年間勉強したけれども自分が風邪引きやすいのはどうしたらええのかわからない。
漢方薬というのは体質改善という感じがあったでしょう、それで風邪引きやすい体質を変えるのに漢方薬は使えるかなと思って、それで自分で漢方薬の本をちょっと読んだんです。診療所に勤務しながら。読んでいるうちに来ている患者さんの中で同じような訴えのやつが載っているわけですね。漢方の本には症例ばっかり書いてあるんですよ、こういう人が来てこういう薬を飲ませたらようなったということばっかり書いてあるんです。よく似た症状の人が来てこれ飲ませたら良くなるかもと、今来ている人に一遍飲ましてみたろうと思ってやったわけですよ。2・3人良くなった言うんですよ。患者さんは、あの薬効きました言う。だけど私自身はいろいろ飲んだけどやっぱり風邪引きやすいの治らない(笑)。
その時に丸山先生の本読んだんですよ。それ何の本やったか忘れたエッセイみたいなものですけど、そこに「食は命なり」と如何に命にとって大事かというのが簡単に書いてあるんですよ。
当時僕は食べ物自体がいい加減やったんですね。特に疲れやすいし、いろいろ怠るくなったりするからかえって、チョコレート食べてみたり、疲れたら甘い物を食べたりねそんなことしていたんですよ。ところがどうも砂糖は良くないと書いてあるわけね、砂糖いう物は非常に偏った食べ物なんです。だからカロリーだけはたっぷりあるけど他の栄養は何にもないっていうのは砂糖ですよね。なるほど一理あるなと思って、基本的に自分の体質を変えるためには食事を変えないかん。きちんとした物にせないかんとそのとき思ったんです。
それで食事の内容を変えたんです。野菜を中心にして肉や魚を少なくして、甘い物は一旦止めて、僕元々甘党なんでね。タバコと、コーヒーは中毒気味ぐらいに飲むんですけどそれも減らして半年1年とたったら、結構忙しくしていますから、忘れてやっているとここ半年風邪引かんなとか、一年経ったのに風邪引いていないなとか、そんなふうになったんです。これは満更でもないと食事を変えたのは正解やったなと。
同時に漢方薬の方は患者さんで2・3人にも効いたんです。それでいい気になって次々出していたら効かないんです、これは最初はまじめに本を読んでね、これは、ぴったりやなと思って出したから効いたんかなと、後はいい加減に出したからあわんのかなとかね、これは漢方もまじめに勉強せなあかん、まあそんなことで漢方を勉強してみようかと思ったあれなんです。
西天下茶屋にあった診療所に2年間勤め、先輩の紹介で堺の病院へ勤めることになりました。そこで結局、僕はただ漢方勉強したい言うたわけです。あかんちゅわけです、日本の伝統的な医学やし誰かが伝えていかなあかん。そう思っているのに、趣味でやれと言われました。漢方は、まともな医学と思われていないわけね、だからもっと内科の一分野の専門医として持てと、消化器とか、循環器とかね、呼吸器とか、何か持て言われた。
僕いろいろ考えて一番狭い、趣味の漢方に時間さけるように思って、糖尿病の専門医にしますと言うて、そんなら糖尿病だけではあかんちゅうわけ。糖尿内分泌にせいと。僕最初そんな言うてたんやけどもね、後でね別の奴が内分泌というのは大したことあらへん。糖尿だけやっていたら内分泌の患者は甲状腺だけやと、他副腎とか、下垂体いろいろあるけど患者はおらへん、わしら一生の内に一人会うかどうかぐらいと言うてくれた、そうやなと思い糖尿内分泌が専門、それで漢方やっているわけです。
漢方をやっている人たちというのは、西洋医学をやっておられて、西洋医学の免許を持っているんですよ。西洋医学の診療所とか病院みたいのをやっておられるのです。ただ変な話しでね、鍼灸師と薬剤師の2つの免許があると診察して薬出すことできるんです。薬剤師は診察できないですね。鍼灸師は診察できるわけですよ、裸にして針刺すわけですから薬出せないでしょう。薬剤師で鍼灸師やったら診察して薬出すことできます。そんな人も中にはおりますけどもね、普通は医者ですね。
東洋医学だけの資格がないのです。医者は医者しかないですから。西洋医学を勉強してきて医者になってから漢方をやるいうわけです。国家試験で東洋医学のというのはないんですね。
日本では逆に漢方も保険扱いできんようにしようという動きですわ。ようするに保険財政とか赤字だということもあるんです。ビタミン剤は保険効かないとかなっているし、風邪薬保険効かないようにしようとか、漢方薬も保険効かないようにしようとそういう動きもあるんです。それもなかなかそうできへん面もあるんです。漢方医を国家資格として将来つくろうなんて動きは全然ないです。
一時中国の針麻酔というのが有名になった時期ありましてね、もう20年ぐらい前ですけどもね。その頃は針とか漢方薬が一時ブームになったですけども、針麻酔も結局は実際実用的ではなかったし。
Update : Aug.23,2001