特に若い人たちに支持されなくなりました。日本酒というのは「差しつ、差されつ」の御返杯の世界です。これがまず、ドライな若者たちに嫌がられるのです。また、日本酒はグデングデンになるまで酔っぱらうという傾向がありますが、最近の若い人たちは深く酔うよりも酒の味を楽しみたいということで、どうしても日本酒は敬遠されがちな存在になってきたのです。
これからの酒造業界は、従来のように勝手につくって売っていたのでは潰れてしまいます。マーケティングというか、どういう酒が求められているか…ということをいかにキャッチできるか、需要をどこへ拡大すればいいかを研究することが大切です。美味しい酒をつくっているだけでは駄目。マーケットを研究してどういう酒をつくればいいかを考えなければなりません。
ボクはそのために、会社の中にいないで出来るだけ外へ出かけることを心掛けています。デパートやスーパーの売場に出かけて行っては、じっと客の購買動向を観察するのです。酒販の免許制度も無くなって、これからはどこでも酒を売ることが出来るようになりました。だから今までとは違う売場ができ、今までとは違う客が買いに来るのです。危機ではなくてチャンスと考えています。
「関学食文化の会」というのがあります。メンバーには居酒屋の主人もいれば食品メーカーの幹部や、料理学校の先生など…広く「食文化」に関係のある様々な分野の人が100人ほど集まるのです。集まっては、毎回いろんな料理を食べたり見学しては「食文化」を研究するのです。
先日も中華料理を研究する会がありまして、ビールや紹興酒は出されましたが日本酒は出てきませんでした。「どうして日本酒が出ないのですか」と聞きましたら「中華料理に日本酒は出さないものなんだ」と言われ、なるほどそういうものかと思ったのです。非常にボクにとっては示唆的な会合でした。この会には関学出身の同業者が5人いまして「なるほど、じゃあ…」ということで、手を組んで勉強会を始めています。
こういう需要開発なんてものは自分のところ一社で頑張ってみても駄目で、業界全体で取り組むべきことなんです。しかし、残念ながら業界そのものが封建的ですし、特に大手メーカーのオーナーにその体質を受け継いだお年寄りが多くて、なかなかうまく行かないのが現状です。