北野のうた、アレコレ
その頃ね、ボクは全部知らないんだけど…歌うと停学になる唄があった。「ポプラの並木ぃ六稜の〜煉瓦塀に囲まれてぇ〜」…ココまでしか知らないんだけど。なんか…学校の悪口でも言ってたんでしょう。誰が作ったのかね。
いやぁ、でもね。それは見事な並木でしたヨ。ポプラなんて安い木だからね…安いもんしか植えないンだろうね。松なんか植えない。ポプラもってきてガァ〜ンと植えるから、平気で大きくなってきて…。
「ポプラのぉ並木、六稜の〜」
「ちょっと来い」
「はい」
「何でアノ唄、歌った?好きなのか?」
「いぇ、好きでもないです」
「ほぅ。お前…2、3日休め」
ともかく…その頃は「先生を神聖なもの」と私は習いました。今でもそう思ってますけどね(そのくせ、意地悪だけどね〜)。
僕は北野のお祭りだっていうから「それじゃあ、俺がレコードを全員に寄贈しよう」って…5,000枚くらい作ったかな。そしたら藤井がね…「版権がある」って。版権なんか無いよね〜そんなものは。でも…結局ポシャって、ダメになっちゃった。
それは良かったですよ。六稜の校歌をね、わざわざ校歌みたいに歌わないンです。何しろ作ったのが土井晩翆ですからね。えらいもんですね。
天然とぉ
はたぁ人間とぉ
とこしえにぃ我のかがぁみ
眺むるも胸のときめきぃ
あぁあ友よ、ふるわぁざらめや〜
そう歌うと、いかにも校歌だという感じがするんでね。校歌のように歌いたいと思ってね。
ホントは、淀川の…なんだけど。
淀川ぁのぉ〜
深ぁき流れよぉ六甲の雲いるぅ峰ぇよ。
名にし負ぉう大阪の城
天才ぃの高きぃかたみぃよ。
いい歌だよね。懐かしいなぁ。
今はこの校歌じゃないんだってね。え、歌詞が違うの?
え?アレ…あるの?そういうものが?CD…
こんなもの…売ってんのかね。売ってんだろうね。非売品?
僕は長いこと、この「澱江」というのがね…。水が濁ってたのかね、淀川は。いくらか濁ってたんだろうね。
澱江ぉ春の花のぉ色ぉ
錦城ぉ秋の月の宴〜
歴史はふりてぇ世は荒れてぇ
ただ幻の映え匂う〜
民百万のぉ夢破るぅ〜
バットの響ぃ〜…
てね。何でも野球部のためばっかりに歌いたくないからね。バットが嫌いで辞めちゃった。だって、もう少し強くならなくっちゃ。可哀想だよね、北野も。チッとも野球が強くならない。
これも誰が作ったのか分かってないンだな。古い歌だけどね。コレ、分からないことが一杯あるなぁ。「三州」って何でしょうね。3つの州があったのかね。
この頃の歌に「図南の翼いま成れり」なんて言うけどね。「図南」って…ヨーロッパのことでしょうね。そういうことを非常に憧れてましたからね。『ワシントン』という唄にも「図南」が出てくる。
ウラルのかなた風荒れて
図南に駈ける鷲一羽…
ここにも出てくる。
今はしかし大阪のことを「澱江」とは使わないね。
バカリキがこれが好きでね。岡田っていったかな。知ってる?(※編註:岡田喜雄(40期)氏)北野って言うと必ず現われる…アレがしかし死んだンで、みんなホッとしたらしいね。近ごろの先生みんな若いから。
お決まりの制帽とハッピ姿でね…やって来ては「おぉい。ダメだソラ!何やってんダ!! やるぞぉ。澱江ぅ〜」…。すぐ日の丸の扇子をだしてね、アレ、朝日(新聞社)なんだね。
先生のハナシはボウズに聞くとよく分かるんだよね。水鳥先生。まだよく覚えてますから。
僕はモノマネがうまくてね。アメリカの唄を歌うんです。するとボウズが「素晴しい。発声が素晴しい」って、褒めてくれてね。「'Way down upon the swannee ribber …」「悪くない。発音もシッカリしてる」…そのくせ、点数は悪かったな。
オーヤンってのがピアノを弾くンですけどね。ひどいピアノでね。あのボロボロのピアノを「パン、パン、パーン。ハイ」って。体操の先生なんだけどね。森田先生っていったかな、森田浦之丈。「キヲツケェ〜。オハヨウ!」「おはようございます」「ハイ。オイッチニ、サンシ…」ってね。
だんだん…年を取っていくということは科学的に面白いですね。あぁ、コレも忘れちゃうか…アレも忘れたなぁ…。全部「整理」するんですね、死ぬまでに。整理してるんじゃないかと思うンだ。で、整理しきれない人がお化けになって出てくる(笑)。