ボクと北野と〜悪童列伝
北野に友田という怖い先生が居ましてね。綽名をバルといった…バルチック艦隊から来たんでしょう。そのバルさんの倅が友田均といって堂島小学校には一緒に行っていた。なかなかの名門でしたね。そこから十何人…北野へ入りました。私も「ついでだから入れちゃえ」って入れて貰ったようなもんですがね(笑)。
奇麗な洋服を着せてもらって、白線のついてる帽子を被って…。女の子なんか嫌いじゃなかったんだけど、ウカツにそういうことをすると、すぐクビになるんでね。退学とか停学とか…。
私はというと数学が好きだった。他はあんまりできないね。地理や歴史なんか…何でクダラナイ、古い人の、ワケの分からん坊主の名前なんか覚えたりするんダ…と思って。父親が昔、教育者だったもんですからね(その反動で?)非常に無礼な生徒でしたね。
「天井のうえ上がってションベンできるか?」
「繁サンできるんかいな?」
「いゃオレだって…やれと言えばやるよ。だけどサ、そういう勇気が君タチあるのか?」
「ない」
「ないねンやろ」
結局、言い出しっぺの私が天井に上がりまして…。
それが、すっごい蜘蛛の巣でね。内緒ですが、私が世の中で一番嫌いなのは、この「蜘蛛」なんですね。
それで、ギョウテン(※編註:原子富蔵先生)が「子のたまわく」と言うところに、ポタァ〜ポタと小便が…。これで5日間くらい休まされましたよ。
ただね。小便はねぇ…イザという時に出ないンだね。真っ暗な蜘蛛の巣だらけの天井で…「ココだ!!」って瞬間はわかるンだけどね(笑)。
校長室の上に教室があったンですがね。そこで竹刀を2本、十文字に結んでね。それに柔道着を着せて、へのへのもへじを書いて、屑かごをかぶせてね…。それがちょうど校長室のところでタァーと降りてくる…それで2日くらい停学を喰らった。
コイモはね…植村先生って言ったかな…ヘビが嫌いだったんだね。それで「脅かしてやれ」ってんで誰だっけかな…教壇の上にヘビの抜け殻を置いたヤツがいる。そしたら血相を変えてね。「そんなに殴らなくてもいいじゃないか」というくらい殴られてたね。当時は男の学校でしたからね。男と女を完全に分けていたから…。
ヘビっていうと中西先生、柔道の教師だった。
ある日、学校にね。気合いで人をひっくり返すという人が来たの。
「ンなこたぁ、嘘だ」
そう言いながら、みんな柔道場で並んで座ってた。するとヘビがね
「じゃ私、やって貰おう」
「一番、端に立ってください」
広いんだよ…柔道場って。それでその人、大きく深呼吸してね。
「テャア〜〜〜〜」
そしたらサ、ほんとにひっくり返っちゃった。あぁいうこともあるもんだねぇ。どういうコトだか今だに分からないンだけど。
「森繁、次の映画の解説やってくれヨ」
って言われてね。よく教壇に立って演りました。
星は乱れ飛び月は冴え、
鴨の河原に千鳥啼く。
霜さえ凍る三条の橋の袂に端座して
…(中略)…
龍虎のいななき、獅子のふん……
(今でも覚えてるね)
すると、みんな感心してね。
「この次の映画は何だ」
って…次の予告も全部しなきゃ……(笑)。
ま、言うならお茶目でしょうね。
「何だ、お前。おい、おいおい」
「いぇ、もう済んだんです」
「済んでないじゃないか、お前。書いてないだろ」
「書いてなくても、私はもう済みました」
それが問題になってね。
「お前みたいな奴は落第しろ!」
いきなり落第なんです。
今は「留年」なんて奇麗な言葉で言いますけどね、落第ですよ。落第坊主…情けないね。それで南部や森島たちと一緒の学年になった。だから44期と45期にまたがっている…。
そういうコトばっかりでしたね。あんまり誉められたコトはないンだ。