日本人の発見した小惑星6413番が
「IYE」と命名された証明書(1997年)。
小惑星もたくさん見つかり、付ける名前に困ったらしく、小惑星の研究は全くしていないのに名前をつけて戴いた。恐縮している。なお、名字の英語表記はヘボン式では「IE」だが、中学以来「IYE」で通している。
天文学という学問が日々の生活にどうは反映するかという点については、いろいろな考え方があるとおもいます。しかし、我々の宇宙観、自然観に大きな意味があると言うことは確かだと思います。例えば宇宙の大きさひとつにしたって、エドウィン・ハッブルという人が、天の川銀河の外側にも銀河があるということを発見したのは、ほんのまだ75年前の1924年のことです。そして、ここ10〜20年間に世界中でいろんな望遠鏡がつくられ、科学観測衛星があげられて宇宙に対する理解がほんとに爆発的に深まりました。ぼくが大学院に入ったほんの30年前に習った、銀河や宇宙についての知見は、今やはるか昔話になりました。
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放送大学のTV授業のための番組撮影時の一コマ。
(マウナケア山頂、1996年)
※4週連続のTV授業は2000年春まで年二回、
放送大学にて放映中です。いろいろなロケ
シーンを一週間がかりで撮影しました。
98年には国立天文台でも、ビデオ『宇宙の
果てに挑む』を、やはりマウナケア・ロケで
製作。番組づくりの面白さが少し分かってきた
ような気がします。
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また、今インターネットの時代ですから、新しい発見や理論は、ただちに全世界に広まります。この勢いであと10年20年のびていくと、宇宙全体が見えてくるかも知れません。そうすれば、たぶんぼくらの次の世代、次の次の世代になると人生観がまったく変わってくるかも知れませんね。実際、宇宙の奥行きの4分の1まで地図をつくるというプロジェクトがもう始まっています。
しかし、そうした天文学の発展は、もはや一国の経済力では担えないほどになっています。すばる望遠鏡は400億円ですが、この次の観測装置の予算はもっと大きくなる。たとえば、ワールド・アレイといってますけれども、地球規模の干渉電波望遠鏡を日本とEUとアメリカと一緒になってつくろうという相談を始めています。それから次の巨大反射望遠鏡の計画も、今年から議論を始めるんですが、世界の国々が一緒になってつくる必要があります。
幸い、天文学の世界は、新しく発見されたことをオープンに議論する、インターナショナルな学風があります。そういう意味で国境を越えたネットワークづくりということは天文学の世界では早くから進んでいました。これを更に進める必要があります。
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すばる望遠鏡で撮影された オリオン大星雲
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もう一つ肝心なことは、これからの天文学を担う若い研究者の育成です。天文学の分野は、この点でも本来自由な学風を持っている学界です。大学院生でも、新しい理論、新しい発見を先輩や先生を乗り越えて提起する条件は十分あります。その意味でひとつ苦言を呈すると、ちょっとこのころ「生意気な」学生が減ってきてるかな、と言う気がします。なんていうんでしょうね、自分がほんとに必要だと思ったら遠慮しないで主張する。そういう学問に対する気迫が薄いような気もします。指導してきた学生もそういう気迫を持っていった人は大成してちゃんと研究者になっていますけれども、やっぱり「待ってる」ような院生は成長するのはむつかしいですね。こんな老人ぽいことをいうなんて、ぼくも年をとったんでしょうね(笑)。