Q2:大黒選手は、いつ頃から活躍できるようになるとお思いですか?
もう技術的にはかなりのモノを持ってますね、大黒は。ただ、彼はトップチームの座を定位置としては持っていません。サッカーは技術だけではダメだと思うんです。やっぱり、「メンタル」これがしっかりしないと駄目だと思いますから。彼は、これからそういう「メンタル面」を自分で鍛えていって、急激なスピードで吸収していくと思いますから、将来有望な選手だと思います。彼は彼なりのフォーメーション、いわゆる考え方を持っていますからね、僕は伸びる選手だと思いますね。
サッカーは単にフィジカルな面あるいはテクニカルな面だけでは駄目なんです。やっぱり一番大事なのは、試合の中でイマジネーションを作っていくって事ですね。自分で次の試合展開がどうなっていくかってことを想像し推測して、その次に「じゃあ、自分はその中でどういう役割を果たすか」っていうことを考えるのが、今求められている近代サッカーです。で、そのイマジネーションの力。これが正に頭・心のメンタルの問題ですから、こういった力を備えていかなければ一流選手にはなれないです。で、そういった意味では大黒選手も有望だと思うんです。稲本の次に出てくる選手やないかなぁ、と。
Q3:今ガンバ大阪では、宮本選手・小島選手・稲本選手らが、ユースやオリンピック等若い世代で活躍していますが。
これは、うれしいことです。今Jリーグでは16チームありますが、平均年齢ではガンバ大阪は若いほうから3番目です。特に、レギュラーだけでいくと、ひょっとしたら一番若いかもしれません。ゴールキーパーの岡中(=元日本代表)が31歳、キャプテンの實好が27歳ぐらいで、あとは22歳、21歳でしょ。ガンバ大阪からオリンピック代表は3人いましたよね。でも、候補は6人いたんです。海本だとか新井場とかはこれは皆、長期間のケガをして今ちょっと休んでるんですがね。ホントにうちには若い人材がいるんです。その代わり、A代表はゼロです、今は。ということは、チームが若くてそういう選手で構成されている。そして、そういう選手が確実にオリンピック代表なんかに選ばれてきているという事実は、戦う力を持っているということになる。しかし、まだ若いということです。でももう少し、あと1年半・2年経験を積む事によって、確実に日本のリーグを支える選手になるだろうということは目に見えています。よそのチームの目から見ると、非常にガンバはうらやましいという声を聞かせてもらいます。だけど、順位がそこまで追いついていないことが、私は不満なんですがね(笑)。
Q4:ずっとサッカー関連の仕事に携わっていきたいんですが、チームのトレーナーとかになるにはどんな勉強をしたり資格をとったりしたら良いですか?
一般的に言うと、大学で生理学なりをきっちりと勉強した後、専門の先生について訓練を受けて、それからガンバのトレーナーになったり、そういうコースで来る人が多いですね。だから、スポーツ関連の学部がある大学を皆出とりますね。何気なしになったという人はほとんどいません。指導者の資格にも 3クラスあります。プロの監督をしようと思えば、SAというレベルの資格が無ければできないんですね。だから監督になりたい場合は、どこかのクラブに入れてもらって監督の見習いをさせてもらいながらコーチから実践的訓練を学ぶ。そして、同時に理論的な訓練を日本サッカー協会の講座に行って…場合によっては海外に留学して…という形で、監督の道を目指すとか。マネージャっていうのは、サッカー業界のことを一般的に知っていて体力さえあればできるようですけども(って、こんなこと言ってたらうちのマネージャに怒られそうやけども…笑)。まぁ、手にしっかりと資格をつけるということですよね。何になりたいかということを決めた上で、資格をとっていくための勉強をされたら良いと思います。
Q5:これからガンバ大阪はどういう目標をもって試合に臨むのでしょうか?
一言で言えば、「優勝する!」。優勝しないまでも、いつも優勝に絡む地位にキッチリおるというそういうチームにならないと駄目ですね。93年にプロリーグができあがって、ガンバ大阪は最初からプロとしてやってきたチームです。残念ながら今までの最高が2位ということで、それが一回あっただけで、どちらかというと二桁のことが多いんですね。去年が14位でしたから、今「今年は優勝します」なんて言ったらこれはウソに聞こえますから、まず今年は5位ぐらいを目指そうとしています。で、前半はケガ人が続出しましてね、結局 10位で終わっとるんですが、後半戦は新監督に早野さんを迎えてとにかく5位を目指してやっていきたい。その次は、もう少し上を狙っていく。そして、優勝へ近づいていくという風にやっていきたいです。これはやっぱり勝負ですから、優勝に近い結果を出さなければファンは納得しませんよね。「結果がすべて!」こういう気持ちです。
Q6:そのための具体的な強化方針がありましたらお聞かせ願いたいのですが。
私はコンパクトでスピィーディーなチームを作る事だと思っています。それがお客を楽しませる事だと思いますし。もっと分かりやすく私流に言うと、阪神タイガースみたいに負けても魅力があるチームを作るという事です。勝ったら一番良いけども負けても魅力があると、負けても「あそこまでやったんだからしょうがないね」とか「良くやったね」とか言われるような。なんか、そういうようなプラスアルファの付加価値をチームに付けられるようにしないとね。見に行った人が損した気分にならないチームを作らないと。ですから今流のマーケティングの言葉で「サッカーもCS(=カスタマー・サティスファクション)だ」と言っています。お客さんを満足させない限りお金を払って来てくれませんよってことを、いま選手に言っているんですよ。
Q7:優勝する為には外国人の活躍が必要になってきますね。ガンバにも外国人選手が2名いるようですが、外国人選手を選ぶポイントというのは?
難しいですねぇ、これは。正直言って私も分かりません。チームには強化部長というのがおりまして、この強化部長が監督と「チーム作りをどうするか。どういう特徴を備えた選手を入れれば良いか」ということを相談しながら決めていきます。そして、片方ではいろんな情報を集めてきて、良いか悪いか、合うか合わないかということをいろいろやっておりますが、実際当たりは宝くじよりも確率悪いですね(笑)。
ガンバにおりましたアント・ドロブニャク選手いうのは、ユーゴ代表でもありましたし、フランスの一部リーグの優勝した時の中心になって活躍したフォワードなんです。サッカーを楽しむためによくヨーロッパに行かれる方にお会いしてお話することがあるんですが、その方に「ガンバにドロブニャクがいるそうですね。凄い選手を採ったんですね。」と言ってもらうんです。ところがこの選手(もう、帰ったから言うわけじゃないですけど)個人的にはそれだけの技術があるんですが、ガンバではほとんど点獲ってません。合わないんですなぁ、ガンバのこの組織のプレーと。だからね、ドロブニャクは前任の人が凄いトレードマネーを出して採ったんですが、当たらない・・。で、その前の人もやはり当たってません。一番当たったのがエムボマという選手、この人だけじゃないかな。だから、これは私も正解を聞きたい!「どうしたら良いんだ?!」(笑)
Q8:ジュニアやユースから育ててきた選手で1部リーグに登ってこれる選手ってどれくらいいるのですか?
Jリーグが1992年の4月からのスタートでまだそう歴史がありませんから、そういう統計は取られていないですね。で、ユースができたところも早いところで94年とか 95年くらいです。だから例えば選手も小学校のジュニアから入って、ジュニア→ジュニアユース→ユースという経過をまだたどってませんね。だけども、ユースだけ見たらある程度結果は出ます。今、ガンバでのユースが約35名ほどいますけど、多分その中からプロ契約に進めるのは3・4人です。でも、そのユースに来る前にふるい落としがされていますが、この数は私にはチョット分からないです。しかし、非常に難関だと思いますよ。かなり生存競争は激しい。そういう意味では野球も一緒でしょうね。その中で、天王寺高校時代からユースにいて、大阪市大に在籍しながらプロ契約した橋本君みたいな文武両道でいまだに頑張りつづけてるというのは珍しいんじゃないでしょうか。
※【青少年へのサッカーの普及、あるいは、将来トップチームで活躍できるプロ選手の育成を目指して、ガンバ大阪の下部組織が発足したのは1992年の4月。ジュニア、ジュニアユース、ユースと、各年代別にチームを編成。経験豊富な指導者を配置した上で、トップチームまでの一貫指導体制の確立してきた。その結果誕生したのが、現在のトップチームで活躍する、宮本恒靖、稲本潤一、新井場徹、大黒将志、二川孝広ら。】