小林一郎
(78期)
開園時間 | 年中無休・終日 |
---|---|
緑の相談所・ 温室・山荘 | 10:00〜16:00 (※ただし一般公開は火・木・金) |
駐車場 | 8:00〜19:00 (入庫は17:00まで) |
休館日 | 毎週水曜日 年末年始(12月29日〜1月3日) |
交通のご案内 | 阪神バス(阪神電車西宮駅前発)および 阪急バス(阪急電車夙川駅前発)のいずれも 柏堂町(北山緑化植物園前)下車 |
久野友博氏によってこの植物園には10数本の笹部桜が植えられています。園内の特に目立つ場所にでもなく、名札も付けられていません。目新しい名札が付けられていると、心無い愛好者が手折って行ったり、根っこごと持ち去られたりしたからです。また久野氏没後に残されていた苗木の多くが西宮市に引き取られ、この植物園を始め北山ダム周辺など夙川上流に植えられましたが、いずれも同じ理由で名札は付けられていません。ですから笹部桜を見ようとすれば開花時に特徴である大型の旗弁を目安に探すか係員に尋ねるかしなければなりません。ただ園内の植物生産研究センターという建物の傍らに1本、幹径25cmぐらいの笹部桜の成木があります。この木はもともと久野邸にあったもので、笹部邸の親木と同株の3本の内の1本です。笹部邸の親木(現岡本南公園のもの)が環境変化が原因で枯れ死してしまった今となっては貴重な1本となりました。西宮市ではここの研究センターで最新のバイオテクニックなども使って様々な取り組みをされていますが、本来自家受粉をしないという方法で種の存続を果たしてきた桜という植物種に、バイオ技術による純粋種保存増殖を試みるのは、人によってはその是非を問うところでも有ります。(この項後述)
西宮市と笹部新太郎氏との繋がりは古く昭和25年まで遡ります。氏が戦前から桜の名所として知られる越水浄水場周辺の桜を見るために水道局を訪ね、後に助役になられた南野三郎氏と色々会談されたのが最初でした。3年後には西宮市の正式の依頼を受けて夙川、甲山、満池谷の桜の管理、育成、植樹に関わることになりました。両者の友好関係はずっと続き、昭和42年には神戸市民にもかかわらず西宮市民文化賞が笹部氏に贈られています。氏が最晩年になって後事を託すために枕頭に呼ばれたのも南野氏ともう一人信頼の厚かった八木米次氏(当時市会議員、後に西宮市長)の二人でした。
「桜関係の資料は一切くされ縁で西宮に渡す」との遺言で笹部氏没後多くの美術工芸品を含む資料は西宮市に寄贈され、3年後創業320年を記念して作られた辰馬酒造(江戸時代より西宮の経済・文化活動に多大の貢献をしてきた)の白鹿記念酒造博物館に寄託されました。行き届いた管理のもと、毎春の特別展観やこのシリーズの一つの柱としても御協力戴くなど、四散したり死蔵のまま行方知れずになるケースの多い個人コレクションがスムーズに生かされているのは、歴史的に文化の成熟度が高い阪神間の土地柄でしょうか、そういえばこの地域には個人の美術館や博物館がたくさんあるのに気がつきます。