笹部桜考(52)


    笹部コレクション(19)

    桜花旅硯付竹筆筒 〜中井竹山遺愛品〜
    【おうかたびすずりつきたけひっとう】
    (江戸時代後期)

    法量:硯石 縦11.9×横5.8
       外枠 縦12.7×横6.5
       筆筒 径2.1×長23.7

    杉元仁美
    酒ミュージアム(白鹿記念酒造博物館)学芸員


      <櫻に因む蒐集品控>より
      昭和14年12月4日、京都細川開益堂書店にて
      兼ねて阪急百貨店古書即売展に出品されてゐて…(中略)…上田秋成遺愛方は売れたとの事に展覧のときは、硯の蓋の裏に金文字である千蔭の字も悪しく唯桜花の墨壷のみであまりに高価なので買入れなかったのを…(中略)…値切る。何でも京都の美術倶楽部に出たものだと…(後略)。
      竹の筆筒は可なりひわれがある。
      硯の外箱は桜材で蓋の裏の金蒔絵の和歌は

                 千蔭
        よき人の詞の華もにほはなむ
        名におふ山の嶺のさくら木

      中井竹山【なかい・ちくざん】
        1730-1804(享保15-文化元) 江戸時代中・後期の儒学者。中井甃庵の長男、名は積善。大坂の人。 「芳山記行」「遊芳山記」を著す。

      加藤千蔭【かとう・ちかげ】
        1735-1808(享保20-文化5) 江戸時代中・後期の歌人。国学者。江戸の人。 幼少より賀茂真淵に入門。和歌・国学に専念し、多くの門人を指導。狂歌や文 人画・書道も一流であった。


    協力:西宮市笹部桜コレクション(白鹿記念酒造博物館寄託)
    Last Update : Dec.23,2000