【連載】なにわことば三昧(38)

    たべたべ

    中井正明
    (64期・なにわことばのつどい代表世話人)


      日々の暮らしの中で使われている畳語
      (同一の単語を重ねて一語とした語。くろぐろ、ひらひら、の類)
      を調べだすとキリが無いよネ。
      共通語と方言の畳語を全部調べた国語学者は御居なはるかな?
      そこで大阪辯に限って数えたら、アツアツからワチャワチャ迄で
      156語程が大阪ことば辞典に載ってたヨ。
      中には一つの語が発声の抑揚(イントネ−ション)によって、
      二通りも三通りもの意味を持つのが仰山おまス。
      カンカン、キチキチ、ゴジャゴジャ、チョボチョボ、
      ポンポン、メェメェ、タベタベ、等。

      さぁここでは“たべたべ”を書いてみまひょ。
      食べ食べの四文字の抑揚が変わると、まぁ三通り程通用しまス。

      1. 起き起き(起きぬけ)取れ取れ(取れたて)と同じ表現で、
        食べ終った所の意味。
         用例:今(インマ)ご飯タベタベやがな。

      2. しっかり食べよと促す時。

      3. 泣き泣き・歩き歩きの表現と同じで食べ乍らの意味。
         用例:食べ食べ喋ったら行儀悪いでぇ。

      さてこの用例も時代が変わった今は一家団欒の為には
      話し合い乍ら食事を摂りなさいの習慣に移って来て、
      明治生れの両親に育てられた戦前派・戦中派は
      戸惑いを隠せないのが実感だす。

      それにつけても公共の場所(駅構内・交通機関や道路上)で
      立食い・立飲みをする不逞の輩に
      誰も文句をイワンのバカ。
      本真、如何ともし難しヤネェ。
      コンナン何方の躾だすゥ?
      もうジキ、恥もはにかみも忘れた社会になってまうのかいなぁ。


    Last Update: Dec.23,2002