【連載】なにわことば三昧(39)

    いちげん

    中井正明
    (64期・なにわことばのつどい代表世話人)


      一見もしくは一現と書くこの語を繙くと、

      【一見】(1)初対面。もと、遊里で、その遊女に初めてあうこと。
            初会(“馴染み”の対語)。
          (2)一見客の略
      …とある。
      また『大阪ことば事典』によると
      【一見・一現】花街用語 …(中略)… は当て字である。

      『浪花方言』(文政)に
      「いちげん、一見なり。遊里の言葉、町にてもいふ」
      と見える。(以下省略)

      以上の記載があり元来は花柳界・色街の専門用語であったが
      現在は広く一般の商売に使用され、特に料理飲食の業界で
      繁用されてる言葉でヤス。

      一と昔前の料飲業界ではそれなりにプライドがオマシテ、
      「一見さんお断り」の札を掲げた店も見受けたケド、
      バブル崩壊後はもうそんなご立派な処は見当たりまへんなぁ。
      ついこの間、「会員制」のお店覗いたら、
      何と貼ったアルだけだしたワ。

      昨今は宅建業者のキャツチフレ−ズ(宣伝文)で
      この文字を見掛けた位だして、
      これこそ、捨てる神あれば拾う神ありの諺を
      地で行く様な話やおまへんか。


    Last Update: Jan.23,2003