【連載】なにわことば三昧(32)

    もひとつや

    中井正明
    (64期・なにわことばのつどい代表世話人)


      【もひとつ】大坂辯の字引きには
      「今一歩、もう少しというところ」
      こんだけの解説しか書いてない。
      タッタの13文字で理解せェ(しろ)等という事は、
      生まれも育ちも大坂だけの者(モン)にカテ
      至難の業(わざ)でして、
      本眞(ホンマ)に説明の仕様に難儀しまス。

      偖(さて)ト。数年前に一地方自治体が
      有名人10名程の大阪辯随想を
      七曜表にしてPRした時がおました。
      東京都へ広報出して話題になったのも
      ご記憶だっしゃろ。

      その中の一人が“もひとつや”を。
      文章説明は
        (1)本当にもうちょっとや、惜しいなあ…
        (2)全然ダメ…
        (3)その中間もある…
        [中略](※この辺は話芸である)
        そのニュアンスは「解る人」にはそれで「解る」のである。
        [後略]
      此の様に決めてたがな。

      あの話アンジョオに諒解のお方、居てなさったかな。
      なにわ生まれの僕(やつがれ)には
      意味も字ィも判(ワッカ)らナンダワ。
      大坂辯の“もひとつ”は「どの辺迄」と解釈したらエェのか知りとうて!
      僕(やつがれ)の思案では、欠点=落第点の場合しか使(ツコ)テない。
      何方(どなた)か上手に教(オ)セとくなはれ。
      こんな人の話「もひとつ」だんなあ。
      然り(しか)り而(しこう)して?


    Last Update: Aug 23,2002