【連載】なにわことば三昧(31)

    のりやのかんばん

    中井正明
    (64期・なにわことばのつどい代表世話人)


      昭和の御代も華やかなりし時、15年頃の話。

      洗濯糊を四斗樽に詰めて、量り売りする御商売がゴザッタヨ。
      大方はお婆様が居て小遣い稼ぎ?と思えたが、
      お店の看板は大層立派な代物で、
      欅(けやき)か榧(かや)の厚板に彫った仮名。

      仰(そもそも)デッカイ「の」文字の隙間に、
      細(コンマ)い「り」文字を入れた物(モン)だした。
      大坂商人はこの図柄…「り」が細い(=利が少ない)を
      洒落て、儲けの少ない場合に多用した。

      最近どないだす?
      イエ皆目だすワ、まるで糊屋の看板だァ
      本眞(ホンマ)だっかいな!

      テナ会話になっていたようでして、
      顧(かえり)みると、本(ほん)に太閤さんの辞世

      「つゆとおち つゆときへにし わかみかな
       なにわの事も ゆめの又ゆめ」

      そんな情景が泛(うか)んで参りまんなあ。


    Last Update: Aug 23,2002