われら六稜人【第4回】楕円のボールに託した夢

決勝戦
ラグビー馬鹿の一途な願い

    あれから10年たった。今の北野の状況は一種のチャンスかも知れん。部員20名という規模は、ちょうど監督の意志が伝わるのに適正な人数だし、部員ひとり ひとりの資質もなかなかスジがいいんだよ。監督も105期で若く、任しておくと自分でやるしね。やりかたによっては全国大会に行けると思う。俺のころは「自分たちで考えたラグビー」をしてたと思う。今は…テレビとかラグビーマガジンなんかが普及しちゃってるんで、余りにも経験なしに技術を知り すぎている。俺の考えでは、高校生くらいまではテクニックは不要だと思う。実際、今の選手を見ていると、技術的には大変上手で、練習を見ていても(大袈裟 に聞こえるかも知れないけど)非常にグローバルなんだよな。だけど、いざ実戦で試合になり、相手が入ると、その基本通りには動けない。

    それともう1つ。近頃の選手は勉強熱心でね。ある作戦で失敗しても、次にまた同じ失敗をするんだな。成功するまで復習ばかりしたいんだね。そのうちに試合 に負けてしまう。年輩のOBがこぼしてたよ。「あいつらホンマに北野のラガーか。1つ覚えたらそれしか知らんのか…」って。

    コレがだめならコッチを…そういう機転というか、その辺りのことが選手に体感できるようになってくれれば、北野のラグビー部なんて一番全国大会に出られる クラブのひとつだと思うンだけどね。サッカー全日本の岡田監督が天王寺高校の出身だそうだし、宇宙遊泳の土井さんは三国丘だったかな? そろそろ次は北野 の出番なんだよな。

    え? 俺にもう一度監督をやれって?

    いま、豊中ラグビースクールで4歳児から200人くらいの子供たちを預かってる。俺としては遠大な計画があって…英才教育で小さいうちから一級のラガーを 育てて日本のラグビー界の底上げを図ろうと企んでるんだ。ある私立高校なんかだと…豊中ラグビースクールで推薦状を書けば、それだけで合格になるからね。

    これからの時代は府立高校でも…そうした一芸に秀でた個性の推薦入学の枠なんかを考えないとね…。今も校長に挨拶がてら「北野を男子校にできないか?」と か、いっそのこと「北野を私立にしないか?」とか、冗談半分に話してたところさ。ラグビー馬鹿の…きわめて真剣な願い、なんだけどね。

Update : Dec.23,1997

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