われら六稜人【第25回】プロスポーツの舞台裏で

前半戦
ショービジネスとしての課題…

    ガンバに関しては間接的に見てるだけで…大変申し訳ないけどもこの業界にはあまり関心もなかったですしね。それが突然、指名をされて戸惑いました。周りの人も「何であんたがガンバへ?」言うてね。
    ガンバの仕事になってからは、今までと生活パターンが違う部分は確かにありますよね。例えば、試合のある日に合わせて出勤を決めていくとか。私自身サッ カーに素人なものですから、勉強のために今のところ全試合を観ています。そういうところはありますが、僕の仕事そのものは大して違わないなぁと思ってま す。
    ガンバの社長として一番大きな仕事は、やはり、簡単に言うと経営を盤石にするということですね。経営を盤石にしようと思ったら、お客さんに来ていただかな いとゼニが入りませんから成り立ちませんよね。だから、ファンをいやでもおうでも増やさなければいけない。じゃあ、ファンを増やすにはどうしたらいいか。 それには「優勝に絡むチームを作っていく」…これしかないんじゃないでしょうか。 サッカー業界は93年、94年と一種の「バブル」でした。試合の切符を手にいれることすら難しかったんです、あの頃は。
    でも…プロというのは、やはりソロバン勘定の上に成り立つものですから、いつまでも親会社の支援金におんぶにだっこしてては駄目なんですよね。あの時、単 に浮かれるんや無しにこういうことをしっかり視野に入れてやっとかなきゃいけなかったんですけども…バブルで浮かれてしまったんですかねぇ。93年、94 年を過ぎて95年から今は観客が激減しだして、かつてのピーク時と比べて平均観客動員は2分の1です。
    それから当時、選手の年俸を急激に上げましたから、入場料から入るお金だけでそれを賄いきれませんで、スポンサーからの協賛金を募ったわけです。もちろん今でもそれをやっているわけです。

    今、全部で16クラブありますけれども、どこも経営は苦しいと思いますよ。ガンバ大阪も同様です。選手やスタッフの人件費だとか固定費がかかるんですよ ね。会場も普通は固定費なんですが、このホームグランドは違うんです。観客動員数で費用が決まるのではなく、1回いくらかという計算になってるんです。そ うすると「固定費の固まり」で変動費っていうのがほとんど無くなります。片方でこの固定費をどうやって削減していけばいいか、もう一方で観客動員による収 入をいかに増やしていくか…となるんです。

    ところが、構造的に考えても合いませんよね。この万博記念競技場には観客が2万人入るんです。93年、94年当時はそれでは全然足りなくって入りきりませ んでした。でも今年前半の1回あたりの観客動員数は平均で8,500人。J1の平均が11,000人です。そうするとチケットの平均単価を2,000円と しましょうか。ガンバの場合、約8,500人を1回あたりに動員できたとしても、それで1試合あたりの平均収入は1,700万円でしょ。多く見積もって も…お客さんから頂戴する入場料収入は2,000万円です。プロ野球なんかだと年間試合数が130あって、半分の65試合が主催試合となります。ところが サッカーの全試合数は16試合+αなんです。サッカーは選手の体力の問題もあって、毎日連続してできないんですよね。だから、一回あたりに2,000万円 入ったとしても16試合で3億2,000万でしょ。これでは選手の人件費も埋められない(苦笑)。

    こういう赤字構造を徐々に改善していって、選手に対して経営的な心配を余りかけないでプレーに専念できるようにするのが私の仕事かなぁというふうに考えています。やはり事業ですから、赤字が続くと長続きしません。

Update : Oct.23,1999

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