【Zoom特別講演】10月『米大統領選:初の女性大統領は生まれるか』

Ⅰ.日時 2024年10月26日(水)14時00分~15時30分
Ⅱ.場所 Zoomによるインターネット開催
Ⅲ.出席者数 30名
Ⅳ.講師

大野 和基さん@85期(国際ジャーナリスト)

1955年兵庫県西宮市生まれ。北野高校85期卒
東京外語大英米学科卒業後、1979~97年在米。コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学んだ後、ジャーナリストの道に進む。
以来、国際情勢の裏側や医療問題に関するリポートを発表するとともに、世界的な要人・渦中の人物への単独インタビューを次々とものにしてきた。

著書
『代理出産 生殖ビジネスと命の尊厳』 (集英社新書)
『マイケル・ジャクソン死の真相』(双葉社)
『私の半分はどこから来たのか』(朝日新聞出版社)
『英語の品格』(集英社インターナショナル)共著
編著
『民主主義の危機』(朝日新聞出版社)『アメリカの罠 トランプ2.0の衝撃』(文春新書)
『コロナ後の世界』(文春新書)『コロナ後の世界』(文春新書)など多数

Ⅴ.演題 『米大統領選:初の女性大統領は生まれるか』
Ⅵ.事前宣伝 大統領選にはオクトーバーサプライズと言って何が起きるか分からないが、バイデンが撤退を決断した経緯と本質的にはハリスが民主党大統領候補になったのはクーデターと何ら変わらない。そのハリスの人物像は9月の初旬の時点でもまだはっきりしていない。が、10月中旬には今よりも明確になっているはず。その人物像と選挙戦の経過を見ながら、カマラ・ハリスが初の女性、黒人大統領に選出される可能性を探る。現時点(9月8日)ではtoss-up(互角、どちらともいえない情勢)であるが、10月末の時点では今よりも情勢がはっきりしていると思う。
Ⅶ.講演概要 本日は、ハリスに立ちはだかる壁についてお話ししたいが、その前にアメリカの選挙制度について触れておきたい。国民全体の一般投票ではなく、選挙人制度を採用しており、州ごとに勝者総どりの仕組みとなっている。
これは、ブルー州と言われる東部や西部の人口の多い州が優位となることを避ける仕組みである。

現時点での情勢を見ると、激戦州と言われる7州すべてトランプが優勢となっている。
10/21のエコノミストでは、538議席中トランプが376議席と過半数を占めている。
今日のワシントンポストでは、オーナーのジェフ・ベゾス(Amazon会長)がハリスを支持しないと表明した。
連邦政府との契約を優先し、トランプ勝利に備えたものとみられる。

周囲を見回しても隠れトランプが結構いる。
男性はトランプ支持、女性はハリス支持が多く、夫婦間でも分裂がある。
妻に秘してトランプに投票に行く男性もいる。
黒人男性も、良妻賢母を旨とする立場から、トランプを支持する。

10/23のNYタイムズの記事でも、世論調査が50:50であってもトランプ勝利との論説があった。ハリスへの性差別が世論調査に表れていない。
女性大統領を受け入れない隠れトランプが表に出ていない。
トランプの人柄は受け入れられないが、政策は認める人もいる。

トランプの時代は平和だったが、バイデンになって戦争が起きている。
トランプにもハリスにも入れない人は緑の党のジルスタインなど第三者、に入れることになるが、これはハリスの票を減らすことになる。

メッキがはがれハリスの勢いは失速している。
ギャラップやNBCニュースの調査でも共和党支持が民主党支持を1~2%上回り逆転している。
トランプにとって追い風。

男性は経済やインフレに、女性は中絶への関心が高いと言われるが、トランプになったから中絶できなくなるということではない。
4年前に比べて生活が豊かになったかと言えば、トランプの時代にインフレはなかった。
自分の場合、取材費はここ4年で、2~3倍になっている。

バイデンがハリスを副大統領に選んだのは多様性。
予備選があれば、99.9%ハリスは脱落していた。
2019年、ハリスは予備選前に脱落している。
経済政策についての質問にハリスは答えられない。
7/21にバイデンは撤退したが、これは追放されたともクーデターとも言われている。
オバマはミニ予備選をやれと言っていた。
民主党の中はバラバラ、報道はされないが、毎日のように内輪もめがある。
マルクス・ガブリエルにインタビューしたときに、cheating 裏口入学だと言っていた。

トランプは表向き汚い言葉を吐くが、内輪では協調性あり優しいと言われている。
ハリスはその正反対で、側近47人のうち43人が辞めたのはパワハラが原因と言われている。
検察官時代と同じ口調で、人前で怒鳴り散らす。
ハリスに立ちはだかる壁としては、アメリカ男性の本音にあるミソジニー(女性嫌悪、女性蔑視)が黒人にも白人にもある。

ハリスには自信がない、具体的対策がない。
記憶力は良いが、台本がないと話せない、女優と同じ。
ABCの対決の際には、司会者に100万ドルのギャラがあったので、女性司会者もファクトチェックまではしなかった。例えば、「4年前と比べて、生活は豊かになったか」という質問に対して、回答は「ノー」と決まっているのに、質問に答えず、「自分は中流家庭に育った」としか言わず、トランプの話に持っていく。

先日もタウンホールでのやり取りがあったが、予め決められた質問以外には答えられない。
最近、マスコミにも出てくるようになったが、これが逆効果になっている。
全米調査でハリスが当初2%上回っていたが、今は50:50になった。

副大統領候補のティムウオルシュと一緒でないと出ないと発言したり、自ら質問に答えられないという自信の欠如を示している。
はぐらかしたり、答えをころころ変えることで、ハリス離れを起こしている。
変革が求められているのに、バイデンから自分への変化を説明していない。

トランプは何をするか具体的に言っている、有言実行の人。
ハリスの政策は極めて左だが、選挙のためだけに中立に近づけている。

EU諸国は、交渉がやりやすくなると、トランプを望んでいる。
戦争もガザもイスラエルもウクライナも、トランプであれば早く解決する。
トランプは「マッドマンセオリー」を取っており、何を考えているか、何をするか、わからなくしている。
バイデンは弱気大統領で、外交政策は失敗している。

ハリスは大統領になると操り人形になる。
自分の考えもないし、予備選をやれば負けていた。
これから、オクトーバーサプライズやノーベンバーサプライズで、ロシア、北朝鮮、中国が選挙に干渉してくるが、トランプに不利には働かないのではないか。

ハリスの失敗はどういう人か理解されていないこと。
トランプはどういう人か皆知っている、78歳としても体力は凄い。

日本へのトランプの影響については、極端な自国中心主義、孤立主義となるが、プーチンのような独裁主義は無理、ただ、日本の安保体制は崩れる可能性がある。
EUはトランプと交渉しやすい、人格は政策に影響しない。
今の段階ではトランプが大統領になると思う。
日本のメディアはハリス寄り。

 

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Ⅷ.質疑応答

白石義明さん 85期
Q: バイデンはマイノリティへの配慮でハリスを選んだが、アメリカでも今や大学へ行くとアジア系がメイン、環境が変わっているのではないか。

A: 逆差別となっている。
白人が犠牲者、黒人だから下駄を履かせる、ハーバードはアジア系が多くなり過ぎたので、下駄を取るなど、アジア系に厳しくしたが、今も白人の方が差別されていると感じている。
白人の人口比率はいずれ60%から50%を切ると言われている。
トランプの移民政策は合法、有能な人を入れるために、国境を開けておくと言っている。
アメリカはWASPの国でなくなるという白人の危機感が、カリフォルニアからテキサスへ移動を生んでいる。

 

牧武志さん73期
Q: ヒスパニックは民主党支持だったが、ヒスパニックの男性はトランプ支持に回った、ハリスは頼りない、覚えたことしか話せない、はっきりした政策を言わない、これだけの時間があったのに自分を示せない、「はぐらかしハリス」と言われている。

A: テレビ討論ではハリスの方が優位と言われた、まるで女優。
あとで文字起こしを読むとはぐらかし、その後ハリスはチャンスを逃した。

 

石野秀世さん80期
Q: 民主党は人材不足なのか、なぜこの人なのか。

A: バイデンは副大統領を勤めたし冗談半分で予備選に出たつもりだった。
本人は大統領に残るとは思っていなかったのではないか。
確かに国のリーダーを取る人がいない。
戦争への対応とか・・・、やることが明確な企業の社長とは違う。

 

浦勇和也88期
Q: トランプを見ていると小泉元首相を、ハリスを見ていると小泉進次郎を想起する。
オバマはハーバード、ハリスは地元のロースクール、このあたりで差がついてくるように思う。

A:ハリスは黒人の多くが行くハワード大学の出身、先日の討論会の女性司会者もハワード大学の出身で事前に情報が提供されていた。
オバマのスピーチは上手いので、そのあとにハリスが登壇し話しても迫力がない。

 

谷藤慶一85期
Q:トランプが撃たれて、トランプムードになったが、その後風向きが変わったのではないか。

A:ハリスが民主党の候補になったタイミングが良かった。撃たれた直後にハリスが登場し、その時点では、新鮮味が勝った。
ただ、10月に入りメッキがはがれたのではないか、同じことしかハリスは言わない。
トランプの暴言は目立つが、戦略的ともいえる

 

 

記録:山本直人(85期)

 

Ⅸ.資料 なし