【257回】5月「幸せな人生を送るための心理学~選択理論」

Ⅰ.日時 2024年5月15日(水)11時30分~13時00分
Ⅱ.場所 バグースプレイス パーティルーム
Ⅲ.出席者数 54名(会場 32名、zoom 22名)
Ⅳ.講師

伊豆原 孝さん@94期

一般社団法人日本損害保険協会常務理事

一般財団法人日本プロスピーカー協会認定シニアプロスピーカー

 

京都大学文学部卒業後、1986年に現在の損害保険ジャパン株式会社に入社。

営業部門、資産運用部門、経営企画部門、リスク管理部門を経て2016年にSOMPOホールディンス株式会社リスク管理部長。2019年からは同社グループCRO(最高リスク責任者)執行役を務める。2021年に退任、日本損害保険協会に転じ、現在に至る。

神奈川県藤沢市在住。高校時代は合気道部に所属。

伊豆原孝 | 人が自分の価値に気づいたとき、人生は変わる。 (takashi-izuhara.com)

Ⅴ.演題 『幸せな人生を送るための心理学~選択理論』
Ⅵ.事前宣伝 人間は生まれてから死ぬまで、常に人と関わりながら生きていきます。関わる人の中には、どんなことでも気軽に相談できるという人もいれば、この人はどうも苦手だなと感じたり、できることなら一緒にいたくないと思う人もいます。そうした人間関係の悩みは、仕事だけでなく、どちらかというと親子関係や夫婦関係などのプライベートで起こることも多いのではないでしょうか。今回の講演では、自分が苦手と思う人との人間関係を劇的に改善し、気持ちよく自分らしい人生を送っていくための心理学である「選択理論心理学」について、講演者の体験も踏まえ、また、著書からの引用も交えながらお伝えさせていただければと思います。
Ⅶ.講演概要 *野田美佳さん@94期からの伊豆原さん紹介

伊豆原さんとは高校1年で同クラスかつ合気道部で一緒。京都大学文学部を卒業され現在の損保ジャパンに入社された。高校同期の出世頭。部長になられて100人の部下を持たれたがそれまでのマネジメントが通じず挫折を経験されたが、それを救ったのが選択理論という心理学。マネジメントに選択理論を取り入れることで問題が克服された。選択理論を理解し実践するのは難しいが、著書「私から、はじまる。(*)」(講演会場参加者に無償配布)では選択理論の実践例が分かり易く紹介され、読んでやる気が出る。マネジメントのみならず普段の生活にも役立つので、ぜひ読んでいただきたい。

(*)私から、はじまる。未来をひらく100の言葉 | 伊豆原孝 |本 | 通販 | Amazon

 

1.選択理論心理学

1965年に米国の精神科医であるW.グラッサー博士が提唱した、薬を使わずに精神病を治すリアリティ・セラピーを心理学として体系的にまとめたもの。人の行動のメカニズムを紐解いた心理学で、これを理解することにより良好な人間関係が築きやすくなる。

 

2.人は何によって行動を起こすのか

1)外的コントロール vs 内的コントロール

①外的コントロール(刺激反応理論):選択理論の対極をなすもの。

人は外側からの刺激に反応して行動するという考え方=「人は外から変えられる」

(例)電話が鳴る(刺激)→電話にでる(刺激によるコントロール)

 

②内的コントロール=選択理論

人は外からの情報を得て自分の意思・選択で行動するという考え方=「人は外から変えられない」(例)電話が鳴る(刺激)→電話に出たくない(意思・選択)→電話に出ない(意思・選択によるコントロール)

 

2)外的コントロールの信条

① 私は、外側から来る簡単なシグナルに反応して諸々のことを行う。

 

② 私は、他の人がしたくないことでも自分がさせたいと思うことをその人にさせることができる。そして他の人も、私が考え、行為し、感じることをコントロールできる。

 

③ 私の言う通りにしない人を馬鹿にし、脅し、罰を与える、あるいは、言うことを聞く人に褒美を与えることは、正しいことであり、私の道義的な責任である

 

→人は上記3つの信条(思い込み)により人をコントロールできる、ないしは変えられると思っているが、選択理論(内的コントロール)に基づけば人をコントロールすることはできず、パワハラの原因にもなりうる。

 

3.5つの基本的欲求と上質世界

1)5つの基本的欲求

人は5つの欲求を遺伝子に組み込まれて生まれてくると言われており、それにより行動の動機付けがされる。

①生存の欲求

人が生きていく上で必要なすべての欲求(安全、飲食、睡眠、生殖等)

②愛・所属の欲求

愛し愛されたい、組織に所属していたいという欲求

③力の欲求

自己実現、目的の達成、人への役立ち等、自分の価値を高め認められたいという欲求

④自由の欲求

誰にも何にも拘束されず、自分の考えや感情のままに自由に行動、選択、決断したいという欲求

⑤楽しみの欲求

義務感にとらわれることなく、自ら主体的に喜んで何かを行いたいという欲求

 

→欲求プロフィール・チェックにより自身の5つの欲求のレベルを認識することができる。それぞれの欲求度の高低は人により異なる。欲求の高さは容器の容量のようなもので、欲求が高いほどそれを満たすためには大きなエネルギーが必要となる。大切な人、所属する組織に属する人のそれぞれの欲求度を知ることで、自分との違いを認識し人間関係をスムーズに進めることができる。

 

2)上質世界(Quality World)

上質世界とは、一緒にいたいと思う人、最も所有・経験したいと思うもの、自分の行動の多くを支配している考えや信条を反映したイメージ写真のアルバムのようなもの。人は上質世界にあるイメージ写真を求めて行動を起こす。上質世界は各人に起こった出来事や経験により一人一人異なり「貼り替わる」。

 

 

4.7つの致命的習慣

力の原理→外的コントロール。

① 批判する

② 責める

③文句を言う

④ガミガミ言う

⑤脅す

⑥罰を与える

⑦目先の褒美で釣る

 

→相手の上質世界を否定することにもなり、自分では愛情の表現と思っているかもしれないが相手に伝わらない(『愛のムチの多くは愛の無知』)。自分の正しさを手放す(冷蔵庫にしまう)ことが必要。

 

 

5.思いやりを示す7つの習慣

愛の原理→内的コントロール=選択理論

①傾聴する

②支援する

③励ます

④尊敬する

⑤信頼する

⑥受容する

⑦意見の違いを交渉する

 

→相手の上質世界を大切にすることにより、相手との距離が縮まりこちらの話を相手が聞いてくれるようになる。

 

 

6.コントロールできるものとできないもの

自分でコントロールできるものとできないものがある。

1)直接的にコントロールできるもの:行為、思考

 

2)間接的にコントロールできるもの:感情、生理反応

 

3)コントロールできないもの:過去、他人

 

→自分がコントロールできないものにフォーカスせず、コントロールできるものにフォーカスする。すべてが自分の思い通りになることはあり得ず、自分が置かれた環境の中で自分をコントロールし自分の自由を保つことが大事=『真の自由は自分の心の内面にある』。

 

 

7. 選択理論の実践・応用

1)医療(リアリティ・セラピー)

現実療法:薬を使わずカウンセリングにより治療するもの。

 

2)学校(クオリティ・スクール)

日本では認定されていないが米国で実践されている。自分で色々なことを選び、学ぶ。子供が学校から帰りたがらないという悩みがある。

 

3)マネジメント(リード・マネジメント)

強制的でない心理的安全性にフォーカスしたマネジメント。どうすれば本来人が持っている能力を引き出せるかを選択理論心理学に基づき実践。

 

 

8.まとめ

1)人の動機付けは内側から。人は誰しも内側にある基本的欲求を満たそうとして行動する。

 

2)「自分は正しい、相手は間違っている」と考えて、自分の願望に固執するのではなく、それぞれの上質世界は違う、と考えて優先する。

 

3)相手を変えることはできない。自分にできることは、自らがコントロールできること(行為と思考)をより良い人間関係を築く方向に向け、効果的な選択をすることである。

 

 

 

 

9.最後に

選択理論の「幸せ」の定義は「5つの基本的欲求がバランス良く満たされた状態」。

現在どの欲求が満たされていないのかを考え、その欲求を満たすために時間を使うことで幸せを手にいれることができる。私自身様々なチャレンジを行っている。選択理論に出会ってからプロスピーカーとしての講演、企業の研修講師を行っているが、現在、社会保険労務士資格にチャレンジしている。還暦を迎えてのチャレンジは遅いと思われるかもしれないが今がベスト・タイミングと考えている。自分が一番大切にしていることを何かを考え、選択、コントロールし自から率先して動き出すことが自分の幸せにつながり責任と考えている。その思いを込めて著書のタイトルを『私から、はじまる』とした。選択理論を世の中に広めることによりいきいきとした社会をつくることに少しでも貢献できればと思っている。

 

 

 

質疑応答

質問者 今村暢子さん 94期

Q:プロフィール・チェックをしても自分の真の欲求や本当の自分を知ることは非常に難しい。どのようにして自分を知ることができるか。

A:自分の本心を知ることは難しい。過去を客観的に振り返ると、どんな時にどんな感情が動いたかがより分かるようになるのではないか。例えば、毎日自分の思考や行為をノートに書きだすのも一手。自分の思考を言葉で目に見えるようにすることで、自分が何を考えているかを知るのに効果的ではないか。

 

質問者 山崎哲朗さん 84期

Q:教員の研修もやっていた。奥様が同じくプロスピーカー。ビジネスの世界の他に学校現場での講演会の経験は?

A:自分ではやっていないが講演会は学校でもやっている。野球で有名な花巻東高校では、全校で始業前に特別な手帳を使って自分自身のやりたいことを書き出す等をやっている。大谷選手も学んだ。また、岐阜市では教育に導入されつつある。市長が選択理論心理学を学ばれ行政にも取り入れようとしている。

 

質問者 広本治さん 88期

Q:Quality Worldとは自分自身がこうなりたいというイメージ写真をもつことか

A:イメージ写真自体は願望であり多くの願望が貼られているアルバムがQuality World。自分自身のみではなく自分が一番大切にしている人、現実に起こったこと、起こったらよいこと等、自分自身に限らず幅広い世界。

 

 

記録:葛野正彦(88期)

Ⅷ.資料 20240515東京六稜俱楽部レジュメ

欲求のプロフィール・チェックリスト