reporter:峯 和男(65期)
- 日本(東京)は世界地図をほぼ3分割する極東に位置するが、極東エリアには、東京以外にも上海・香港・シンガポールなど国際都市が存在し、エリアNo.1都市の座を狙い、都市の魅力付けを着々と行なっている。
近年の東京の代表的開発物件としては、「汐留シオサイト」「品川駅東口再開発」「丸の内地区」「六本木ヒルズ」などがある。 - 従来、東京より開発が遅れていると思われていたアジアの大都市において都市開発が急ピッチで進んでいる。
以下に、代表例としてヨーロッパを除くユーラシア大陸6都市の都市開発の現状を紹介する(報告者注:映像による紹介。以下多数の映像紹介あり)。- シンガポール:アジアの中心を目指す。
- 香港・マカオ:香港とマカオの間に橋を架け、既にラスベガスを超えた既存カジノを発展させ、新しいカジノ・複合ホテルを有する巨大な観光拠点を目指す。
- 上海:20階以上のビルの数は既に東京を超えた。東京を凌ぐ大都会を目指す。
- クアラルンプール:発展途上国としてのイメージ払拭を目指す。シンガポールの国家版。
- モスクワ:開発計画が目白押し。ヨーロッパの新しい開発拠点。
- ドバイ:中東のシンガポールを目指す。世界のクレーンの1/3はドバイに集まっていると言われている。全室スイート、180m2 の七ツ星ホテルがある。
- 世界の中の日本:
日本はGDPでは世界第2位の経済大国であり、その首都である東京はロンドン・ニューヨークと並ぶ世界的大都市であるが、その国際的経済地位は大きく低下しつつある。それを認識することが必要である。
例示すれば以下の通り:(1991年と2005年の対比、即ち14年間の変化)GDP世界ランキング 2位 → 2位 世界のGDPに占めるシェア 15.6% → 12.8% 国際会議件数 84件 → 49件 上場外国企業 125社 → 28社 国際競争力ランキング 1位 → 21位 又、交流人口と国際旅行収支は以下の通り: 訪日外国人旅行者数 673万人、世界30位(2004年) 日本人海外旅行者数 1,740万人、世界15位(2003年) 国際旅行収入 8,846百万ドル、世界16位 国際旅行支出 28,971百万ドル、世界4位、約200億ドルの赤字 (日本の国際的経済地位に比べ世界からの関心の低さが顕著なことを示している)
- 日本と東京の将来人口推計:日本・東京は急激な人口・生産年齢人口減少に直面する。
- アメリカの将来人口推計:アメリカの人口は、「移民」及び「高い出生率」により増加し続け平成42年には日本の約3.3倍になる見込み。
- 欧州主要国の将来人口推計:各国の人口はほぼ横ばい。生産年齢人口は減少傾向にあるがドイツを除き日本より減少のカーブはゆるい。
- 高齢者人口・比率の増加:今後少子高齢化社会は一層進展し日本は世界に類をみない高齢社会に突入する。
- 社会構造の変化:年齢別貧困率において16歳~25歳の貧困率は16.6%と年齢別で最大、1994年からの増加率も2.5%で最大となっている。 高齢社会を支える次世代の貧富の格差は適切な社会保障が担保されない限り社会不安を惹起する。
- 東京の産業構造の変化:東京の産業構造は第三次産業(サービス業)へのシフトが顕著。サービス業は需要が国内にほぼ限定される上、国内需要(人口)は急激な減少傾向にあるため長期的には需要が縮小することが懸念される。
- 都心にはもっと人が住める筈:
東京23区の1ヘクタール当たり人口密度は133人。一方ニューヨーク市に於けるマンハッタンのそれは255人である。これを使用容積率で見ると、マン ハッタンのミッドタウンは1421%であるのに対し、東京都心4区でも336%である。全体として東京都心部は高度利用が未熟と言える。即ち東京は、都心 の人口密度が低く、郊外部の人口密度が高くなっているが、ニューヨークはその逆である。 - 国際語・英語の使えない街に外国人は来ないし、住まない:
- 日本人の英語力(2004~2005年TOEFL国別平均点):
アジア29カ国中28位(1位シンガポール254点。日本191点)
なお、最下位は北朝鮮の190点=英語によるコミュニケーションが最もとりづらい国になっている。 - 標識の改善:
日本語が判らなくても迷わず目的地へ行けるような標識・案内の改良・増設が望まれる。
- 日本人の英語力(2004~2005年TOEFL国別平均点):
- 公共インフラの整備:
典型的かつ日本の最大の失敗は東京・大阪などの飛行場である。フランクフルトは飛行場の下に新幹線が走っている。 - 四季と美しい町並みをPR出来るように整備する:
町並みの整備:新築時の外観規制、電柱の地下埋設、広告看板の規制 - 世界の東京を目指す当社の代表的プロジェクト:
- 東京ミッドタウン:職・住・遊・憩が高度に一体化。2007年竣工予定。
- グラントウキョウノースタワー:首都東京に相応しい都市景観を生み出す。2007年竣工予定。
- 日本橋三井タワー:日本橋地区都市再生の象徴にして原点。2005年竣工。
- コレド日本橋:同上。2004年竣工。
- 新しい価値とライフスタイルを提案する商業施設:
LAZONA川崎、アーバンドックららぽーと豊洲、ららぽーと柏の葉
ららぽーと横浜 等。 高齢化社会では商業施設プラス住宅が目指すべき方向。 - 時間消費型都市を目指す:
演劇・音楽・食事を自由に楽しめる都市となっているか - 上質な日本発エンターテインメントの充実:
外国人は日本らしいエンターテインメントコンテンツを求めている - 日本文化の再認識~世界的に希少価値のある文化:
- 洗練された文化史の存在
- 世界がボーダーレス化すればするほど、独自文化を持つ国が注目・尊敬される
- 日本文化の特徴は「洗練された市民文化の存在である」。即ち貴族が支えている文化ではない。
- 世界標準の娯楽・日本発エンターテインメント:
能など所謂「伝統芸能」は奥が深いが難解であるため、日本文化の入門編として判りやすいものを判りやすく紹介する。例:相撲、祭りなど。 - 四季折々に催される行事の数々:
春・花見。夏・花火。秋・紅葉。冬・雪見。 - 歌舞伎・芸術・美術:
公演の日常化と外国語による解説。ワシントンDCやウィーンのような芸術都市の整備(候補地として上野・浅草を刷新する)など。 - 日常生活文化~日本を感じられる場所の整備:
伝えるものは「日常生活文化」。候補地は「古き良き日本の伝統」が残る日本橋~浅草・上野。 - 文化発信の方法:
現在の問題点:文化の継承、情報発信を行なうシステムがない。
対応:日本から情報発信を的確に行なうためのプロデュース能力を高める。
米国にはプロデュース能力があるが日本にはない。 - 文化発信方法の一例=文化の担い手を表彰するシステムの構築:
文化を表彰して情報発信するシステム(国家的イベント)を創設し東京を日本文化の登竜門都市とする。文化の担い手を日本人に限定する必要はない。積極的に外国人に文化の担い手になって貰うべきである。
例示すれば以下の通り:- 《日本食》日本で年に一回全世界から日本料理の板前を集めたコンテスト・冠大会を日本文化イベントとして行なう。
- 《大相撲》外国人の入門制限を撤廃し、世界に広く門戸を開放する。「しきたり」(=文化)をよく理解させた上で「各国代表」、「郷土力士」に活躍の場を与える。
- 《ミス着物ワールドコンテスト》日本文化を理解する女性を評価、表彰する文化イベントとして「ミス着物」「ミス浴衣」大会を主催する。単に容姿を競うのではなく、自ら着付けができるか、所作が正しく行なわれるかといった点の総合評価を行なう。
- 《漫画・アニメ》アニメーション、漫画の国家による表彰制度を設ける。漫画を例にとると各出版社毎に行なわれている表彰制度を国家による統一表彰制度とする。
- 《IT・技術ロボット》IT、技術ロボットは日本の基幹産業であると同時に文化である。日本の先端技術を体感できる場所=候補地はお台場・秋葉原。ヨーロッパでは人間の形をしたロボットを嫌がる。最大のニーズは「介護ロボット」。
- 《公共交通機関・ブロードバンド普及》ブロードバンドの普及率、料金の安さは世界トップレベル。
- 《ホスピタリティの心を再構築する》日本のサービスの良さ、居心地の良さは世界に通じるホスピタリティであり、文化である。日本のもてなし文化を発信する場所を都内に整備する。
日時: | 2007年3月21日(水)11時30分~14時 |
場所: | 銀座ライオン7丁目店6階 |
出席者: | 62名(内65会会員:江原、大隅、正林、山根、峯) |
講師: | 三井不動産(株)S&E総合研究所長 多田 宏行氏(78期) |
演題: | 「これからの東京の町づくり」 |
講師紹介: | 1971年東京大学法 学部(公法・行政法)卒業後三井不動産(株)入社。レッツ事業本部チームリーダー、総務部文書課長を経て92年S&E研究所に移り、99年より現 職。公職として、東京大学工学部都市工学科 非常勤講師、東京商工会議所「まちづくり専門委員会」副委員長、経団連「ライブ・エンターテイメント分科会」 副座長等を歴任。 著書:「まちづくりの知恵と作法」(日本経済新聞社)、「東京都心散歩・千代田区」(同)、「活気ある都市センターを創る」(中央公論新社)など多数。 講演:読売新聞「東京再生研究会セミナー」、東京大学「街づくり研究会セミナー」、北京市「ファッションシティセミナー」、早稲田大学エクステンションセンター「街づくりセミナー」等々。 |
講演内容: (要点のみ) |
世界ではBRICS諸国が高い成長を続けており、その動向に目を離せなくなる中、経済のグローバル化・ボーダーレス化は一層進展し、世界経済の同時進行が さらに加速されると予想される。日本経済は、今後もこれらの国と伍して継続的な成長を遂げていくことが必要となる。そのためには人々の活動の基盤となる日 本の都市の競争力を高め、魅力的なものにしていかなければならない。本講演では、世界の中で、東京はこの10年間どのように開発されるべきかについてその 方向性を法規制・社会政策とは別の観点から、特に「都市の魅力」につき考察したい。
【1】日本の現状について: 【2】問題意識: このままでは東京は失速する? 上記の事実から、東京は早急に人口問題・経済問題の解決に向けたアクションを起こさなければならない。 【3】解決の方向性: 東京を魅力付けする 以上ハード面の整備のまとめとして、必要と考えていることは迅速に実施する、グローバルスタンダードな体制が不可欠である。 ●ソフトの充実: 【4】まとめ: |