第49回  「mixiのこれまでと今後」  笠原健治さん@106期

reporter:峯 和男(65期)

    日時: 2007年1月17日(水)11時30分~14時
    場所: 銀座ライオン7丁目店6階
    出席者: 64名(内65会会員:江原、大隅、梶本、正林、峯)
    講師: (株)ミクシィ代表取締役社長 笠原健治(106期)
    演題: 「mixiのこれまでと今後」
    講師紹介: (読売ウィークリー2006年10月29日号より抜粋)
    高校卒業後東京大学経済学部に進学、3年生の時に人気の高い経営戦略のゼミに入る。ゼミでは「ウィンドウズ対マッキントッシュ」などITやネット関連の ケーススタディが多く、周りはできる学生ばかり。ここで刺激を受け他のゼミ生に追いつくべく新聞、雑誌やマイクロソフトのビル・ゲイツの半生を描いた書籍 などを読みあさった。その後パソコンを購入深夜迄ネットなどの世界を検索、ホームページ作成の技術なども身につけ1997年11月求人情報サイト 「Find Job」を立ち上げた。当初は鳴かず飛ばずであったが電話をかけまくりネットの可能性に敏感な企業などから求人情報を得られるようになった。2004年2 月にSNS(ソーシャル・ネットワーキングサービス)を始め、2006年2月「ミクシィ」に社名変更、同年9月東証マザーズに上場、現在に至る。
    講演内容:
    (要点のみ)
    ミクシィを一言で言えば「インターネット上のコミュニケーション」と言える。現在750万人位の人が利用している。利 用者の75%は20歳~34歳の人々。昨年大阪でトークリレーを行なった際は21~22才の人が多数集まった。本日は先ず会社概要から順を追ってお話した い。

    (1) 会社概要
    設  立:1999年6月3日
    資本金 :36億6825万円
    従業員数:120名
    事業内容:自社でWEBサイトを企画、開発して、その後の運営(企画・営業・開発運用)も行なっている会社。サイトは:
    イ) ソーシャル・ネットワーキング・サービス「ミクシィ」
    ロ) IT求人情報サイト「Find Job!」

    (2) 起業の経緯
    1997年4月大学3年生になり経営戦略のゼミに入った。1995年に「ウィンドウズ95」が発売され、マイクロソフト対アップルコンピュータ、インテ ル対AMDなどIT系のケーススタディを数多く行ない、IT業界や経営そのものに関心を持つようになった。ITがらみの本も数多く読んだがアマゾン・ドッ トコムのジェフ・ベゾス氏のインタビュー記事にも触発され、ネットビジネスで求人サイトを行なうことを決意した。その理由は以下の通り。
    イ) アルバイト先の上司が、「求人広告を出しても思うような人が来ない」と困っていた。
    ロ) 大量の情報を瞬時に検索できるというコンピューターの特性にマッチすると感じた。
    ハ) 紙を刷るコストがかからない。
    ニ) リアルタイムで掲載中止・変更を行なえる。
    そこで、8月中旬に決意し、9月にPCを購入、10月にサイトを構築。11月初めにサイトをオープンした。

    (3) これまでの経緯(一部のみ)
    1997年11月:求人サイト「Find Job!」開始
    1999年6月:(有)イー・マーキュリー設立
    2001年8月:Yahoo!アルバイト開始。同コーナーにコンテンツを提供
    2004年2月:ソーシャルネットワーキングサービス〈mixi〉開始
    2006年2月:社名を「イー・マーキュリー」から「ミクシィ」に変更
    因みに、売り上げは年々倍以上に増えており、今期は47億円以上になる見込み。従業員数も140~150人になっていると思う。

    (4) mixi概要
    バーチャルな世界にリアルな人間関係、実在性を持ち込む。現実社会に近い形でコミュニケーションできる唯一最大の空間。言い換えれば、同じ趣味の人がネット上だがリアルな人間関係を持てる。
    イ) 自分のプロフィールや友人のリストなど現実社会の関係性をネット上で再現する。
    ロ) 友人の輪をつなぐ、人脈図を可視化。
    ハ) 日記やコミュニティ、足あと、メッセージなどで、身近な友人や、同じ趣味を持った人とコミュニケーションを取れる。
    ニ) 新しい知識や情報を得ることができる。
    一つの大きな空間の中に同じ趣味の人達の村が多数出来、それぞれの村の中でコミュニケーションが活発に行なわれる。このため、多くの人にミクシィのアカウ ントを持って貰い友人の輪を広げて行く。検索サイトは友人一覧を打ち込むものではないが、ミクシィは個人情報をある程度オープンにしていくことを前提にし ている。

    (5) mixi開始の経緯
    2003年10月頃当社エンジニアが提案したのがきっかけ。留学生仲間の間で米国SNSが流行っているとのこと。使ってみて直ぐに次世代のコミュニケーション・インフラになる可能性を直感した。身近な人と気軽にコミュニケーションを取れる利点がある。
    ティム・クーグルという人の言葉に次のようなものがある。
    「インターネットにある大きな機会は全て利用し尽されたと誰もが考えた時に、そもそもルール自体を変えてしまうような企業が登場する。」
    そこで、「身近な人との交流を深め、新しい情報・知識も得て日々の生活をより楽しく豊かに」をコンセプトに2004年2月にオープンした。

    (6) mixiユーザー数
    2006年11月に660万人突破。ヤフーに次ぐ第2位のPV。一日80~90万件、累計3億件以上の日記が記録された。

    (7) mixi成長の要因
    イ) SNS自体の斬新さ
    ロ) バーチャルな世界にリアルな人間関係を再現
    ハ) コミュニケーション機能を最重視
    ニ) 毎日使い続けてもらうことを意識、コミュニケーションのしやすさ、日々変わるコンテンツ
    ホ) CGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)の隆盛:
    CGMの一般化、双方向性、個人による自由な情報発信、フラットな情報流通。
    へ)ネットワーク外部性:
    オークションやメッセンジャーと同じで多くの人が使えば使うほど、自分の周りで使う人が増えるほど、価値が高まるサービス。友人がどれだけ使っているかによる。10万人~30万人集まってから指数関数的に増えた。
    ト) ユーザーの方に愛着を持って使って頂いたこと。女性的なデザイン・ネーミング、招待制、共有のしやすさ等。

    (8) mixiの課題と今後について
    イ)多様なユーザーニーズ、開発負荷・サポート負荷、既存機能とのバランスなどをトータルに考慮した上での企画・開発・営業が課題。
    ロ)上場で得た資金力、認知度向上をもとに、上記課題を解決しつつ、スピードアップを極める。
    ハ)機能拡張の方向性は、「コミュニケーション機能の充実」「情報収集機能の充実」及び両方の組み合わせ。
    ニ)直近では動画、音楽、携帯が強化分野。
    ホ)「多くの人がmixiのアカウントを持ち、日々身近な人とコミュニケーションする、永続的に使われる空間」を目指したい。
    へ)独自の価値、機能を提供しながらYahoo!、Googleを超えるサービスを目指したい。

    (9) 心がけていること
    イ)使う人が増えれば増えるほど価値があがるサービス(ネットワーク外部性)を手掛ける。
    ロ)「すべてのことは自分で決められて、すべてのことは自分に責任がある」。
    ハ)社内、社外の人達、ユーザーの方達と高い信頼関係を築く。それが全てのベース。

    (10)今後の展望
    「バンテージポイントの達成」。見晴らしの良い場所、そこには最新の情報、優秀なヒトが自然に集まってくる。会社を見晴らしの良い場所にしたいと考えている。
    「世界に通じるサービスを提供する」。
    「世の中を変えるサービスを提供する」。新しい価値を創造するのがベンチャーの使命である。