【第200回】8月「乳がんの専門医が教える、納得して真っ当な医療を受けるための技術」

Ⅰ.日時 2019年8月21日(水)11時30分~14時
Ⅱ.場所 銀座ライオン7丁目店6階「ライオン銀座クラシックホール」
Ⅲ.出席者数 68名
Ⅳ.講師 相原智彦さん@97期 (相原病院 乳腺科 理事長)

学歴:
1985年 大阪府立北野高等学校卒業
1991年 大阪大学医学部医学科卒業
1999年 大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了職歴:
1991年~1992年 大阪大学医学部附属病院 第二外科
1992年~1995年 大阪府立成人病センター病院 外科
1999年~2006年 関西労災病院    外科・乳腺外科
2007年~現在      相原病院 乳腺科学会等:
日本乳癌学会(乳腺専門医・指導医・評議員)
日本外科学会(認定医・専門医・指導医)
日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会(評議員)
箕面市医師会理事

Ⅴ.演題 「乳がんの専門医が教える、納得して真っ当な医療を受けるための技術」
Ⅵ.事前宣伝 「世の中には様々な情報があふれています。どれが正しくてどれがとんでもない情報なのか、往々にして素人は判断に困ります。一見するとうまい話に見えたものが、実は最悪だったという事もあり得ます。医療に関しても例外では有りませんし、命に関わるので事は重大です。今回は雑多な情報からどの様にして必要な情報を探したら良いのか、危ない情報の見分け方、担当医との良いコミュニケーションの取り方、医師から見て最悪の患者さんとは、など、乳がん治療を例にとりますが、医師にかかる時に普遍的に使える技術について、お話しをさせて頂ければと思っています。」
Ⅶ.講演概要 紹介者は、小学校から高校までの同期の阪田陽子さんと室田さん。室田さんは卓球部でも同窓。配布資料はなく、64枚のスライドによって、簡単なクイズを交えながら和やかに講演された。

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1.自己紹介

専門は乳腺外科。
現在の仕事は相原病院(乳腺外科と人工関節の専門病院)の理事長。
2016年ブレストクリニック川西(乳がん検診)を開設。
乳がんの手術件数は川西・宝塚・池田・豊中・箕面で最多数。

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2.乳がんの基礎知識

(1)日本人の乳がん
・日本人女性のがん罹患率の1位は乳がん(2位大腸がん、3位胃がん、4位子宮がん、5位肺がん)
・年齢別乳がんの状況をみると、若い世代(20代~30代前半くらいまで)の罹患率はとても低く、40代後半から60代の罹患率が一番多い。乳がんになる人が全く無い訳ではないものの、若い世代は無症状なら検診は勧めない。
・乳がんのリスク因子は、ライフスタイルの欧米化、肥満とアルコール摂取(毎日5%のアルコール300mlをのむ習慣)、喫煙、閉経後の運動習慣がない事など。
・遺伝に関係した乳がんは全体の5~10%程度。血縁者に乳がん罹患者がいないからといって乳がんにかかりにくい訳ではない。

(2)乳がんの症状
・ほとんどの乳がんは痛くない。乳房にしこりや痛みがあっても検査で異常がなければ乳腺症と診断される。乳腺症は頭痛と同じ様なもので病気ではない。心配する必要はない。
・セルフチェック①自分で乳房を見る(視診)。両手を万歳した状態で鏡を見て、乳房の皮膚が引きつれていたり、乳房の皮膚の色が変化していたり、乳房が左右非対称であったり、乳首がジュクジュクしていて皮膚科でも完治しなかったり、片方の乳首の一か所から血液交じりの分泌液が出るなどの症状が出ていたら、乳がんを疑う。
・セルフチェック②自分で乳房を触ってみる(触診)。乳房をつままずに、指先で押える感じでまんべんなく触って、しこりがあれば乳がんを疑う。疲れるほど一所懸命やらない。おおざっぱで良いので、習慣化させて継続することが大切。

(3)乳がんの検診について
・検診には2種類あるが(住民健診いわゆる対策型検診と人間ドック)いずれも無症状の人が対象で、気になる症状が出ているなら検診を繰り返しても意味はない。きちんと診察を受ける。
・乳がん検診の基本はマンモグラフィ検査。視触診とエコー検査も併用すれば発見率が1.5倍に上がる。
・乳がんの治療成績(手術後10年の生存率)からするとステージⅡまでには発見したい。
・男性にも乳がんを発症する場合があるがごくわずか。しこりに気がつけば診察を受ければ良い。

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3.納得して真っ当な医療を受けるための技術

(1)精密検査(診察)の受け方

①まずは落ち着く。
・乳がんの検診後に「要精密検査」の通知が来ても、実際に罹患している人はわずか(2~6%程度)であることを知っておく。
・患者のクチコミやマスコミの落とし穴へは落ちない。ネットの情報は玉石混交。むやみやたらと不安にならない。何が正しいのかをナビゲートする担当医は重要。

②精密検査を受ける病院を探す。(失敗しない病院選び)
・乳がんの専門は乳腺科・乳腺外科。婦人病だからと産婦人科へ行っても意味はない。
・日本乳癌学会のホームページで専門医、認定・関連施設を調べられる。
・病院は立地や規模や手術件数の多さだけで選んではいけない。遠くても小規模でも乳腺科・乳腺外科のある病院を選ぶ。
・実は本当に大切なのは、病院を探す事ではなく主治医を探す事。

③勇気をもって診察を受けに行く。
・マンモグラフィ検査、エコー検査、必要なら病理組織検査(検体採取して顕微鏡検査)を行う。
・できれば信頼のおける誰かに付き添ってもらって、医師の説明を一緒に受けると良い。

(2)賢く医療を受けるためには担当医と良いコミュニケーションをとる。
・担当医と相互理解ができる、コミュニケーションが上手い患者は得をする。
・医師の頭のなか(医師あたま)や心の内を知ってコミュニケーションを考えてみる。
・2時間も待たされるのに診察時間は3分しかないなら、与えられた3分で勝負する。
・診察前の準備が決め手。聞きたいことは何か?考えを整理しておく。
・限られた時間内で話すのが苦手なら、簡潔に箇条書きしたメモを用意して見せる。
・不安からくる漠然とした散漫な質問には医師は答えようがない。(この治療で本当に治りますか?何かあったらどうしたら良いですか?など)誰かに話す、紙に書き出してみるなど、不安の原因を整理して具体的に簡潔に質問をまとめる。
・医師は医療以外の話(健康食品、WEBサイトで見かけた情報など)には興味がない。よそでの話はやめて、目の前の担当医の話に集中し、きちんと理解して、それに対する質問を返す。
・同じ質問を繰り返すのではなく、どの点が理解できなかったかを具体的に質問する。
・医師対患者の敵対構造は避ける。(同じ方向を向く)
・前医に不満があり転院を希望するなら、不満点を合理的に説明できるようにしておく。
・セカンドオピニオンを受診するなら目的を明確にする。担当医と充分なコミュニケーションもとらず、がん保険の適応で無料だから、という理由だけでセカンドオピニオンを受診しない。

(3)ガイドラインを知っておく
・本来は良い医師を選んだら、その話を理解するだけで充分。
・大抵の医師は真面目だが、真面目に独りよがりの治療を施す人もいる。
・気になることがあればガイドラインを参照して、外れていると思ったら率直にその旨を伝えて疑問点の解消を図る。

(4)危ない情報の見分け方
・「昔からここだけにしかない治療」は危ない。本当に素晴らしい治療なら、なぜよその病院に広まらないのか考える。
・健康食品、民間療法、高額自費診療は確実に危ない。それらにはなぜ保険が適応されないのかを考える。日本は保険の先進国なので、きちんとしたデータのあるものなら例え高額な治療でも健康保険が適応される。また、本当に効果のある食品なら、なぜ製薬会社に持ち込んで世界中に売り出して大儲けしないのか考える。

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4.まとめ
・医師選びがすべて。ただしこれが最難関。
・限られた時間内に賢くコミュニケーションをとり、医師と患者が同じ方向を向く。
・治療方法で乳がんの生存率は変わる。治療方法の選択は患者の自由だが、専門医によるガイドラインに基づいた治療が最も生存率が高い。

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5.質疑応答

質問)ガイドラインを知るにはどうしたら良いのか?

回答)乳癌学会は医師向けのほかに一般患者向けのガイドラインを出している。書籍として購入できるし、WEB上に公開している情報もある。また、他の病気についても大抵はいろんな学会や団体からガイドラインが出ているので治療の参考にすれば良い。

【Ⅶ章記録:野田美佳(94期)】

Ⅷ.資料 なし

 

 

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