reporter:峯 和男(65期)
日時: | 2006年1月18日(水)11時30分~14時 |
場所: | 銀座ライオン7丁目店6階 |
出席者: | 54名(内65会会員:江原、大隅、山根、峯) |
講師: | せんだ医院院長 千田 稔氏(57期) |
演題: | 東洋医学=漢方とは如何なるものか |
講師紹介: | 57期卒。昭和25年 岡山医専卒業後第一外科勤務。森永砒素ミルク事件にも関与。昭和37年東京で開業。昭和50年以降東洋医学の道に進む。著書として「東洋医学」「こんな薬 草知っていますか?」の他、東京のロータリークラブにおける講演に基づくものなどあり(出席者に回覧)。 |
講演内容: (要点のみ) |
(1)自分は当初外科を専門としていたが、広島に勤務していた時同期の友人に誘われ産婦人科に変わった。東京オリンピック前々年の昭和37年に産婦人科を 開業したが、その後東洋医学の研究会に参加したことをきっかけに東洋医学の道に進み30年以上東洋医学一筋にやってきた。
(2)日本の漢方医学の基盤は古代中国で生まれた治療学。6世紀前半仏教の伝来に伴って中国からもたらされた医学が日本の国情に合わせて工夫改良され独自の発展を遂げたもの。 (3)江戸末期にオランダ医学「蘭方」が伝えられ、これと区別するために「漢方」と呼ばれるようになった。なお、中国では「中医学」と呼ばれている。漢方 薬とは、この医学による医療のために使われる薬方(処方)のことで、天然物である生薬(主に薬草の根や茎、葉などの有用部分を乾燥させたもの)を原則とし て2種類以上組み合わせた生薬の複合体。材料は殆ど植物であるが、中には石膏もある。 (4)ドクダミやゲンノショウコは、家伝的、伝承的な薬で、概ね単実で使い民間薬として重宝されている。よく知られている葛根湯は、立派な漢方薬で、葛根 を主薬、麻黄、生姜、大棗、桂枝、芍薬、甘草の7種類の生薬の組み合わせで、2000年前の医学書にその使い方の指示(項背強、頭痛悪寒、発熱、無汗)が ある。適応疾患としては、感冒、急性炎症、化膿性疾患の初期、蕁麻疹、肩こり等効能は幅広い。 (5)東洋の風土で育った漢方は、独自の単純素朴な生理観、病理観を持っていた。人の生命は「気」と「血」の調和によって、生命現象が成り立っていると考 えた。「元気がない」「元気を出す」「血気ざかり」「血気にはやる」などという慣用語はこの気血思想から出た言葉。肉体的な苦痛があると精神的に落ち込 む。この逆もある。心身の歪みを調整し、バランスを補正するというのが漢方治療の目指すところ。現代医学の自律神経と内分泌(ホルモン)との相関関係を古 人は知っていたのではないか。 (6)漢方は、病気を生体にそなわる自然治癒力(体質に負うところが多い)と生体を侵そうとする勢力との対決と考えた。従って体質的と考える半健康という 病状は、漢方治療の得意とするところ。冷え、のぼせ、常習性頭痛、肩こり、カゼ症候群の初期、かるい蓄膿、小児の夜泣、虚弱、中等度の神経痛、月経困難 症、胃下垂、慢性胃腸炎、更年期障害、慢性湿疹、自律神経失調症、不眠、アレルギー鼻炎、くりかえす膀胱炎、手術後の体力増強等にも漢方治療の有効性が認 められている (7)民間薬と漢方薬との違い (8)西洋医学と漢方医学との違い (9)虚証と実証 老人には薬用人参などを用い、若いパワフルな人には体力を落とす薬を処方。一般には実証の方が健康的と思われているが、必ずしも健康体ではない。要は、中 庸に持っていくという治療法。即ち漢方では、病気は身体のバランスが崩れた状態と考え、治療の原則は、崩れたバランスを元に戻すこと。冷えていれば温め、 足りなければ補う。 (10)漢方薬には決まりがある (11)東洋医学の三大古典 (12)古くから日本に移入された鍼灸医術(物理療法)も明治の中頃まで我が国の医療の主流にあった。痛みを取る、免疫力を高めるという事実は、外国でも高く評価され、WHO(世界保険機構)が鍼治療の適応として小児喘息を含む41疾患にその有効性を認めている。 (13)西洋医学は日進月歩であるが、東洋医学の良いところも活用されるべきである。現在80位の大学医学部で東洋医学の講義を入れるところが出てきた。 健康保険も使える。従来、東洋医学は科学的なシャワーを浴びていないから駄目との考え方が支配的であったが、この考え方も徐々に変わってきている。 (14)なお、ついでながら、御茶ノ水に「昌平クリニック」という診療所がある。これは『壮快』『健康』という雑誌の出版社がクリニックを開業したもの。ここで私から紹介されたと言って貰っても良い。 |