Ⅰ.日時 | 2018年6月21日(木)11時30分~14時 |
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Ⅱ.場所 | The BAGUS PLACE |
Ⅲ.出席者数 | 67名 |
Ⅳ.講師 | 岡田仁志さん@96期 (国立情報学研究所准教授)
1965年大阪府生まれ。大阪府立北野高校卒業。 東京大学法学部第一類(私法コース)、第二類(公法コース)卒業。 大阪大学大学院国際公共政策研究科博士前期課程修了。 大阪大学大学院国際公共政策研究科博士後期課程中退。博士(国際公共政策)。 大阪大学大学院国際公共政策研究科個人金融サービス寄附講座助手を経て、2000年から国立情報学研究所助教授。 2007年より現職。総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻准教授(併任)。 総務省情報通信政策研究所特別上級研究員(兼任)。 専門は電子商取引や電子マネーなどのITサービスに対する消費者の受容行動と公共政策。 主たる著書に、『仮想通貨』(共著、東洋経済新報社)、『電子マネーがわかる』(日本経済新聞出版社)など。近著に『決定版 ビットコイン&ブロックチェーン』(東洋経済新報社) 略歴 https://store.toyokeizai.net/books/9784492681435/#detail_comment2研究内容 http://researchmap.jp/hokada/ |
Ⅴ.演題 | 「仮想通貨から冥銭まで ~~貨幣の不思議とブロックチェーンの謎~~」 |
Ⅵ.事前宣伝 | 「ビットコインはサトシナカモトという謎の人物が発明した、インターネットを流れる仮想のお金です。どこかの国の中央銀行が発行しているわけでもないのに、あたかも通貨のような顔をして世界中を巡っています。とても奇怪な現象のようにも見えますが、古代の日本では輸入銭が貨幣として流通した時代もありました。いったい、貨幣というものはどうやって成立するのでしょうか。謎を解くためのキーワードは、化体(けたい)という名の社会契約です。果たして、仮想通貨に使われているブロックチェーンという技術は、どうやって貨幣らしさを表現しているのでしょうか。最新の技術を解明するとともに、台湾の道教寺院の冥銭や、古代ウル第三王朝のジッグラトなど、世界の地理と歴史に学びながら、仮想通貨の謎に迫ります。」参考文献:岡田仁志(著)『決定版 ビットコイン&ブロックチェーン』(東洋経済新報社刊) |
Ⅶ.講演概要 | 出席者には約13頁の詳しい講演資料が配付されたので、今回はその中の主要項目を抜粋して講演録を書くことと致したい。 プロローグ ・大学院に入学したころ(1990年代半ば)、電子マネーの実験が行われていた。 ・日本にSuicaさえ存在しなかった時代、クレジットカードで決済できるのに、なぜわざわざ電子マネーで決済するのか?が議論されていた。 ・そこで電子マネーは本当に必要なのかを研究した。 ・研究の一環として世界各国の電子マネーを観測した。(ドイツ、フランス、香港、韓国など、特に韓国はIT先進国で、思いついたらすぐ実践導入と流通実用化と失敗のサイクルが早い国で観測場所としてはよかった) ・1999年東京にて大規模なスーパーキャッシュの実験が行われた。 ・テーマは「人は電子マネーだけで生活できるのか?」 ・実験には殆どの都市銀行といくつかの地方銀行、NTTコミュニケーションズが参加した。 ・電子マネーは銀行のキャッシュカードにICチップを貼り付けたものを作り、チャージは銀行に専用のATMを設置した。また、ISDN回線でチャージできるグレーの公衆電話も設置した。 ・実際に電子マネーで決済すると、手間と時間がかかり不便に思われた。(導入しているお店かどうか、その電子マネーは本物か、電子マネー対応の端末があるか、端末に用紙がセットされているか・・・・・・)
2.ビットコインとは何か→誰が何のために作ったのか? ・ビットコインを運営している人物は存在しない。 ・まるで妖怪の一反木綿のようなもの。 ・日本中だけでなく世界中のあらゆる場所で同じ帳簿が見えるが、帳簿を管理する銀行のようなものは存在しない。 誰が作ったのか?: ・発明者 サトシナカモト(仮名)が2008年に仮想通貨の論文をメーリングリストに公開した。 ・発明者は仮想通貨の作者でも運営者でもなく、アイデアを提供しただけ。 ・発明者が誰なのかわからない、誰であるかを研究している人もいる。 何のために作ったのか?: 破綻しない通貨を得るため。 ・仮想通貨はハイエクの学説と似ている。(参考:貨幣発行自由化論 F・A・ハイエク著 東洋経済新報社)
3.電子マネーと仮想通貨の違いについて ・転々流通性なし→電子マネー ※転々流通性:友人同士でお金のやり取りできるかどうか ・仮想通貨の管理方法は3つある
++-++-++-++-++ ・ビットコインは2009年にスタートした。 ・当初は、技術者集団GEEK達が行ったビットコインの実験に過ぎなかった。 ・キプロス共和国の財政が破綻した事をきっかけに、お金の逃避先として注目を集めた。 ・自国の通貨を銀行に預けても、国の財政が破綻すればお金の価値はゼロになることに気づいた人たちが、自分のお金をビットコインに置き換えて使い始めた。 ・多くの人々が使えば、そこに価値の変動が生まれる。 ・その頃、中国で理財ブームが起こった。 ・中国国内からたくさんのお金がビットコインに交換された。 ・ビットコインの価値はますます上がり、さらに多くのお金が国外に流出した。 ・お金の流出を止めるため、中国政府は規制をかけた ・規制をかけたことで、ビットコインの価値が半減したが、その時がチャンスと考え、ビットコインを購入した人達もいた。 ・その頃、世界最大級の交換所だったのが渋谷のマウントゴックス社だった。 ・購入者の多くは海外在住の外国人であったとされるが、日本人や日本在住の外国人もビットコインを購入した。 ・マウントゴックス社から巨額の仮想通貨が流出する事件があった。 ・流出の原因は解明されていない。
4.ビットコインのエコシステム ビットコインにはサーバーが存在しなくて、無数のコンピューターが対等な関係で、お互いに手を繋ぎ合っている。一個一個のコンピューターをピアー(結節点)と呼ぶ。 以下に一例を挙げて説明する。 1)支払 2)記録 3)採掘 4)報酬 5)承認 6)流通 ++-++-++-++-++ ・銀行がやっていた作業を一万一千台のコンピュータが行うのがビットコインの仕組み。 ・中心がないので、簡単にはつぶせない。(米国でも無理) ・採掘は設備さえあれば誰にでもできる。 ・最初のころは小さな機械で採掘できていたが、現在では採掘専用の工場が数億円かけて建設され、発電所も作られ、町ごと新しく作り出してゆく。 ・日本で採掘工場を作っても冷却コストがかかりすぎて採算が合わない。 ・一つの取引が成立するのに約10分もかかるのは致命的な欠点だが、国際送金の手間暇を考えるとずっと簡単で早い。
Eテレ サイエンスゼロ(6月3日放送分)カガクの”カ“#5仮想通貨&ロボコン直前
5.『冥銭』と仮想通貨 ・台湾のお寺には『冥銭』というものがある。『冥銭』は紙の上にお金の価値を載せたもの。弔いで『冥銭』を燃やすことで、冥界にお金を送るという考え方。 ・現実の通貨「紙幣」を考えてみると、所謂、「形而上」と「形而下」が一体である。一方、「仮想通貨」は、「形而上」だけであり、この『冥銭』も通常は「形而上」と「形而下」が一体であるものの焼いてしまうと「形而上」だけの存在となる。 ・つまり「仮想通貨」と焼かれた『冥銭』は、基本的に同じものであると言うことが出来る。 |
Ⅷ.資料 | 岡田_6月資料_web版(2MB) |