reporter:峯 和男(65期)
- 学習到達度調査(PISA)
OECD加盟41カ国の間で行われる調査で15歳の中学生の学力は2000年の8位から14位に後退。数学は1位から6位に。科学をしてみたいかという問いに対して日本は最低、1位はシンガポールという結果が出ている。 - 学習時間
日本の小学校4年生の8.8%は殆んど勉強をしておらず、高校生の31.6%が殆んどしていない。一方高校生の29.8%は2時間~2時間半勉強してい る。完全に二極化している状況。日本青年研究所が行なった日・米・中の高校生対象の調査では日本の高校生の40%が全く勉強しないという結果が出ている。 2時間以上勉強している高校生の割合は、中国では60%、日本は僅か15%、米国はこの中間となっている。この傾向が数年も続いたら大変なことになる。 - 英語教育
日本の高校生は自信がない。「読む、聞く、書く」が中心で、話すことが出来ない。当社では上智大学の吉田教授と共同でGTECというテストを開発した。 従来のTOEFL(Test of English as a Foreign Language)やTOEIC (Test of English for International Communication)では話すことのチェックが出来ない。GTEC (Global Test of English Communication)は全てコンピュータでやる。項目別反応理論の応用で多数の受験者に同じ質問を行なうが、第1問、2問は全員に対し同じ質問を 行ない、その答え方で第3問から問題が異なってくる。このテストはベルリッツの数千人のデータベースに基き作られた。当初はビジネスマン用を作り、このテ ストで800点位取れれば米国で商売が出来るレベル。その後、高校生用を作った。日・中・韓三カ国の高校生を対象として行なったテストの結果は、韓国、中 国、日本の順。同じ点数でも韓国の学生は英語を使える。韓国で小学校4年生から英語を勉強していた生徒は高校1年で高いレベルになっている。<自我・社会性との関係>
自我(自己主張、自立性、自信等)は英語が出来たほうが確立し、社会性(協調性、社交性、社会貢献、役割実行等)も英語が出来る方が社会性があるという結果が出ている。なお、これらのことは学校だけの問題ではなく、家庭や地域の教育が重要である。 - 保護者の事情
<保護者が学校に対し何を期待しているかの調査結果>
基礎的な学力 67.2%
学ぶ意欲 62.0%
道徳的な思いやり 55.9%
社会のマナーやルール 54.2%
将来の進路 21.3%
実際の場面で使える英語力を育てる 19.7%英語に対する関心は低いが、当社では小学校高学年対象の英語教室を開設することとし、自宅で教える人を募集、500クラス以上が出来ている。
- 教師の事情
週5日制となってから教師は逆に多忙になっている。教師の6人に1人は家で何も勉強せず、32.6%は家で勉強する時間が一週間で僅か1時間位。 - 夜型が進む子供の生活(第一回子供生活実態調査)
小4: 殆んど10時前就寝
中1: 10時前就寝は 6.1%
高2: 1時半就寝 6.4%
1時頃就寝 15.6%
<テレビ・ビデオを見る時間>
日本の中学生: 2.7時間
米国の中学生: 2.2時間
<家で宿題をする時間>
日本の中学生は 1時間
<浦安市の中学での調査>
テレビを長く見る子供程授業が解からない
<授業の理解度>
7:5:3と言われている。小学校では7割の子が解かる。中学では5割、高校になると3割の生徒しか解からない。朝食を食べない子が10%もいる。母親 に、朝食を子供に食べさせるようにと言うと、学校で朝食の給食をして欲しいと要求する母親が複数いる。品川区の調査では、起きてから学校へ行くまで洗顔し ない子が40%、歯を磨かない子が30%いた。勉強は大切かという質問に対し80%の生徒はYes と答える。にも拘らず、勉強は好きかとの問いに対する答えは:小学生:40%、中学生:16%、高校生:20% - ゆとり教育
ゆとり教育が言われた時、中学において国語:30%、理科・社会:40%、数学:25% がカットされた。これに対し反省の気運が生じ「はどめ規定」が出来、これが最低というラインが示されるようになった。今後どのような効果が出るか注目される。
日時: | 2005年4月20日(水)11時30分~14時 |
場所: | 銀座ライオン7丁目店6階 |
出席者: | 76名(内65会会員:江原、大隈、梶本、国政、正林、山根、峯) |
講師: | ベネッセコーポレーション社長 森本 昌義氏(69期) |
演題: | 「最近の生徒は勉強しているか?」 |
講師紹介: | (70期の世話人、松本氏からの紹介)森本氏は1962年東大卒業後ソニーに入社、婦人はアルゼンチンの人。サンディ エゴ工場長、ブラジル社長等を歴任の後、アイワの社長やコンサルタントを務め、ベネッセに引っ張られた。30数年前、自分がたまたまパリにいた時TIME 誌に日本人の記事が出ていると教えられ、読んだところ森本氏が日本の経営を海外に持ち込み成功したという記事であった。世界の一流誌に取り上げられる程の 活躍振りを知り、たいしたものだと思った。 |
講演内容: (要点のみ) |
(1)過分のご紹介を頂き恐縮している。東大時代は松本氏と同じクラスであったが自分は余り勉強をしなかった。自分の好きな言葉は「一期一会」。これまでいろいろな良い人との出会いがあった。
(2)ソニーに入社したのも偶然であった。ソニーがニューヨークで株式を上場したことを知りソニーに話を聞きに行った。たまたま当時の盛田副社長が会ってくれて色々話をしているうちに就職の話となりソニーへ来ないかと言われその場で決めてしまった。 (3)入社して一年位経った時、自分は海外へ行きたかったのに人事労務等をやらされていたので、会社を辞めようと思い辞表も書いていたが、突然盛田氏から米国コロンビア大学留学の話があって有難くお受けした。 (4)その後も、コンサルティング会社のマッキンゼーに転職しようと思い内定していたところへソニーのサンディエゴ工場に赴任の話があり、結局15年間駐 在してしまった。15年も経ってそろそろ別の場所へ移りたいと思ったが、妻がアルゼンチン人なので日本での生活は無理かと考えていたところ、大賀社長から ブラジル行きの話がありブラジルへ行って10年間駐在した。 (5)1997年に日本へ帰り人事を担当させられた。丁度、執行役員制度等の人事制度を改正する時で、日本にしがらみのない人間にやらせた方が良いと思わ れたようだ。その後アイワ社長を命ぜられ、そこで1万数千人のクビ切りを行なう破目になった。それだけ大変なことをやってソニーへはとても戻れない。以前 から付き合いのあったヘッドハンターに紹介され、「足入れ婚」のような形でベネッセに入社した。ソニーは、理系の人間でないと判らないことが多いがベネッ セは文科系でも良く判る。 (6)人から「全く異なる業界に入って大丈夫か」とよく聞かれるが、そのような時は、ナビスコの社長からIBMに転じ、ゼロベースの改革を成功させたルー・ガースナーの例を話すことにしている。 (7)ベネッセは以前「福武書店」と言っていたが、経営の多角化に伴い社名を変更した。ベネッセはラテン語で、「bene」は「良い・正しい」、 「esse」は「生きる・生活」を一語にした複合語。会社の事業は約60%が教育関係で、200数十億円の利益の殆どは教育関係からのもの。その他の事業 としては、愛犬・愛猫家向けの本を出版したり、介護保険を利用した老人ホームの経営(全国で95ヶ所あり)等も行なっている。 (8)特に力を入れているのは「教育のベネッセ」というブランドの浸透。競合他社はあまりない。世界50カ国で語学教育を行なっている「ベルリッツ」も 100%子会社とした。どの企業にも言えることであるが、企業にとって研究開発は極めて重要。当社でも売上の5~6%を研究開発費に充当している。いずれ ケータイも教育のツールにしたい。この他東大の情報学科、教育・教養学部にも寄附講座を持っている。 (9)前置きが長くなってしまったが、現在の生徒の学力等について述べたい。 |