Ⅰ.日時 | 2017年7月19日(水)11時30分~14時 |
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Ⅱ.場所 | 銀座ライオン7丁目店6階 |
Ⅲ.出席者数 | 57名 |
Ⅳ.講師 | 中山行輝さん@80期 (IRゲーミング学会監事)
1972年3月 東京大学法学部(広報)卒業 1972年4月 日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行、 営業第三部、鹿児島事務所、営業第二部、高松支店、設備投資研究所、経理部を経て 1986年4月 (財)中東経済研究所(現エネルギー経済研究所中東研究センター) 主任研究員(出向) 1988年3月 高松支店 審査課長 1990年3月 設備投資研究所 主任研究員 1992年3月 企画部(現ストラクチャードファイナンス部) 副長 / 1993年3月 企画審議役 1994年4月 (財)大阪湾ベイエリア開発推進機構 総務部審議役 / 1995年4月部長(出向) 1996年4月 設備投資研究所 次長 1998年4月 (財)南西地域産業活性化センター(沖縄) 上席研究員(出向) 2000年6月 アジア太平洋トレードセンター㈱ 取締役(出向) 2004年7月 ㈲大分TLO 技術移転スペシャリスト(出向) 2005年5月 ㈱くろがね工作所 常勤顧問(出向) 2006年7月 日本政策投資銀行退職 / 同上 へ転籍 2016年7月 同顧問 現在に至る 《教職歴等》 1999年度後期 琉球大学法文学部非常勤講師(「地域経済論」) 2004年度 大分大学地域共同研究センター客員教授(兼務) 2003年度~ ギャンブリング(現IR)*ゲーミング学会監事(会長:谷岡一郎大阪商業大学学長) 《著作・投稿》 エコノミスト(90.9.4号)「フセイン独裁の権力構造」 岐阜県(99年記念号Vol.100)「特集 21世紀の岐阜を考える-団塊世代の課題-」(共著) 大阪商業大学アミューズメント産業研究所(03.3.31.刊)「カジノ導入をめぐる諸問題<1>」(共著) 他 |
Ⅴ.演題 | 「カジノを含むIR(統合型リゾート)は日本でどう実現する?」 |
Ⅵ.事前宣伝 | 「昨年末の臨時国会で「カジノを含むIR施設整備推進法」(議員立法)がすったもんだの挙句成立しました。更に1年内を目途に(閣法で)実施法案が審議・可決される予定であり、先行してパチンコ等「既存ギャンブル」も対象に「依存症対策基本法案」が通常国会に提出されることとなりました。そして順調に行けば4~5年後にポスト東京五輪の目玉プロジェクトとして開業の運びとなります。そこでこれまでの議論の経緯を踏まえ、論点を整理しつつ今後の展望を明らかにしたいと存じます。」 |
Ⅶ.講演概要 | 1.今回は8ページに及ぶ詳細な説明資料が配布され、それに基づいて講演が行われた。以下は、その説明資料の中の要点を抜粋したものである。
++-++-++-++-++ 2.先ず最初は一般的な6つの質問である: (1)カジノ発祥の地は米国である?→ヨーロッパの貴族館・温浴施設 (2)カジノの合法化は?→国連加盟の2/3 の国・地域で可、G7で日本のみ不可 (3)違法アングラカジノの存在を知っている?→バドミントン桃田事件で浮上 (4)オンラインカジノの存在を知っている? (5)パチンコ・パチスロの換金は合法である? (6)石原元東京都知事は東京都条例のみでお台場にカジノが実現すると誤解? 「賭け事は一切やらない」という人もいるがどうだろうか?物心がついてから人生は学校(高校&大学)・職業・配偶者の選択等賭け事の連続ともいえる!? ++-++-++-++-++ 3.今まで実現しなかった7つの理由: (1)そもそも刑法に抵触する (2)倫理的(宗教的)抵抗感 (3)ギャンブル中毒の増加、家庭崩壊 (4)犯罪者増&治安維持コスト増 (5)既得権者(パチンコ等)の消極姿勢、アングラカジノ(闇社会)の敵対視、表面的な反対は女性・教育界・宗教界からも未だ多い (6)高度経済成長=バブル期の記憶 (7)ラスベガス等の変貌に対する無知→変化を嫌う国民性 ++-++-++-++-++ 4.導入論が浮上してきた5つの背景: (1)観光・集客(国際・国内)による国・地域の振興・活性化 (2)雇用機会の創出、ディーラー等スタッフの直接雇用と関連分野 (3)新たな税財源の確保、但しあくまでも副次的なものに止まる (4)施設の建設・運営に伴う経済(波及)効果 (5)遊休土地(低未利用地)の活用→首都圏&大阪ベイエリア・沖縄(基地跡地) 一般的に(1)~(5)の総合評点(+地域の熱意)で地域の誘致の声が大きくなるはず ++-++-++-++-++ 5.カジノ導入の4つの「弊害」: (1)組織暴力の介入を招く? (2)犯罪が増加する? (3)青少年に悪影響を与える?(未成年は入場不能のはずだが) (4)ギャンブル中毒者(依存症)がまた増える?一定程度(2~3%)のギャンブル依存症の発生を認めつつ予防と更生に収益の一部を充当し正面から取り組む等、副次的マイナスの軽減に極力務める。我が国の依存症比率が世界平均より高い(536万人→4.8%、但し本年3月再調査で2.9%に見直し)のは、パチンコ・パチスロホールの蔓延が最大要因。 「必要悪<相対善」として自己責任に基づく大人の対応が求められるのではないか? ++-++-++-++-++ 6.違法性阻却の4つの方法: (1)刑法を改正する→正面突破は極めて困難 (2)風俗営業適正化法改正で慣習行為として実質黙認する(パチンコ類似) (3)個別特定法(刑法の例外=正当行為)で公営競技に追加(競馬等同様)→特定官庁の権益が強くなり過ぎる (4)地域を絞りつつ特別法で合法化する(一種の地域限定立法) ++-++-++-++-++ 7.推進体制を支える3つの柱: (1)前提となるのは地域住民の理解‣総意(合意形成) (2)事業の中核となるのは民間企業(地元企業<中央資本<外資) (3)管理監督は行政が司る(中央・地方) ++-++-++-++-++ 8.<まとめ>: (1)従来からのIR(Invester Relations=投資家向け広報)に加え、最近新たなIR(Integrated Resort=カジノを含む)統合型リゾート)も耳目に触れる。ホテルを含む複合的な集客・エンターテイメント施設群のことである。また、MICEもよくみかけるようになった。Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive Travel(招待・優待・視察旅行)、Conventuin(大会・学会・国際会議)、Exhibition(展示会・見本市)/Eventのビジネスセグメントの頭文字を取った総称(造語)である。我が国のIR(カジノを含む)はインバウンド(訪日観光客)向けに加え、国内観光客にも対象を広げつつ、更に周辺地域住民の週末・ナイトタイム等の健全なアミューズメント・レジャー活動の選択肢として、徹底した管理下で楽しく参加できるものにしなければならない。・・ ・・その際、(歴史・文化等既存資源の戦略的再構築を踏まえた)地域の総合的魅力づくりが前提となろう。マカオのカジノの売り上げが本場ラスベガスを凌駕し世界一となり、シンガポール(マリーナベイサンズとリゾートワールドセントーサの2か所)も略匹敵する存在となり同国のインバウンド増に大きく寄与した現在、我が国も最早タブー視せず導入へ向け真摯に検討すべき時期に至ったと理解すべきであろう。 (2)<永田町の動き>:今世紀に入り全国各地からカジノ誘致の声が上がり始め、自民党等(共産党・社民党を除く)与野党各党の有志議員も観光・集客資源としてカジノに関心を抱き、一部有力政治家も積極的に導入推進を主張するようになってきた。12年暮総選挙で自民党が政権復帰し、13年4月に140名(現在200名超)の超党派衆参議員が集結してIR議連を再開、役員を改選(会長:細田博之幹事長代行(現総務会長)、幹事長:岩屋毅衆院議員)、同年9月の20年東京五輪招致成功の後、同年12月法案を国会提出→15年4月に再提出した。審議の進展に伴いギャンブル依存症を危惧する報道が増え、安保法制等政党間(与党内を含む)の駆け引き材料とされたこともあったが、連立・公明党の一定の理解を得つつ16年12月臨時国会で漸くIR整備推進法が成立した。議員立法による推進(プログラム)法成立後1年以内を目途に閣法で実施法案を可決し(ギャンブル依存症対策を含む制度設計・詳細規定等)施行に至る予定となっている。尚、実施法制定後開設希望自治体が事業者を決め整備計画を策定し国(国交省)に認可申請する。建設完了・開業まで概ね4~5年程度を要するとされ、ポスト東京五輪の目玉プロジェクトに位置付けられる。 (3)<大阪のIR誘致について>:阪神・淡路大震災(1995年)後、復興対策~ベイエリア開発において(USJ開設に加え)集客・エンターテイメント強化の一環としてカジノ誘致も考慮された。08年橋下徹氏(100期)の大阪府知事就任以降、(日本)維新(の会)が積極的に提言、自治体・経済団体も本格的検討を開始した。関西経済同友会の調査(16年3月)によると、大阪府・市がカジノを含むIRを誘致した場合、経済効果の試算等は以下の通りとなっている。 ・候補地想定:夢洲(ゆめしま)地区(此花区) ・開業後の取引関係者などへの経済波及効果:約7600億円/年 ・雇用創出効果:約9万3千人 ・IR事業者の収入:約5500億円/年 ・IR投資額:約6700億円(カジノ・国際会議場・ホテル・飲食店など) ・その他インフラ整備費:約1000億円(地下鉄延伸・駅舎など) ・建設などに伴う経済効果:約1兆4700億円 開業想定は東京五輪(20年)までとされたが、現時点では同じく夢洲における開催招致活動を展開中の大阪万博(25年)の前年に見直しを行っている。現在IR誘致の最先頭を走っているのは大阪であろう。海外主要カジノオペレーターも熱が入っている。「やってみなはれ」に代表される関西のベンチャー気質は果たして奏功するであろうか?(因みに、大阪商工会議所会頭の尾崎裕大阪ガス会長(80期)は誘致反対派の急先鋒である)。
(註)IR*ゲーミング学会とは・・・ 世界と日本におけるカジノ等ゲーミング・ビジネスの動向並びに統合型リゾートの研究促進を目的に03年度設立され、大阪商業大学アミューズメント産業研究所(東大阪市)に事務局を有する。谷岡一郎同大学長(慶大法卒、専攻:刑法・犯罪学)が設立以来会長を務め、副会長の美原融同大教授(元三井物産戦略研)が政府の有識者会議の委員なっている。個人会員は専門性が求められ、関連業務に携わる実務家も含まれる。賛助会員は増加中(現在約100社)。当学会が中心となって内外関連情報収集とIR議連等への啓蒙・啓発活動を行っている。 以 上 (文責:峯) |
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