第11回 「総選挙終って今後の 展望」 松田喬和さん

reporter:峯 和男(65期)

    日時: 2003年11月19日(水)11時30分~14時
    場所: 銀座ライオン7丁目店6階
    出席者: 47名(内65会メンバー:新原、太田、国政、正林、峯)
    講師: 毎日新聞論説委員 松田 喬和氏
    演題: 「総選挙終って今後の展望」
    講師紹介: 講師は北野高出身ではないがOBの紹介により今回の講演が実現。政治担当論説委員を務める傍ら、政治に関するコメンテーターとしてTBSの木曜日早朝の番組、また土曜日夜のブロードキャスター等テレビ出演もしている。
    講演内容:
    (要点のみ)
    (1)田中真紀子氏の民主党会派入り
    真紀子氏を会派に誘ったのは小沢一郎氏であろう。小沢氏は彼女を買っている。民主党として彼女を会派に誘う理由としては:
    イ)外務大臣在任時に示した真紀子氏の破壊力
    ロ)民主党は女性に人気が無いので、彼女の人気に魅力
    ハ)上信越地方は保守の地盤。ここに少しでも民主党の影響力を及ぼしたい
    小沢氏は豪腕とか我儘とか言われているが、いざという時は天才的な口説き上手となる。彼はそのような気配りや細やかさを併せ持っている。
    細川政権当時の政治家のうち、生き残って影響力を保持しているのは小沢氏のみ。この事実は彼の政治家としての優れた能力の一つの証明であろう。

    (2)テレビ政治の時代
    自民党と民主党は明確な対立軸が無い。テレビへの露出度が影響する。
    自分は社説を書いているが、通常、社説に対する反応は5通もあれば良い方。真紀子氏に関する社説の時は20通以上の反応があった。しかもその殆どが彼女を応援する内容であった。
    小泉政権のややこしさは新聞論調のバラツキにも表れている。例えば、外交・安全について積極論を展開する新聞社と消極的な新聞社があり、経済政策も構造改革徹底を主張する社と景気優先を主張する社に分かれている等。

    (3)二大政党制
    今回の選挙で二大政党制移行は先ず間違いないが、二つの政党がこのままの形で続くとは思えない。憲法問題、年金問題等を例にとってもバラバラであり、テーマ毎にポジションが変わる。自民党が野党に転落したらバラバラになるのではないか。野卑な表現をすれば「馬糞の川流れ」 現象が起きる。今回の低投票率は自民党にとって絶好のチャンスであった筈。それにも拘らずそれを生かすことが出来なかった。

    (4)選挙の票読み
    最も固く票が読めるのは公明党。選挙の票読みは公明党から始める。
    無党派層の読み方は極めて困難であり、今回の選挙の結果、風がどのように吹いたか判断出来ない。
    大都会の自民党候補が苦しくなったのは、コンビニの発達と言われている。従来は商店街に町内のまとめ役がおり、町内挙げてのバックアップが得られたが、コンビニの発達で商店街が衰退、まとめ役不在の状態になっている。これは民主党にも言えること。

    (5)小泉政権の今後
    小泉政権のパワーは確実に落ちている。来年の参院選まではあまり変化は無いであろうが、妥協しないように上手くチェンジすることが出来るかどうか。
    安倍幹事長はあくまでも選挙向け。どんと構えて党の裏側で仕事する人がいなくなった。石原国土交通相は公団総裁問題で未熟さが出てしまった。山崎前幹事長と小泉首相の中は非常に深かったので彼の落選は痛手。
    小泉政権の特徴を三つ挙げれば以下の通り。
    イ)側近不在
    側近がいないために飯島秘書が動かざるを得ない。これは菅直人氏にも言えること。
    ロ)ライバルがいない
    先に述べたようにテレビ政治の時代はテレビに出ないと駄目。
    今は麻生氏以外これと思う人もあまりテレビに出ていない。
    小泉氏は体力的には森前首相の半分以下。しかし、気力はたいしたもの。中曽根、宮沢両氏の首を切ったのはその一例。自民党内における中曽根氏の存在感は極めて大きいので、近付きたがらない人が多いのが実情。
    ハ)ツキがある
    小泉首相にはツキがある。選挙前には株価が11,000円を越え選挙後は9,000円台まで落ちた。
    今後、公明党と一層近い関係を保たねばならないが、参院選後に変化が起きるか否か注視したい。