【第167回】11月「世界と日本、そして人  -研究者の立場から-」

Ⅰ.日時 2016年11月16日(水)11時30分~14時
Ⅱ.場所 銀座ライオン7丁目店6階
Ⅲ.出席者数 64名
Ⅳ.講師 江見俊彦さん@65期 (元東北大学教授)
阪大工卒
1958 川崎製鉄(現JFEスチール)入社、1982研究部長、 1988同社取締役
米国AK スチール、カリフォルニアスチール、ブラジルツバロン製鉄取締役兼務、(この間理博, ペンシルバニア大助手、ミシガン大講師)
1993東北大学教授
定年退職後2005までマクマスター大、メルボルン代、スエーデン王立工科大、カーネギーメロン大、ソウル大などで大学院客員教授、2007~ 江蘇沙鋼鋼鉄研究院院長
米国鉄鋼学会名誉会員、日本鉄鋼協会学術賞、スエーデン工学アカデミーブリネル賞、中国国家科学技術合作賞,友誼賞、市村財団技術開発賞など。
著書、論文,総説、特許254編。セミナー、講演17カ国150回。
 
大阪大学卒業後、川崎製鉄(現JFE Steel入社。主として研究開発部門に従事、研究企画部長、副所長などを歴任、この間、理学博士となる。本社取締役就任後、海外鉄鋼事業企画、エネルギー、知財などを担当、役員退職後は東北大学教授となり数々の国際的な学会に出席、産学での国内外との共研を介し多くの知己を得る。
研究の成果に対しブリネル賞を受賞。大学定年後は、数カ国の客員教授を務め、また中国のオーナー経営者に要請され、中国において研究所の開設と常軌化に貢献、約6年間滞在した。
(註)ブリネル賞とは:ノーベル賞には材料工学部門が無いので、ブリネル賞がノーベル賞に匹敵すると言われている。日本人初の受賞。授賞式はノーベル賞と同様の方式で行われている。
Ⅴ.演題 「世界と日本、そして人  -研究者の立場から-」
Ⅵ.事前宣伝 「略歴に記した学界、企業での経験と250回程度の欧州、アジア、ロシア、北・南米や豪州での体験から、世界と日本、それを繋ぐ人の絆と、日本の将来についての所感。加えて世界の素晴らしい景観。」
Ⅶ.講演概要 講師が川崎製鉄に入社したころ、日本の鉄鋼年産は約5百万トンであった。
劣悪な設備であったが、戦後の日本の経済を支えるのは鉄鋼であると各メーカーが研究開発、、設備投資を競い、自分が企業を離れた時は年産1億2千万トンに達し、世界トップの品質になっていた。

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世界の有力研究機関にはプロを招いて審議委員を委嘱し、研究の水準と生産性の向上を図っているところがある。委員として仕事をする時は、一週間位缶詰となり委員の間および現地の研究者と激論を交わす。オランダやスエーデンなどでの審議委員の仲間には、Harvard、MIT, Oxford, Cambridge などの錚々たる教授がいて、手強い議論を重ねた。しかし激論を交わしても、夕食時には豊富なワインと歓談を介して彼らとの連帯感が生まれた。

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自分は、敗戦の時はソウルにおり、家族は文字通り無一文になった。引き揚げのためソウルから釜山に行く時は3回も略奪され、引き揚げ船に乗船時の混乱では、子供ながら危機における日本人の民度の低さを経験した。

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英語の問題:日本の英語教育では、英語を話す国民との発想の違いに対する理解と対応が欠けていると思う。また、置かれた立場、状況に応じて、語彙や表現を適切に選択することが重要である。Expert Witness    として特に苦労する問題として定冠詞と不定冠詞、単数と複数、仮定法など、簡単に見えるが含意が異なる用例も多く、大事な議論では、注意が欠かせない。

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鋼について:
資源は全金属可採埋蔵量の95%、2300億トン位あり、2000品種を超える製品がある。用途に応じ、硬さ、強さ、柔らかさ、靭さ、腐食し難さ、壊れ難さ、高温・極低温での強さ、溶接しやすさ、を組み合わせる。
これらの特性はさらに数10%の向上余地があり、実現できれば夢の素材になる。年間10億トン強に及ぶ大量生産が可能であり安価に何処にでも供給できる。
(1)生産性:大容量設備、高速高能率連続生産プロセス、高度の自動化、無人化、保全技術、全生産システムのAI-IOTと熟練技能操業により最大化。
(2)品質:強さと靭さは合金の少量添加、不純物の極少化(含有量1万分の1%台)、鉄結晶粒のミクロスケール(粒径千分の1mm台)への微細化、鋼組織のナノスケール(ナノメートル=1百万分の1mm台=10オングストローム台)での微細化、により最大化する。ステンレス鋼、電磁鋼、などについては合金元素添加による。
このように、鉄鋼業はナノメートルの組織制御から1億トンの物流制御まで扱う産業である。
(註)その後、瀬戸大橋をはじめ多くの画面を映しながら詳しい説明があった。

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滞在先の風物、音楽、絵画と人々:
=研究開発への心の支え(逸話を中心に)=
フィラデルフィアとストックホルムにおけるVladimir Ashkenazy(アシュケナージ)との会話、Artur Rubinstein(ルービンシュタイン)、Andre Segovia(セゴビア)や、アムステルダムでのゴッホ没後100年展など。

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ブリネル賞授賞式:
=65期の方々には旧聞だが、映像によりその時の模様を映しながらの説明=
ノーベル賞と同様の方式により授賞式が行われた。スエーデン外務省の担当者からは、王妃からメダルを受領する時の作法として、「受け取る時は黙って一礼し後ずさりして下がる」というように言われたので、その通りにしたところ、王妃から「それだけ?」と言われた。とっさに王妃をハグしたところ王妃にはとても喜んで頂いた。

Ⅷ.資料 167回例会配布資料(3.2MB)

 

 

 

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