ホーチミンの街角から【第5話】
ベトナムの英雄
チャン・フンダオ(陳 興道)将軍
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さて、中国文化の影響を強く受けたがゆえに、ベトナム人の中国に対する気持ちも、複雑なんですね。
歴史上の英雄の大半は、中国と戦って勝った人達です。中でも最高の英雄は、13世紀、元のフビライハンが派遣した軍隊を、三度とも壊滅させたチャン(陳)フンダオ(興道)将軍です。彼の大きな銅像は、ホーチミン市内、サイゴン川沿いの一等地の大きなロータリーのど真ん中に、ドンと立っています。
元軍が陸路ベトナムに侵入すると、チャン将軍は、国王に進言して、一旦都タンロン(今のハノイ)を明け渡します。そして、ゲリラ作戦で都への補給路を徹底的に断って、いわば兵糧攻め。元軍のスタミナがなくなったところに一気に攻め入るという作戦でした。
(この作戦は、実は、足利尊氏が復活して西国から京都を目指した時に、楠木正成が後醍醐天皇の進言すれど聞き入れられなかった作戦と、ほぼ同じなのです。正成が仕方なく尊氏を迎え撃って、湊川で戦死したのは、ご存知ですね)
この同じ作戦に二回やられた元軍は、三回目は、陸路と並行して、大海軍を送って、ホン(紅)川から都タンロンに食料を補給しようとしますが、陳将軍は、引き潮の時に大きな杭を沢山ホン川に打ち込んで、満ち潮から引き潮に変わった頃に元軍を川に誘き寄せました。するとまもなく元の軍船は皆、その杭にひっかかって全く動けなくなり、陳将軍の送った小船に火矢を打たれて、殆ど燃えてしまうのです。世界中で、当時のモンゴル軍にまともに攻め入られて撃退したのは、何と、このベトナムと日本だけだったそうです。
元寇の図
フビライ・ハーン
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もし、ベトナムが元軍に簡単に負けていたら、フビライは、再度日本に軍を送ったかもしれないのです。そういう意味で、我々はベトナムに感謝しなくてはいけません。
(皆さん、もし私を信用して、ベトナムにいらっしゃることがあれば、是非この話をベトナム人の人達にしてあげて下さい。絶対に喜んでくれます)
それにしても、13世紀には、史上最大の帝国を築いたモンゴル軍、そして、20世紀には米軍を撃退したベトナム人って、凄い民族です。
Last Update: Jan.23,2008