北へ2007〜白夜とフィヨルドの国から【第1歩】 初めに戻る つぎ

ノルウェーについての基礎知識


みなさんこんにちは。今月からノルウェーについての連載を担当することになった吉田素子と申します。若干27歳、未だ学生、北野高校時代は卒業に4年かかり、また非常に不遇な成績だった私ではありますが、逆にその立場を活かして、こうしてみなさまに異国の地からお伝えできることを喜びに感じます。
この連載を通して、ノルウェーという国をタイトルにある『フィヨルドと白夜の国』といった漠然としたものから、より具体性を帯びた魅力的な国へ、また私たちがノルウェーから何らかを学び、日本での暮らしに反映させてゆくことの手助けとなればと思っています。どうぞよろしくお願い致します。


Norwayの地図
はじめに、ノルウェー(Norway)という国名は字の如く北への道の意である。ノルウェー語でのノルウェーNorgeも同意であるので、当連載のタイトルも『北へ』と名付けさせていただいた。

さて、ノルウェーの正確な位置をご存じだろうか。今割と注目を集めている北欧だが、よくデンマークやスウェーデンと場所がこんがらがっておられる方がいるようだ。ノルウェーは北ヨーロッパの一番西で、国の西と南を海岸線に囲まれ、形はおたまじゃくし型と覚えていただければありがたい。
ノルウェーも日本と同じく南北に長い国でその長さは1752kmである。それゆえに、地域差は大きく、地域によって話す言語にも幅があるところも日本との共通点であるだろうか。

フィヨルドでカヤックをする人
▲フィヨルドでカヤックをする人
(トロンハイム、2006年6月)
国境を接する国はスウェーデンだけだと思われがちだが、フィンランド、ロシアとも北の方で接している。
地図を見てもらえれば分かる通り、ノルウェーの海岸線は非常に入りくんでいて、これがかの有名なフィヨルドである。フィヨルドというと学校では「氷河に削られたV字谷」と習うと思うが、こちらでのフィヨルドのイメージは少し異なる。教科書通りなのは、フィヨルドの中でもダイナミックで有名なそれであって、フィヨルドの多くの部分は単に陸に深く入り組んだ海であり、写真のように穏やかだ。

緯度の高さにより、夏には日が長かったり(場所によっては日が沈まなかったり:白夜)、冬は日が異常に短かったり(もしくはまったく太陽が見られなかったり)するノルウェーであるから、それは暮らしにも多いに変化を付ける。
クロスカントリースキーを愉しむ著者
▲復活祭の休暇にクロスカントリースキーを愉しむ著者
(ノルウェー中部フォルダルまで遠出して、2006年4月)
例えば、夏に夜遊びしすぎちゃったなあと思って、帰宅途中夜中2時ころに日が昇りはじめると不馴れな日本人としては興ざめであるし、冬至近くは日が昇るのが10時、沈むのは2時半くらいであり、こうも日照時間が短くては正直精神状態に支障をきたす。夏はエネルギーに溢れ、活発になり、冬はどうも家でじっとしがちになるのは、一般的らしい。しかし冬には冬の楽しみ、蝋燭の火や暖炉の火を囲み親しい人と室内で過ごすことや、クロスカントリースキーやオーロラを見るといった屋外での楽しみもある。オーロラはいつも見られるわけではないが、オーロラや朝焼け夕焼けといった空の表現や雪が与える淡い色の種類の多さには目を見張るものがあり、私にとってはこれも冬の楽しみの一つだ。

フィヨルドでカヤックをする人
▲トロンハイムの町並み
また言及すべきは人口の少なさである。ノルウェーの人口460万人は大阪府の約半分、日本全体の約30分の一である。初めて聞いた時は耳を疑ったが事実である。ということで、こちらではめったに人込みに出会うこともないし、通学通勤の満員電車とも無縁である。しかしつまり、こちらでの優れた社会制度は見習える点が多いが、それはこの人口の少なさの上に成立っているのであって、それをそのまま日本に持ってきても通用しないということである。

ノルウェーの物価は高い。2006年発表の世界で一番暮らすのに高くつく街はノルウェーの首都オスロであった。(ちなみに2005年は東京であったようなのでいい勝負か)理由の一つはやはり税金の高さだろう。消費税は物によるけれど高い物で25%だ。スーパーマーケットに並ぶものの物価は感覚的には日本の2倍近い。

寒くて高いのに、ノルウェーが住みやすい国である理由はなんであろうか。それは税制制度や福祉制度に代表される社会制度とノルウェー人の国民性だろう。
次回からの連載で建築士卵である私の立場も活かして、その秘密をひも解いていければと思う。
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Last Update: Dec.23,2006