ポラントリュイから15km。フランス国境が間近に迫る、どこにでもある小さな村。15年ジュラ州に在住していながら気にも留めていなかったボンフォル 村に注目し始めたのはつい最近のことだ。 2年ぐらい前か。一通のメールが舞い込んできた。沖縄在住のダニエル・ロペス氏。「本の注文をしたい。今、ボンフォルに里帰りしているから、良ければ手 渡し願いたい(そうすれば会って話もできるし)」という丁寧かつジュラ人らしい親しみやすさ溢れる内容だった。お付き合いの始まりである。写真家・平和活 動家・TVキャスターとしてジュラよりは沖縄では知られた存在のダニエルは、現在、沖縄の大学生である。彼の両親はボンフォル村で家庭菜園を営みながら悠 々自適の生活をしており、私達家族はダニエルの友人、そして日本人というだけで彼らにはお世話になっている。
縁と閃きは背中合わせ。 そして第三の出会い。この秋、樽見さんのスイス来訪を控えた頃、日本から小包が届いた。見知らぬ方の名前で、少しドキドキしながら開封してみると、猪の 人形であった。(上部写真参照)送付主、西正道さんは、博多で陶芸を営む方である、来年(2007年)の干支である猪について調べているうちに、私が書い た「ポラントリュイ便り第17話・イノシシ伝説」に行き当たったそうだ。興味を持って下さった西さんは、ホームページへの小文転載を希望し、わざわざ貴重 な作品である猪の人形二体を、「日本・スイス親善大使」としてお送り下さったのだ。私は運命を感じた。「これはジュラを代表する伝統的な陶芸村・ボンフォ ルを推せという天啓だ!」と。西さんのホームページをまずご覧いただきたい。イノシシに関する記事だけでなく、私が送ったボンフォル関係の写真も掲載中で ある。 樽見さんがいらした2006年10月30・31日は、近年のスイスで最も美しい晩秋の日々であった。私達はボンフォル村中心部に位置する陶芸家・フェリ シタス・ホルツガングさんのアトリエと陶芸博物館を訪れた。 フェリシタスさんは中央スイス、シュヴィーツ州出身である。ベルンの芸術学校を終えた後、ジュラの陶芸家に師事し、結果としてボンフォルの伝統陶芸を後 世に伝えていく重要な人物となった。彼女は自作品の展示販売だけでなく、アトリエ近くに建つ博物館の館長として文化保存・促進に奮闘中である。また、ポラ ントリュイ市老人ホームで週に一度、陶芸を教えている。2007年1月にバーゼルで開催される中世関連のフェスティヴァルで使用するというコップ100個 の製造の手を休め、私達たった二人のために労を惜しまず案内をしてくれたフェリシタスさんの姿に、私は大いなる感動と共感を覚えた。活動を通じてジュラと いう出身地以外の土地に溶け込み、根を下ろし切った同志として・・・。 西正道さんのホームページ「博多陶遊窯」 http://homepage2.nifty.com/touyuu/ |
ポラントリュイだより: 陶器の村、ボンフォル(Bonfol)《その1》
2010年2月28日