ポラントリュイだより:イノシシ伝説

2010年2月28日


▲市庁舎前のイノシシ像
ポラントリュイ市の観光名所である。

ポラントリュイの古都に翻る旗の中に、銀地に恐ろしげな目の黒いイノシシが記されたものがある。 また、観光局などで手に入る、町に関するパンフレットなどを見れば、こちらは可愛らしく漫画化されたいのししが印刷されている。 この「イノシシ」こそ、ポラントリュイ市の紋章である。

古来より現在に至るまで、この地方の森林にはイノシシ、鹿、キツネ、野ウサギなど、狩人にとっては獲物となる動物が生息している。 (★ 現在、狩は、季節や曜日、射止めて良い頭数など厳密に指定されている。例えば、イノシシの冬狩りは12月1日から一ヶ月間のみ、 10月に狩ることができる野ウサギは狩人一人一匹、二日間に限定と法で決まっており、破れば罰金や罰則が待っている) イノシシは住民にとって身近に存在する動物ゆえに、市の紋章に選ばれたともいえる。
また、別説では、勇敢さ、勇気の象徴であるイノシシは、しばしば領主旗にも描かれていたゆえ、そこから引用されたという。 このように紋章の由来には様々な説があり、定かではない。



2005年1月1日より施行された
税つきゴミ袋にも
キャラクター化されたイノシシ


市庁舎の中にあるポラントリュイ市の旗

こちらのイノシシは恐ろしい三角目

非常に叙情的な物語で綴られる説を御紹介する。

「昔々、ある日、巨大なイノシシが、しっぽをピンと立て、大口を開け、全速力で駆けてきた。 この生き物は、10ピエ(当時の計量単位、1ピエ=約32,4cm)もある城壁を、何でもない囲いのように飛び越え、町に侵入した。 町の住民は恐怖におののき大騒ぎとなったら、勇気ある一人が窓から斧を投げつけた。イノシシは、市庁舎の階段付近で絶命した」
この出来事は、その後、町の議会で取り上げられ、《町を囲む城壁の一部が敵の攻撃に対して十分な高さではない》と判断され、 より城壁を高く、強化するきっかけとなった。
さらに伝説は語る。
「このイノシシは、疑いなく、町の守護《能天使》(=天使9階級の中で下から4番目)の使いである。 議会は、今後、イノシシを町の紋章する決定を下した。こうして、旗は銀地に黒イノシシ、全ての書類への公印は、善霊が化身した、 《毛むくじゃらで、飛び跳ね、唸る》イノシシとなった」

もう一つの伝説である。
「昔々、ジュラの森林は獲物の宝庫であった。狩は、バーゼル司教の楽しみの一つであり、それに一日を費やした。 ある日、司教一行は素晴らしいイノシシを追い込み、追跡した。 そのイノシシはローフォン(Laufon=現在バーゼルラント州の町の一つで、BaselとDelemontの中間辺りに位置する)に逃げ、 町を横切り、それからドレモンに入った。ここで、門を勢いよく落とし、傷つけたにもかかわらず、イノシシは止まらなかった。 イノシシは血を流しながらポラントリュイに突進し、市中に入った。有産階級の人々は門を閉ざしてようやくイノシシを捕獲し、殺した。

同日、バーゼル司教はこの三都市の紋章を定めた。
ローフォンは、イノシシの色、すなわち黒地に白い司教杖。ドレモンは、イノシシが流した血の色、 すなわち赤地に白い司教杖。 そしてポラントリュイは、銀地に黒いイノシシ」

Mes remerciement particuliers s’adressent a :
Monsieur Claude Voisard de Fontenais


▲ローフォン市の紋章


▲ドレモン市の紋章

〈参考文献〉
ジュラ州ポラントリュイ市観光局サイトよりhttp://www.porrentruy.ch/
「Images de vieux Porrentruy」Roger Ballmer著・Democrate SA

〈写真引用〉
バーゼルラント州公式サイトよりローフォン市のページより

http://www.baselland.ch/docs/gemeinden/info/laufen.htm

ドレモン市公式サイトよりhttp://www.delemont.ch/