アムステルダムに最近住み始めた友人に、「運河ってvaartじゃなくてgrachtなんじゃないの?」と質問されました。そうなんです。実は運河(=人工水路)にはオランダ語ではいくつかの種類があり、それぞれ呼び名が違うのです。grachtであり、vaartであり、さらにはsingelgrachtであり、kanaalであり、さらにslootという呼び方もあります。
今回は、未だにオランダ語が喋れないワタシが、大胆にもオランダ語を紹介してしまいます(笑)。
【gracht (グラヒト)】
オランダへの観光客に一番よく知られている、アムステルダムの街中にあるような運河です。アムステルダムほど多くはありませんが、アルクマールにもgrachtがあります。アムステルダムにせよアルクマールにせよ、海面より低い土地を干拓して造った街です。その上に建物を建てると、地下水が滲み出てきます。そんな地下水を効率よく排水するために必要なのが、grachtです。
【singel(シンゲル)、またはsingelgracht(シンゲルグラヒト)】
16~19世紀には、オランダの都市は周囲に濠を巡らして守られていました。日本で言うと、織田信長に屈服するまでの堺の街が似た様なイメージです。この都市防衛用だった濠は、singel(シンゲル)、またはsingelgracht と呼ばれています。アムステルダムで当初 singel と名付けられた運河は、観光客で賑わうムント広場近くの花市場に面する運河ですが、都会の街並みに埋没して、他のgrachtとほとんど区別がつきません。一方、アルクマールの singel 沿いには、防衛陣地だった内側には家は建っておらず、砲台を置いたり兵を展開したりできるスペースが残っている光景が見られます。かつて農地だった外側は、普通に開発が進んで、住宅などが立ち並んでいます。
続きは次回に
連載タイトルのvaart、それから、kanaal、slootについては、次回ご紹介しましょう。それではまた。