(前回から続く)
日本の市会議員選挙では、候補者の名前を書きますよね。直接の知人や、知り合いの知り合いが立候補していると、その人の人となりをそれなりに知っていて、投票先として検討することもあるでしょう。でもそれ以上の遠い関係だと、議会活動によほど興味のある人でなければ、誰が何をやっているのかよくわからないのが正直なところでしょう。子どもの頃から同じ町に住み続けている人なら、候補者の中に知り合いの知り合いレベルの人はそれなりに増えてくると思いますが、よそからやってきた住民にとっては、ほぼ全員知らない人のリストから一人だけ選んで投票するのは、真剣になればなるほど大変な作業ですよね。
それを考えると、政党に投票できるのはありがたいです。自分が重要だと思う政策に高い優先順位をつけている政党が議席をたくさん取れば、その政策の実現性は高まります。個人の候補者の場合、たとえその公約に共鳴するものがあっても、その候補者が当選後に、公約実現のための現実的な方法がどれだけ具現化できて、議会内に十分な数の賛同者を増やすことができるかまでは、なかなかわかりません。「頑張りますのでよろしくお願いします」という候補者の言葉を信じるしかありませんが、知り合いの知り合い以上に遠い存在だと、信じるための根拠を探し出すのはなかなか難しいものです。
しかし、政党、特に長年そこで一定の議席数を維持している政党であれば、それまでの活動実績が、それなりの割合の地元の住民から評価されていることになります。また候補者リストに載っているのは、その政党が議員たらしめたいと考えている人たちです。オランダでは比例代表制で選ばれた議員は任期中に所属政党を変わることはできませんし、どうしても政党を変わりたければ議員を辞職するしかありません。選ぶ側の有権者としては、政策や実行力や信頼性を基準に、投票する政党を選べばいいことになります。候補者リストの中からさらに誰かを選ぶ必要がありますが、その政党がより「議員にさせたい」と考えている人は、常識的に考えてリストの上の方にあるでしょうから、誰が誰だかわからない場合は、一番上の人に印をつければいいでしょう。
前々回、このときの選挙で投票する政党選びについてウェブサイトなどを参考にしたと書きましたが、当時関心のあった、スポーツ施設や文化施設の充実に重きを置いていた政党を選んで投票しました。
次回は、前々回紹介した投票券について、裏側にも重要な記載があったことを紹介したいと思います。
2023年1月6日
オランダ・アルクマールにて
小松雄爾