秋の大連1

2012年12月17日

アカシアのあとライラック、玉蘭、木瓜、合歓、百日紅と続きます。そして、真っ青な空に鰯雲。一雨ごとに秋は深まり、気温が下がってきました。寒露を過ぎると新聞には、「10月中にスティームの代金を支払うように」という通知が載り、11月10日頃、各家庭のスティームが開栓されます。この知らせでそろそろ冬支度を考え始めます。ならば、短い大連の秋を精一杯楽しむことにしましょう。
服装祭り
9月中旬には5日間のファッション祭りが開かれパレードやファッションショ-が行われます。10年前、野外体育館での開幕式のチケットは一枚800元〈当時15円/1元〉、それでも手に入らず人を頼んでやっと買うことができました。友人のデザイナーに見せたい一心で無理をしたものでしたが、若者たちのファッションセンスもどんどんよくなってきている昨今では、このお祭りは少々マンネリ気味で皆さんの関心も薄れてきたように思われます。
京劇
大連には常設の京劇の舞台-麒麟舞台があります。嘗て日本が建てた本願寺をそのまま使っています。一昨年客席が改装され二階席100、150元ができました。一階席は以前と同じ30、50、80元です。80元席にはテーブルが置かれお茶がセットされていますが、50元席のすぐ後ろで、 写真が撮りやすく且つ電光字幕がよく見える場所を受付の女性が確保してくれています。彼女に感謝して30元席で充分満足しています。
大連京劇団は1949年創立、楊赤団長の薫陶の下、毎週土曜日の午後、2時間余りにわたって2乃至は3劇を演じます。楊団長は国家第一級の俳優で全国に名を馳せ海外公演も多く国際的にも認められています。彼の育てた弟子達は色々な賞に名を連ねています。7月の或る日、その中の一人、岳峰が今年度の小生の部で全省中6名の決勝出場資格を得たということを「半島晨報」で知りました。市内にいた時は岳峰の舞台のあるときには必ず出かけていましたが、メールのやり取りなどはするもののこのところご無沙汰です。9月13日夜、旅行の支度中「今、決勝戦で岳峰の出番ですよ。

早くTVをつけて」と友人から電話が来ました。何度も受賞している彼の十八番『八大錘』です。若き武将、陸文龍、得意の二刀流剣舞を舞っている真最中でした。以前にも中央TV11京劇中心チャンネルの『空中劇場』に出演したことがあります。しかし、『白蛇伝』の許仙は優男で得意の剣舞は見られませんでしたから「やっぱり、これでなくっちゃあ」と思わず手を打ってしまいました。
岳峰は世家(梨園)出身ではなく農村出身の青年です。元来はダンサーになりたかったのですが、小柄で華奢だからと大連芸術学校の先生に薦められて京劇の道に進みました。舞台1分稽古10年と言い習わされるように、この道は険しく、1日に稽古着を8回も着替えたし、終わると腿は腫れ床にぶっ倒れたそうで並大抵の苦労ではなかったようです。更に先輩の「京劇を極めれば即ち教養に行きつく」の一言に触発され全国成人入試に臨み遼寧省第2位の好成績で北京師範大学芸術学院に入学しました。ここで、梅葆玖をはじめ多数の京劇の大家達と共演し直に稽古をつけてもらって芸に磨きを掛けることになります。が、師匠の鶴の一声「大連へ戻れ。此処こそ君の舞台だ」で大連に戻ってきました。そして、京劇迷(大ファン)の私が彼とめぐり会うことができたのです。縁(えにし)ですねえ。
或る日、彼に卒業50周年記念の同窓会旅行(浜松で80余名も集まりました)の余興に7年間も稽古しているという女性がフラダンスを披露して喝采を浴びたと話しました。すると、私に「‘変顔’」を教えるからおやりなさいと真顔で言います。一朝一夕でできる芸ではないのでありがたく辞退しました。誠実でやさしい彼はよき伴侶を得て一昨年父親になりました。