里山レストラン
今日はアメリカ合衆国の独立記念日、独立してからまだ200年あまりの若い国です。
「独立記念日にここPVにいるのは久しぶりやな」と夫。今年はつい一週間前まで、ひとつきあまりの日本の休暇をたのしんで帰ってきたばかりです。
日本にいると梅雨空と台風に歓迎されて、肌の調子がよくなります。水がきれいで洗濯物も真っ白に。PVに帰ると、空が真っ青で広い。洗濯物も庭に出すとからからに乾きます。庭には、蟻ととがげとあらいぐまとリスも住んでいます。
Pvの、私たちの家のあるFirthridge通りの独立記念パーティでは、子供たちが走り回って、長い茎のうえに紫のアカンサスの花をいくつも載せているのを落としたりしたものでした。おとなたちは、ちょうど我が家の前にある大きなカナダ松の影でBBQしながらこらこらと注意します。そんないたずら子供たちもみんな大きくなって、Firthridge通りも静かな成熟したstreetへと様変わりしました。
夫とわたしも早朝、近くのトランプビーチを歩きました。
日本では、丹波篠山から奥へはいった里山のフレンチレストランに案内していただきました。
「丹波篠山と言うたら、かやぶきにいろりとか、ぼたん鍋を想像するでしょう?丹波焼きのお皿とか作務衣のウエイターとか、ね」と、O君。Cさんが続けて、
「ところがこれから行くのはミスマッチの極地。ミスマッチもここまで行くと美学になります」。O君,Cさん,夫とわたし、全員北野の同窓生です。
山道に入ってしばらく行くと、O君のGPSが作動しなくなりました。Cさんが携帯電話で導いてもらってようやく、かやぶきの里山レストランに到着しました。40代にみえる茶髪の男性がひとり、入り口に立っていました。
なかにはいるとうすぐらい土間で、壁いちめんにアンティークの時計が百個ほど飾ってあります。ばらばらの時刻をさして止まっていて、全部で百個ほど懸かっていて、あいだにミロやピカソの絵も掛けてあります。
ほらほら、こっこっこと、裏庭であそんでいた烏骨鶏が追われて三和土に戻るころ、4人の北野79期生は完全に日常を離れて異界different worldにいました。
「さざえのエスカルゴ風です」さりげなくジノリの皿に載っています。磁器に金をたくさん使っています。私たちは白ワインで乾杯しました。
「庭で育てた大根の種も小玉葱もさやごと皮ごと蒸し焼きにして、うえに乗ってるのは鱧です」皿はマイセンのようです。呉須と紅があざやかです。
近くの畑を荒らす鹿の肉や牛も、アスパラガスや豆ととりあわせてリモージュやウエッジウッドの皿に載ってでてきました。
気泡のはいったガラスの器に、たまご色のアイスクリームとその上にぷよぷよした真っ赤なグミがひとつ載っていて、「アイスクリームのおかあさんはあの烏骨鶏です」。
ふと気づくと、天窓から見えている空が暗くなっていました。
「ゆうべは大雨で出られなかったでしょう。今夜あたり出てるかも知れませんよ。ご案内しましょう」と茶髪シェフが先に立って歩いていくのにほろ酔いの同窓生が、三日月も沈んで真っ暗ななかを4人、従って歩きました。
すぐ近くの小流れの石橋あたりに、舞うわ、沈むわ、残像をいくつも残しながら、源氏ぼたるでした。