ロシア交通事情

2009年8月31日

モスクワ駐在員のつぶやき~ロシアCISあれやこれや【第2話】
2007年2月


▲クレムリンを上空から見る

出張で訪問いただいた方にはお分かりいただけると思うが、モスクワの道路交通事情はすこぶる悪い。Week Dayは市内中心地ほぼ終日渋滞している。 先日の極端な例挙げると、当事務所から通常だと車で15分ほどで行けるレストランまで2時間半かかっても到着出来ず、結局途中で降車して徒歩で15分ほど 歩いてようやく到達。 原因は色々あろうが、まずは道路インフラ自体が昔の車の台数が少ないときのままであまり改善されていない。特に車線の合流や大通りの右左折なども通常の先 進国ではあり得ないような形式になっており、渋滞の原因にもなっている。


▲晴れ渡ったモスクワ市内中心部上写真右奥の高層が噂のMosocw City

▲晴れ渡ったモスクワ市内中心部赴任後5ヶ月でまともに晴れた日は通算でも1ヶ月無く、非常に貴重な風景

また、それがゆえに渋滞を作らないようにとの意図と思うが市内至るところが左折禁止や一方通行で目の前に見えている場所へ到達するのに、馬鹿げているほど 一筆書きのように町中を走り回らないと到達できないことが多々ある。 そういうところへ来て、モスクワ市内には存在する車を収容するだけの駐車場インフラが全く不足しているため、ありとあらゆるところに路上駐車してあり、交 通警察の取り締まりもほとんど無い状態。 そのため広い道路も両側に駐車にさらに二重駐車しているケースもあり、車が通れる隙間がやっとという状況の道も多い。 こういう中、われ先にと押しかけるドライバーの滅茶苦茶な運転マナーで朝夕ラッシュアワーの交差点は双方の車が串刺し常態になって動けなくなることも多 い。 大阪の下町を自由自在に走り、パリ市内凱旋門廻りでもパリジャン押しのけて走れ、ローマ市内の群がる神風バイクの合間縫って走る当方でさえ、ロシア人の運 転マナーは想像の域を超えている。いくら自分が注意していても必ず巻き添え事故の可能性高いと思われ会社の運転手に任せるしかない。ほぼ毎日通勤道中に接 触事故を見る。


▲クレムリンの大鐘

極めつけはKremlinの高官が通勤・外出するときの交通規制。彼らをスムースに通すために、市内の主要幹線道路を順番に完全に止めてしまう。これが数 分ではない。酷いときだと平気で30分、1時間も止めたりする。こうなると渋滞というよりまったく停滞してしまって動かない。運転手は車の外へ出てお互い 話始めたり、タバコ吸ったりと各自気ままに時間やり過ごす。その内に誰かがクラクション鳴らし始めると、そこに居る車がいっせいにクラクション鳴らして大 合唱となり、交通止めている警官に圧力加える異様な雰囲気になってくる。 ロシア人が言っているが交通警官は民衆を支えるのではなく困らせるために存在するのだと。町のあちこちで気まぐれに次々に車を止めては、免許証・IDを確 認している。モスクワはロシア全土から色々な人たちが集まってくるので、不審者が入り込んでいないか調べているのだそうである(ロシア人は全員国内移動用 のPassport持ち、官憲に提示求められると見せる義務ある。まだまだソ連時代の名残があるようである)。 中には何かと難癖つけては金をせびる悪徳警官の輩も居る。事故発生すると現状維持して警官の到着待たねばならぬため、道のど真ん中でも平気で車止めてい る。これが渋滞の原因となり、更なる事故発生を誘発する。頻繁に発生する事故のため、場合によっては警官到着までに数時間かかることもあるそうで、その間 ずっとその道路は渋滞するわけである。


▲アルハンゲルスキー大聖堂

言い出せばキリが無いくらい酷い状況であり、我々の眼から見るとモスクワの道路交通システムは崩壊に近い状況かと思いたくなる。とても先進国の状況とは思 えない。 プーチン氏はロシアが先進国の仲間入りしたという認識を固めたいため、先進国の証ではない部分を指摘されるとその部分に執拗に梃入れをするとのことであ る。誰かが同氏にはっきりと物言わねばならないのであろう。ご当人は前述のようにどこへ行っても渋滞関係無しに道路を通れるのであるから、モスクワに渋滞 なんて存在しないと思っているかもしれない。 2009年7月 ロシアの交通事故危険度 ロシアの交通事情については上記で述べたとおりだが、このたびOECDから発表された世界各国の交通事故データから見るとロシアの異常な状況が見えてく る。


▲赤の広場全景

人口100万人当たりの交通事故死亡者数は、1.ロシア235人 2.ポーランド147人 3.ギリシャ141人 4.米国136人 5.韓国127人  6.ハンガリー123人 となっている。 また車100万台当たりの交通事故者数は、1.ロシア939人 2.トルコ600人 3.スロバキア426人 である。 このデータから見てもわかるようにロシアが2位以下を大きく引き離してダントツのトップであり、異常な数値である。 原因の一つは未熟な運転技術のドライバーが多いことと、交通ルールを守らないというか、交通ルールを知らないと思われるような無茶な運転する輩が多いこと である。この背景には比較的簡単に取得できる運転免許の交付システムがある(一説にはカネで買えるという噂もある)。 要は交通ルールもマナーも十分知らない未熟ドライバーが町に氾濫しているといっても過言ではない。片側5車線の大通りから右折するのに、交差点直前になっ てから一番左側の車線から一番右側へ移動してくる。まるで行きかう車の方向に対して垂直になるような移動の仕方である。当然交通は渋滞するわ急ブレーキ踏 む車はあるわで大変。


▲赤の広場から見たモスクワ市内

しかし、ロシア人たちはさほど驚いた顔しているわけでもないし、当のご本人も涼しい顔で横切っていく。無茶な割り込みや追い越しなどはごく当たり前のよう に容認されている。交通警察はこういう行為はほとんど取り締まっていない。ゆえに常識化・常態化するようである。彼らは取り締まりより、車止めては違反が あるとして金をせびる行為(賄賂)にご執心で、あまりカネにならない取り締まりはやらない。 何でも交通警察の中でも、こういう賄賂でかき集めた金の上納制度があり、上納ノルマ・期日があるそうである。その期日前と思わしき日ごろには確かに道路上 に出ている交通警察の数はおびただしい。 当方も休日運転中に3回/日止められたことがあるほど。せびられる金額は日本円換算すればバカバカしいほど安いが、彼らにとっては結構な金額なのだろう。 道路交通システム自体が、増殖し続ける車の台数と無謀ドライバーで崩壊状態の中、今回のデータは我々にとっては納得いくところがある。 幸い休日にはモスクワ市内は平日と打って変わってガラガラ状態になるため、我々外国人も非常に快適に運転できる。大方の日系企業でも「休日運転可」として いるゆえんであるが、無茶なドライバーの引き起こす事故に巻き込まれないように細心の注意を払っているところである。