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第6話 もっと長期に

若いころ出張の度にフランスでは水道の水を飲む人はいない、レストランでもかならずミネラルウォ-タを注文しろ、水はただではないのだ、と教えられた。こ れは真っ赤なうそであることを知った。パリでも現地の人は水道水を頼んでいる。レストランで、Une carafe d’eau, s’il vous plait. といえば水道水をいれた水差しを持ってくる。チップの対象にはなるが、無料である。アパートには浄水器があったので、それを通した水道水を飲んだ。アパー トで飲んだコーヒーがおいしかったので、そのコーヒーを買って帰ったが、東京ではそれほどおいしく感じなかった。水のせいではないかと考え、硬度の高い水 を買ってきてコーヒーを入れるとおいしかった。逆にパリの水道水ではもっていった煎茶だけでなく、紅茶もおいしくなかった。もっていったカツオだしもよく 出なかった。水と食べ物の関係を思い知らされた。フランスの紅茶の喫茶店 Salon de The でも紅茶はおいしくない。フランスのコーヒー文化やワイン文化とイギリスの紅茶文化とビール文化の背景には水があると実感させられた。後で知ったが、フラ ンスにも軟水のミネラルウォータがある。Volvic という水がそれである。逆に硬水はミネラル分が豊富で、われわれ日本人はカルシウムなどのミネラルが不足しているといわれるが、どうせ買って飲むなら硬水 を買ったらいいのではなかろうか。Webで調べると、硬水は便秘解消に効果があるとのこと。逆におなかをこわす恐れもあるので、エビアンなどの中硬水がい いかもしれない。

最終日(6月12日)には近くのブローニュの森を散歩し、小川や池、バラ園などを通過して向こう側に蛇行してくるセーヌまで行った。その後アパートに引き 返し、荷物を持ち、写真のようなきれいな庭に別れを告げ、空港に向った。ドゴール空港では滑走路の間の芝生に棲息するウサギの見送りを受けつつ、「もっと 長く、また来るぞ」とつぶやきながらパリを後にした。

今回の経験では、ホテルと違ってアパートは自分の家という感じが湧いてくる。ホテルだと昼間に帰ると掃除中だったり、また掃除の人などの出入りがある。あ くまで「お客さん」であり、お客さんとしての振る舞いが暗に求められている。その点アパートは気楽で、掃除も洗濯も自らのペースで行える。

今回もっと長期に滞在することも考えたが、自宅は戸建てあり、小さいながら庭もあり、作物まで育てている。留守中の水遣りのため定期的に水をやる装置まで もっているが、生えてくる草には無力である。郵便物や新聞はとめることができるが、勝手に郵便受けに入るものはとめられない。宅配業者が配るダイレトメー ルの量も増えている。宅配便もいつくるかわからない。長期に留守にするには、このような旅行以前の問題を解決しなければならない。このようなことから2週 間という期間で妥協した。

しかしもっと長期の滞在型旅行はぜひ実現したいと思っている。このためにはしっかりした管理体制があるマンションに引っ越すことから始めなければならない。長期滞在には長期計画が必要のようである。

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