家 正則(80期・国立天文台教授)
理学博士(光学赤外線天文学・観測システム研究系主幹)
昭和43年、北野高校卒業(80期) 。
同年、東京大学理科 I 類入学
昭和47年、東京大学理学部(天文)卒業
昭和52年 東京大学理工系大学院博士課程終了
その後、東京大学助手、同助教授、国立天文台助教授を歴任し、平成4年より現職
専門 銀河系渦状構造の理論、冷却CCDカメラによる原始銀河の観測
波面補償光学システムの開発 他
1991年度から9年計画で総工費約400億円で建設を進めてきた大型望遠鏡「すばる」が昨年12月24日夜、ファーストライトを迎えた。引き続き、今年1月にはオリオンやアンドロメダ銀河の写真撮影に成功した。
この大型望遠鏡は世界最大の直径8.2メートルで、ハワイ島のマウナケア山頂(4200メートル)に作られた。望遠鏡の山頂の望遠鏡施設、麓の付属施設あわせて2エーカーもある敷地はハワイ大学からたった2ドルで借りている。
すばる建設目的は2つあり、ひとつは観測的宇宙論の研究、もうひとつは星や惑星の形成に関する研究である。 そもそも天文学は新しい学問で、今から70年前にようやく天の川の外にも宇宙があるとわかった。また、自分が研究生活に入ってからも次々と新しい事象が起こっている。
宇宙は膨張しているというのが、ビッグバン膨張宇宙論で、150億光年のかなたに宇宙の過去と未来があると言われている。そういう意味で、遠くを見れば昔が見えるのである。
●ビッグバンはいつ起こったのか?
●始まりはどんな状況なのか?
など疑問は限りない。
現時点では、宇宙が誕生して最初の3分間で何が起こったかということがだんだん明らかにされてきた。それは、最初の3分間は、陽子からヘリウムと水素が生成されるという核融合反応が起こっており、存在するのは、陽子とヘリウムだけということである。
大型の望遠鏡で宇宙を観測することにより、誕生したばかりの星を見つけることが可能になるのである。
星はガスが集まりその中心で火がつき、その後次々と核融合反応が起こり誕生する。 また、誕生したときの重さでその星の寿命も決まる。例えば太陽の寿命は百億年ぐらいであり、今50億歳と言われている。
誕生したときに重い星ほど、核融合反応が激しいことから、寿命は短い。その逆に小さくて軽く生まれてきた星は、ゆっくりとした反応になるので、寿命は長い。 宇宙の最初は水素原子だけであり、その後、炭素、窒素、酸素といった元素が核融合反応で作られていく。こうしたことから、生命体が持つたんぱく質は、核融合反応の過程で合成されていくことがわかっている。
星の誕生を観測し、研究することにより、地球外文明の存在を探すことも可能になる。 天体観測の原点としては、宇宙の昔を探るということと、人間のような生命体がすむ他の宇宙を見つけたいということである。