■会場
ATCミュージアム(06-615-5006)
大阪市住之江区南港北2-1-10
■観覧料
一般500円(400円)/高校・大学生300円(200円)/小・中学生は無料
( )内は20名以上の団体科金
ツルのマーク付き健康手帳・敬老優侍乗車証または身体障害者手帳等をお持ちの方は無料
■主催
大阪市教育委員会、ATC(アジア大平洋トレードセンター)
■趣旨
1930年代日本の前衛美術運動の先駆者であり、戦後の50年代から70年代にかけては、「具体美術協会」を率いて国際的に注目される美術運動を展開した吉原治良は、オルガナイザーとしての業績はもとより、作家としても日本の20世紀美術が生んだ屈指の存在といえましょう。
大阪市立近代美術館建設準備室では,吉原治良の作品700点余と資料多数を所蔵しておりますが、そのうちから約130点をよりすぐり、代表作と多くの没後初公開作で創造の軌跡をたどります。
1905年(明治38)、大阪淀屋橋南詰めに生まれた吉原は、府立北野中学・関西学院高等商業学部で学業を修めるかたわら、折から大正期の自由な時代的雰囲気のなかで、油絵に興味をもち制作を始めるようになりました。「艸園会」など若い画家たちのグルーブに参加しましたが、やがて移転先の芦屋に在住していたパリ帰りの画家上山二郎に感化を受け、1928年大阪朝日会館の個展で魚を描いた作品などを発表、注目を浴びました。家業の植物油卸売・製造業を継いた後も芸術への意欲は衰えず、藤田嗣治の推薦もあって1934年の第21回二科展にシュルレアリスム風の作品が初入選、鮮烈な画壇デビューを果たすと、その後幾何学的抽象へと作風を展開、1938年には二科会の同志と「九室会」を結成するなど、戦前の前衛美術運動の中心人物のひとりとなりました。
戦中・戦後の暗い世相の中で、吉原の絵画も人間の真実を見据えるような具象画に変化しますが、1950年代に入ると再び非具象表現に転じ、芦屋市転での若い作家たちとの交流や、他ジャンルのアーティストとの現代美術懇談会(ゲンビ)での意見交換を経て、1954年具体美術協会の結成に至ります。1972年、67歳で急逝するまで、具体美術展は21回を数え、また本拠地グタイピナコテカでの様々な活動など、吉原はグループの主宰者として前衛美術連動の発展に多大な貢献をするとともに、自ら優れた仕事を発表し続けました。「具体」創設期には、若い会員たちと今日のパフォーマンスを先取りする実験を重ね、その後国際的な抽象表現主義・アンフォルメルの動向にくつわを並べる絵画表現を日本から発信し、晩年には単純な円や漢字の部首の造形要素を、細心で明快な平面に展開する円熟の境地に到達しました。こうした吉原治良の仕事は、今日国内はもとより国際的にも高い評価を受けています。
このたびの展観は、没後に5回開かれた遺作展・回顧展などに未出品の作品約70点を含んでおり、吉原治良の優れた仕事を、新しい視点から回顧する絶好の機会となるでしょう。
■展覧会構成と出品内容
●出品点数
約130点(うち約70点が没後初公開作)
●展示構成
第1章 く魚の画家>となるまで〜修学時代の仕事
1923〜1930年
第2章 白光のなかの乾いた夢想〜シュルレアリスムの影響
1930〜1935年
第3章 幾何学の精神に向かって〜国際抽象運動のさなかに
1935〜1943年
第4章 苦難の時代に傷つく詩情〜戦中戦後の造形
1943〜1950年
第5章 <具体美術>の誕生をもとめて〜前衛への挑戦と模索
1950〜1963年
第6章 円環を閉じる繊細な詩心〜晩年の探求とその展開
1963〜1972年
■学芸員によるミュージアムトーク
毎週土曜日、日曜日14:30〜
(10月31日は除く)